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狼辺境伯と魔女令嬢の白い結婚 不器用同士の恋が成就するまで  作者: 庭師K炎


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リオノーラの過去 王太子殿下の誕生日の夜会

 王太子フォーレスタ殿下の誕生日を祝うための夜会が大々的に王都で開かれる。

 その招待状が特使まで派遣されて届けられた。


 公爵である兄様だけでなく、私宛てにも招待状は届いたが、ソーラス兄様は参加には難色を示した。


「殿下のための夜会だ。国中の貴族の位を持つすべての女性が招待されているのだろうな」


 殿下と歳のころの近い未婚の高位貴族の女性はほぼいないらしい。

 下手をすれば、私が一番条件に当てはまるとも言われるほど。


 王太子フォーレスタ殿下との歳の差は、七歳。それくらいの差は問題のない許容範囲。

 貴族の結婚なんて男が年上の場合、歳の差十や二十、それ以上だって全然ありうる。


 ただし私とソーラス兄様と、フォーレスタ殿下は又従兄弟の間柄で、なかなかに血が近い。

 血が近いと子をなせなかったり、生まれても障害があったり、極端に身体の弱い子だったりする研究は、過去の王族や貴族が繰り返した血族婚の歴史の中で問題が証明されており、一般常識に近い周知の事実。


 シフィアフラ父様よりももう一代上にも王族からの血があって、今のエルトフォード公爵家と、アスラン王家の血は、本当に近しいそうだ。


 兄様が教えてくれたその説明を正しく受けとめて、理解する。


「リオノーラの存在は、まだ陛下と王太子殿下にしか伝えていない。高位貴族の中に殿下のお相手が望めないのは明白。多少なりとも身分の差があっても国内貴族令嬢を王太子妃としてあてがいたい、という思惑だろう。権力を持ちたい貴族たちにはいい立身出世の機会だろうが……。さてはて、宰相殿は手駒を作りたいのか、政敵をあぶり出したいのか……」


 ソーラス兄様の呆れ果てた呟きを聞く。


「リオノーラ、夜会に行ってみたいか?」


 突然、そう尋ねられた。


 行きたいか、行きたくないか。

 わがままを言っていいなら、間違いなく。


「……行きたくありません」


 あとたった数カ月先の誕生日を迎えたあとにある、今年十八歳を迎える全貴族令嬢出席必須のデビュタントの式典と、夜会。


 それに向けてダンスの練習を頑張っているのに、まだまともに踊れるとも思えないうちに、王太子殿下の誕生日祝いの夜会?


 身分的に、立場的に、王太子殿下と踊ること、そしてソーラス兄様と踊ることが義務付けられてしまう。


 ものすごい注目の視線の中で?


 緊張で震えて殿下と兄様の足を踏みまくる絵図しか思い浮かばない。

 今でも練習で兄様の足を踏みまくっているのに。


 恐怖に近い感情で震える私を見て、ソーラス兄様は声を出して笑うのを堪えるために顔を背けながら、話を続けた。


「私も、今お前を世間に公表するのは少しばかり早いと思っている。頃合いは、ちょうどデビュタントの時がいいだろう。デビュタントのエスコートは家族がするもの。王の御前で、お前がエルトフォード公爵令嬢だと知らしめるのが一番いい」


 ゆるりと妖艶に細められる、ソーラス兄様の浅い青の瞳の輝き。


 考えているその行動の中にどれほどの思惑と知略が巡らせてあるのか。多分これは聞かないほうがいいだろうと思える、兄様の微笑み方だった。


「リオノーラが行きたくないのであれば、それでいい。そうしよう。私は出なければいけないが、面白いことがあったらあとで話してやる。……ダンスの練習はもう少し頑張ろうな」


 ソーラス兄様は、小さな子供にするみたいに優しく頭を撫でてくれた。


 気恥ずかしくて、そしてダンスの練習のことを指摘されて、肩を落とすしかない。



 そして、ソーラス兄様は公爵として、王太子殿下のための夜会へ出席するため、王都へと数日間、公爵領を留守にすることになった。


 私は留守を任された女主人代役として、数日間、家政と領地の采配を振るったのだった。





リオノーラ

ソーラス

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