ジロ・ドンネ
「「「「結婚、おめでとう!!」」」」
リルの部屋に集まったのは、リル、リオナ、ハピィ、あたし。
そして、新婦のメレナだ。
「ありがとうよ。祝いの席というのも、良いものさね。」
「ぼくたち同士でこれだけ大きな結婚式挙げたのなんて、今日が初めてなんじゃないかな。」
ぼくたちというのはもちろん、イシュの民という意味。
確かにあたしたちは、結婚とか夫婦という感覚が、人間より薄めだ。
「そうなの?」
「ぼくの知ってる限り、そうだと思うよ。」
ハピィはこの中では一番お姉さんだ。
どんくらい上なのかなんて気にしたことないけど。
そのハピィが言うのなら、そうなんだろう。
「カールとの馴れ初めは?」
「それ、私も聞きたいわ。」
リオナとリルが、早速本題に入る。
いや、本題が何かなんて、決まってないけど。
まあでも、これが本題でしょ。
「そうさね。時期は逃亡旅団として出戻って、ちょっとした頃さね。」
「え?そんな最近なの?!」
もっと昔から知り合いなのかと思ってた。
息もぴったりだし。
「あー、まぁ厳密に言うとだね、あたしの名付け親がカールなのさ。」
「そう言えば流星を見たときに、名前でジャンヌと揉めてたわね。」
「あたしの本当の名は、メレにゃだってのさ。」
「うわ、カールっぽい!」
ルーニャに、ローニャ。
スパーニャだってそうだ。
みんな最後がニャで終わる。
「瑠璃があなたを拾って、孤児院に連れ帰った。」
まるで瑠璃を一人として数えるように語るリル。
「そうさね。まさにあたしが、卵から這い出た直後。リルが拾ってくれたのさ。そんときゃあたしも知らなかったね、それがリルだって。」
「あら。話題が私との馴れ初めになってしまったわね。」
「でも聞きたい。」
ここで言うリルは、瑠璃のことだ。
今度は自分のこととして語るリル。
「そうね、瑠璃に感謝しなきゃだわ。」
瑠璃がリルの名を冠した孤児院を建てなきゃ、メレナとは出会わなかったってこと。
「リルを助けて背中に乗せたとき、ようやく確信してね。なにせあたしゃ、這い出て長らく、目が見えちゃいなかったからね。」
「え、それ、どうなの?」
雑な聞き方だけど、どうなんだろ。
「逆にみんなはどうなんだい?生まれてすぐ、目が見えたかい?」
「「「覚えてない。」」」
「ぼくは見えてたよ。卵から出たらまず、お母さんを見たよね。」
「ハピィのお母さん……どんな人だろ。気になる。」
「後で来るよ。飴玉持って。」
「え?」
「飴玉持って来るって言えば、まさかセバス?」
「そだよ。」
「お父さんじゃん。」
「そうとも言う。お母さんでお父さんなんだよね。」
「鳥でもないじゃん。」
「そだね。お母さんが鳥なんじゃないかな。知らないや。」
「あなたがそれでいいならいいわ。」
獣の特徴が同じ親と暮らす。
とはいえ例外もある。
リオナみたいな先祖返りだってそうだ。
両親と一緒に暮らしてた。
「うん。ぼくらは巣立ったら大人だからね。空はいつだって自由なのだ。」
「あれ、てことは卵の中でも見えてたの?」
「見えるわけないじゃん。香ばしく炙った麦に釣られて木箱に入った時みたいに真っ暗さ。」
「それってさ。」
外からがんがん叩かれたっていう。
「あたしだね。」
「卵の中は真っ暗だったってこと?」
「リオナ、あたしゃ卵の中の暗さはわかりゃしないさね。麦を炙って箱詰めハピィを作ったのが、あたしだって意味だよ。」
「え、何でそんなことしたの?」
「そりゃあもちろん、ハピィを捕まえるためさね。」
「そうそう、カールと入れ違いでハピィに挑んでたって話でしょ?」
「どうやらそうらしいね。」
「なるほど、あれはしっかり親譲りなのね。」
「ルーニャとローニャね。ずっと伝書鳩を追い掛け回してたわ。」
「我が子ながら、なかなか利発な子だろ?」
「メレナの親バカが見れるとは。」
「あの子たちも目は見えてないっぽいね〜。滝から飛び出すときに眩しそうにしないもん。」
「何それ。滝ってまさか、あれ?」
ここらで滝と言えば、あれだ。
ガン・イシュ中から集めた水を海に落とす滝。
「何てことさせてるのよ。あの滝の周りは、飛行具でも近寄らないわよ?」
「最初はあたしも焦ったさ。二人ともどうやら気に入っちまったみたいでね。」
「よくあそこで墜落してるよね。」
「リル、ラヴィ、近付いたら命はないわよ。」
滝の周りの危険度は、東の崖の比じゃない。
飛行具で近寄るなんて、自殺行為に等しい。
「つまり!卵の中はすぐ近くに壁!真っ暗!ってこと!」
「そこに戻すのね。」
「出戻ってちょっとしてのところからがいいな。」
リルとリオナが、逸れた話を本題へと戻す。
「橙の動きを探ってるときに、カールに出会ったのさ。」
「帝国から戻ってみたら、ずっと一緒にいた印象なわけね。」
「ジャンヌに絡んでたもんね。」
「あんときは悪かったね、リオナ。」
「あれは、いいの。」
「何かあったの?」
「カールのヤツがね、リオナの顔面を力一杯殴り付けたのさ。」
「説明して欲しいわね。」
きつく殴られないと気が済まなかった。
リルのそばにいながら、適用の歪んだ拡大の場にいながら、歪みを止められなかった。
リオナは殴られた後、そうこぼしていた。
「リオナって頑丈だよね。」
「ラヴィ、この場合、はぐらかすのは良くないわ。」
おお、リオナの目が本気だ。
「私は、自分が許せなかった。だから、カールを利用したの。」
「それは、私のためね。そうでしょ?」
「ふふ、流石はリルね。」
「ありがとう。リオナにも感謝しなくちゃだわ。」
こんこんこん。
こんこんこん。
「何の音?」
「セバスじゃないかしら。叩き方がそれっぽいわ。」
どうやら飴玉が届いたらしいぞ。
まだまだこの女子会は続きそうだ。




