昼食の席で語る憧れ
アステライト視点
昼食時に交わせた言葉はそう多くない。
今日ほど、貴族としてマナーを重視する習慣を身に染み込ませて叩き込んであることを悔しく思った日はなかった。
できた会話の内容は、リオノーラの亡くなった父親であるエルトフォード前公爵のシフィアフラ殿について少し語ったくらいだ。
彼の優しく落ち着いた、酷く冷静な眼差しに微笑まれて見つめられているだけなのに、心の内側まで見透かされるような、そんな圧迫感を肌で感じた。
それが、最低限の社交を身に着けて、ウォルフィンリード前辺境伯であった父グラジエフと共に、シフィアフラ殿の前に初めて立った子供のときの記憶。
「まだ宰相職に就いておられたころだと思う。忙しい中、父に会いに来てくださって……。正直、緊張のし過ぎでその時、どんな会話をしたか一つも覚えていない」
情けない苦笑いを浮かべる。
「父に『もしもアスラン国が他国と戦争になった場合、我らは彼の宰相の策の下、命をかけ、王家と国と国民を守って戦うのだ』と教えられた。不謹慎だが、わくわくした。どんな策を提案されるのかとな」
ただし、その想像は現実になることはなかった。
シフィアフラ殿は宰相職を返上し、領地に引き籠ってしまい、父に会いに来る回数も格段に減った。
戦争が起こらない事実はとても良いことだと分かりながらも、あれほどの傑物が能力を発揮することもなく自領に納まっていることに憤りさえ感じた。
「これもまた不謹慎だが、俺はソーラス殿が宰相職に就かれるのを実は楽しみに待っている。なぜか、はわざわざ詳しく言わないが、いいだろう? ゆくゆく王になるフォーレスタの横にソーラス殿がいてくれたら、俺の心配事は一つ減る」
そうすれば、俺はどんな戦場の先陣にだって立つことができるだろう。
リオノーラは感心しすぎて、食事の手が完全に止まっていた。
自ら口を閉ざして、そっと促す。
こちらはもう食事が終わっているけれど、リオノーラはまだ半分ほど。
慌てて食事に戻る様子に目を細めた。
食事の席で一緒にいられたのはそこまでだった。
思っていた以上に、いつも以上にゆっくりと食事を摂れたけれど、やはり軍行を終えて帰ってきたばかりで忙しないのは変わりない。
「またあとでな。無理をしないでくれ」
一生懸命もぐもぐしているリオノーラの髪に口づけを送ってから、返事を待たずに部屋を出る。
忙しいのは自分だけでなく、もちろんリオノーラもだった。
夕食を一緒に取るには時間が合わず、陽は落ち、夜は更けていった。
アステライト
リオノーラ




