白百合の7 デビュタントでの再会
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王都へ。大舞踏会、デビュタントへ。
黄金の満月が終わると、収穫期が無事に済む。
主だった貴族達は王都へと向かい、冬を過ごす。
そして貴族家の子女は、王城での舞踏会の時期を迎える。
つい最近十七歳になったばかりの私は、デビュタント。
エスコートはオルキスお兄様が務めてくださる。
お兄様は跡継ぎとして既にクレサール領内の仕事もしておられるけれど、2年前には、王立魔術師団に所属してダークミストや魔獣討伐にも参加していらした自慢のお兄様。
だから今のクレサール領は安泰。
今日はお兄様だけでなく、治癒師のパルセル先生も護衛として、お父様やお母様に付き添っている。
「ペルラ、用意はいいかい?」
「はい。でも田舎から出てきたから、なんだか不安です」
「大丈夫だよ。我がクレサールの妖精は、いつ見ても美しいよ」
「それは贔屓目すぎます」
「本心だ。妹でなければ求婚したいくらいだ、こんな場所に連れて来たくはなかった」
「オルキス、いい加減にしなさい。ペルラにも子爵令嬢としての役目がある。つべこべ言わずに、王族へご挨拶へ行きなさい」
ふふっ、お父様に叱られたお兄様のお顔ったら。
お母様が髪留めを少し直してくださる。
「ペルラ、クレサールの姫であることを誇りに、行ってらっしゃい」
「お父様、お母様、成人までお育ていただきありがとうございました。しっかりと成人の儀、努めてまいります」
私はお父様とお母様にカーテシーをして、お兄様の手を取った。
国王陛下と王妃様に、高位貴族子女から順にご挨拶をする。
クレサール家は高位貴族ではないけれど子爵家の中では筆頭、伯爵家の陞爵の打診があるのだけど、お父様が辞退し続けていらっしゃる。
前の伯爵家のご挨拶が終わったところで、私の番だ。
侍従が国王陛下と王妃様に一言伝える。
お兄様が挨拶をする。
「クレサール子爵家嫡男オルキスが、国王陛下と王妃様にご挨拶申し上げます」
「遠路からの参加、大義であった」
国王陛下の低く通るお声、ご壮健だわ。
「オルキス、そちらがクレサールの妖精か」
「はっ、我が妹、ペルラにございます。先日、成人いたしました」
お兄様が私の手を離す。
私はお母様直伝、家庭教師にみっちり叩き込まれたカーテシーをする。
「クレサール子爵家の娘、ペルラにございます」
「成人おめでとう。ペルラ、どうかお顔を見せて」
王妃様のお優しい声。
私は静々と膝を折ったまま顔を上げた。
「まあなんて可憐な。透き通る銀の髪に菫色の瞳。お母様似なのね、バイオレットの若い頃に良く似ているわ」
そうだった。お母様は伯爵家の出で、王妃様の側近をしていたことがあったと聞いていた。
「確かに、バイオレットに似ているのう」
「陛下はバイオレットがお気に入りでしたからね」
「そうだ、クレサールが掻っ攫って行きおった」
「まあ、確かに。クレサールに嫁ぐと言われた時は驚きましたわね」
陛下まで、お母様ってどんだけ有名だったの?
皆様より、会話時間が長い、後ろの列が詰まっています。
王妃様が微笑み、更にこちらにいらっしゃいと手招きされるので、お兄様を見ると目線で促され前に行く。
そして王妃様が、小さなお声で仰った。
「成人前からの治癒師としての活躍、聞いています。民を助けてくれて、王妃として感謝するわ。これは私からのお礼よ」
そして、王妃様から、華奢な、煌めく透明な石が入った首飾りを賜った。
側にいた侍女が、屈んだ私にその首飾りをつけてくれる。
「これからも励みます」
そうしてご挨拶が終わった。
「厄介な事になったな。次は王太子殿下へのご挨拶だ」
お兄様は私の手を取りながら、移動し始める。
次に、王太子殿下と主な王族にもご挨拶がある。
何が厄介なのかしら。それを聞く間もなく王太子殿下の御前に着いた。
王太子殿下の前でカーテシーをする。
「オルキス、久しいな」
「ジュリアス王太子殿下、お久しぶりにございます」
「お前がクレサールへ戻って、王都が寂しくなった」
「殿下、ご冗談を」
「本心だ、なあ、ヴァンドール。おまえもアルタスだけでは物足りんだろう」
「そうだな、オルキスはクレサールへ引っ込んで全く顔も見せぬ、事情はわかるが、たまには王都にも出てこい」
「ヴァンドール団長殿、無沙汰をお許しください。しかし以前より、お顔色が良くなられて」
「オルキス、わかるのか」
ねえ、こっちはずーっとカーテシーをしたままでお腹も足もプルプルしてるんですが。
殿方の長話はいけません。
「して、オルキス、そちらが自慢のクレサールの妖精か」
殿下までなんで?さっきからクレサールの妖精って何?
「お二人には会わせたくなかったのですが、我が妹ペルラです」
「顔をあげて、ペルラ嬢」
王太子殿下のお声で、やっとカーテシーから解放されて顔を上げた。
さすがに王太子殿下。
お兄様も素敵なんだけど、その数百倍の王族オーラが溢れ出るお方。
でも、私はその横に立っていた方に目が釘付けになった。
え?
「……ララっ?」
「ヴァ、ン、さま?」
謎の魔術師様がそこに立っていた。




