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お人好し令嬢の異世界婚活記2〜最後の転生そして魂の約束  作者: カンテラ澪


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白百合の4 落ちこぼれ治癒師誕生

◇

今より十年前

王立治癒院の治癒師認定試験。


クレサール子爵領から王都まで、騎士団の早馬で半日、馬車では丸二日。


六歳の私は、初めての馬車の旅を楽しんでいた。

馬車では大好きなお父様を相手に、おしゃべりをし、合間に居眠りし、起きてはまたおしゃべりを、繰り返していた。

ガブリエルも連れていたので、草原が続く郊外では、時々ガブリエルに乗って駆けさせてもらった。


「ねえ、お父様、ちゆししけんって何をするのですか」

「治癒力の試験だから、ララは何もしなくていい」

「そうなのですね」


実際に王立治癒院での試験は、何も起きないままに終わった。


それは簡単な試験だった。


試験会場には男女問わず、五歳から八歳の子供たちが並んでいて、前方の祭壇に置いてある大きな丸い石を触るだけ。


入り口で名前を聞かれて、左の列に誘導された。

右の列に並ぶ人もいた。

そして、右側の列では、時折大きな歓声が上がっていたけれど、私が並んだ左の列は、石を触ってすぐに会場から追い出される人ばっかりだった。

私が石を触って、そこにいた大人の人が「微力、不適格」と言って紙を渡された。


扉を出る前に、私の後ろで大きな歓声があがった。

「流石、バルトランザ治癒院長の御息女アデリーヌ様、素晴らしい、筆頭治癒師の誕生だ」

周りの人たちも拍手をしている。


じっと見ていたら、背中を押されて外に出された。


その紙を持って、治癒院の入り口で待っていたお父様に渡すと、お父様は紙を見て「そんなはずはない、馬車に乗って待っていなさい」と、中に入って行かれた。


私は馬車に乗ろうとして気がついた。ガブリエルがいない。

「ガブを探してくる、すぐに戻るわ」


御者兼護衛のブルクとバルザイに声をかける。

「ペルラ様、あまり遠くへは。一緒に探しますよ」

「大丈夫、ガブがいる場所はなんとなくわかるから」


治癒院の前の広場では泣いている人や怒っている人が結構いたけど、ガブリエルの気配を辿りながら治癒院の裏手に出た。


「あ、ガブ!」

白毛のガブは、珍しい濃紺色の毛並みの馬と喋っていた、たぶん。


「ガブ、こんなところまで勝手に来ちゃダメじゃないの」

ヒヒン。

「お友達ができたの?」

フンフン。


濃紺色のお馬さんにも声をかける。

「こんにちは、綺麗な色のお馬さん」

ヒヒーーン。


「まあ、なんて素敵なの、あなた真っ白の流星があるのね」

フフン。

そのお馬さんが擦り寄ってくる、鼻梁を撫で撫でする。

その瞬間だった、そのお馬さんの背に大きな翼が見えた。

同時にガブリエルも翼を広げる。


「まあ。あなた、ガブと一緒なのね、すごいわ、飛べるのね」

フフン。


その時、後ろから怖い声が聞こえた。

「お前、人の馬に何をしている!」


「え」

振り返ると、私よりも頭一つ分も背が高い男の子が立っていた。

銀髪に蒼い目。側に護衛騎士が四人もいる。身分が高いのね?


私は家庭教師に習ったカーテシーをする。

「ごきげんよう、あなたのお馬さんなの?とっても綺麗だから、お友達になったの」


「お友達?馬と?」

「そうよ、ねえ流星ちゃん」

フンフン。またすり寄ってくる。


「ラファール、お前、知らないチビに何をしている、こっちへ来い」

「あら、お名前はラファールだったのね」

ヒヒン。


「私のラファールに触るな!」

その男の子が詰め寄る。


「触ってないわ、この子が寄ってきたから挨拶をしただけよ」

蒼い目が睨んでくる。


「若様、この者の言う通りです。ラファールがこの者に懐いたようです」

その男の子の護衛騎士が、そう言ってくれた。


「わかった、不敬は許す」

「チビ、お前はここで何をしている」


「私は治癒師試験に来たのだけど、左側だったから落ちちゃったの」

「そうか、まあ励むと良い」


私達が話をしていると、ブルクの声が聞こえてきた。


「お嬢様、ペルラお嬢様、こちらでしたか、旦那様がお呼びでございます。すぐに子爵領にお帰りになると」


「え?まだ王都見物もしてないのに?」


その時ブルクが急に跪いた。

「大変失礼を。我が主人クレサール子爵の御息女は王都が初めてでございます」


「そうか、クレサールであったか、不敬は許している、カーテシーもしておったぞ。馬が友達になった」

蒼い目の男の子がそう言ってくれた。


「御息女は馬が好きでございまして」

「そのようだな、絶対に慣れぬ我が馬が懐いてしまったようだ」


「うふふ、みんな飛べるからお友達よ」

「………」


「お嬢様、そろそろ参りませんと」

「わかったわ、ブルク」

私は振り返って挨拶をしようとして、思い出した。


「あ、これお馬さんに差し上げます」

ドレスのポケットから小さな包みを出して差し出す。


「お馬さんのお菓子なの、私が作ったポーション飴なの」

ガブリエルがすでに口を開けている。


「はいガブに一個、ラファールも食べる?」

ヒヒン。


「こら、ラファール、そんな物を食うな!」

蒼い目の男の子が止める間もなく、ラファールはパクッと食べて、ヒヒンと言った。


「ではごきげんよう」

私は、もう一度カーテシーをして、その場を去った。


後ろで声が聞こえる。

「こら、ラファール、お前はこっちだ。ラファールこっちへ来い、何を食った、口から出せ」

フン。

「ラファール!」



ガブリエルは足取りも軽く馬車のある場所まで戻った。


そうして私の治癒師試験と王都見物はあっという間に終わってしまった。


そして何故か、帰り道で年配のおばさまと、その弟子と言う人が後ろの馬車で一緒に着いてきた。


それが、マルイ先生とパルセル先生との出会いだった。




投稿時間が不定期になっていますが、よろしくお願いします。


よろしければ、ブクマ、評価などいただけると嬉しいです。

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