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答えが先で、問いが後。


 いわゆる、人のための行いというやつだ。

 なにということはない、それがきっと人として正しく生きるということ。

 俺は生まれてこの方誰かのために何かをしたことがない。

 いつもいつだって自分自身のために何かをしたいと思って、行動している。誰かのせいで仕方なく何かをすることがあっても、それはそれ、仕方なくやってはいるもののどの道やることになるのだからやってしまった方が後が楽という、結局は自分のために行動している。

 だからやはり、俺は誰かのために何かをしたことがない。

 いや、そんなことを堂々と言い張ることが真っ当だと思っているわけではないけれど。

 今回のことだってそうだ。

 たまたまその状況に出くわして、たまたま手伝えることがあって、たまたま手伝うのが都合が良かった。

 だから俺がしたことと言ったら蓄電池くらいの役割で、それが大きな役割だったなんてほんのかけらほども思っていない。

 それでも起きたら言おうと思う。

 一緒に暮らしませんか、と。



:*:*:*:



『カレンの呪い、それに俺が御牧に渡した蛇神の札。その二つがたまたま相互に作用して、少し厄介な”神もどき”を形成していた。こまかいことは省くけど、どちらも『地』に属していたことが災いしたね』

「山野さん、わかっていて蛇神を使いました?」

 巫女服の少女は受話器を耳に当てながら問いかけた。

『まさかだよ。俺は太一と違って先を見通すってのはあんまり得意じゃないんだ。まあそれでも君の関与を考えて、水の位置に属しているものを使うことを避けるくらいのことはしてみたけどね』

「たしかに使われていたのが水蛇だったら、私には何もできませんでしたね」

 水神に仕える巫女である少女は潔く認める。

『本来カレンの呪いだけであれば正造さんは数年前に亡くなっていてもおかしくなかったはずだ。呪いを喰う地の蛇と共存させることで延命を試みていたんだけど、どうやらその高層マンションの最上階という場所も有効に作用していたらしい。どちらも地の属性であることで、相互に喰いあってくれた』

「でも、もっと早く解決することもできましたよね?」

『太一にやらせないと意味がないだろ?』

 巫女装束の少女、弓削綾音は眉間を寄せる。表情の見えていない相手には伝わらない感情の揺れ。しかし相手は神をも使役する天才だった。

『そして君と三好の妖刀、くわえて唯さんが出張ることで全て解決。少し時間が空いたけど、まあうまくいったね』

 軽い調子の男に、しかし未だ昏睡している友達の男の子を思いひと言言ってやりたくなる自分がいることに気づいて、綾音は唇を噛む。

 もともとこれは私たちの仕事だ。こちら側の不始末だ。

 それを関係のない少年が自分の意思に関係なく巻き込まれ、おおよそ考えうる最善の結果が生まれた。

 被害者はおそらく数日もしないうちに目覚めるだろう。鷲崎由利亜の問題もこれでひと段落つく。

 全てがうまくいった。

 万事解決。

 全件落着と言って差し支えない。

 だが、それでいいのだろうか。弓削綾音はそう思う。

 山野太一の関連した事案に立ち会うのはこれで二度目。少年は当然のようにできうる最善をつくして解決を引き寄せる。

 それはまるで正解以外存在しないかのような現実。

『あいつは間違えないよ。手札さえ揃っていれば、太一の欲しい未来だけが訪れる」

 受話器越しに聞こえる声は、世界を嘲笑う。

『神様なんて生ぬるいよ、あいつは世界そのものだ。それが自覚できるようになった時あいつは何を願うのか、俺はその先の未来が見たいんだ』

 巫女である自分になんてことをいうんだろうと、そんな気持ちが霞むくらいには男の言い分は衝撃的だった。

 綾音”も”思ってしまったのだ。

 怖い。と。


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