幕間 焼き菓子の香りが残る夜明け
アステライト視点
自分が毎朝起き出す頃の時刻になって、我に返る。
しまった、と思うのと同時に理解する、満足感や、充足感や、焦燥や、恐怖のような感情。
身体の下で、腕の中で、すっかり体力が尽きて眠ってしまっているリオノーラのなかから、ずるりと自分を抜き去った。
「…ん…ぁ……」
微かな声をあげて、びくびくと身体を跳ねさせて反応を見せはしたが、リオノーラは目覚めたわけじゃない。
敏感になりすぎた身体が、ただ反応しただけだった。
離れたくない。
離したくない。
離れなくてはいけないのが惜しすぎて、また彼女の肌に痕を残す。
泣き濡れた目元にも何度も口づけをして、涙を拭って、そっとリオノーラにブランケットをかぶせた。
ベッドから下りたところに、脱ぎ散らかした自分の服と、乱暴に脱がしたリオノーラの寝衣のドレス。
それを拾い上げようとして、ぽそりと布に包まれたものが落ちた。
「……?」
布を開いてみると、数枚のクッキーが包まれていた。
リオノーラが作ったものだとすぐに考えつく。
昨夜、リオはこれを作りに厨房へ行っていた?
どこかへ行くつもりではなく?
一つ、つまみ上げて口に運んだ。
ジャムこそついていないが、優しい甘さに懐かしさを感じる。
「……美味ぃ…」
変わらない、リオが作る食べ物の優しい味だと思い出せる。
ゴクリと飲み込んだ。
勝手に涙が滲む。
立ち上がって、もう一度、眠るリオのもとへ戻った。
ぎゅっと、力の入っていない柔らかな肢体を抱きしめる。
「リオ…、リオノーラ……」
名前を呼ぶ。
間違いなく、リオはこの腕の中にいるのだと思い知りたくて。
「……す、…て……ら…」
小さな声が、未だ眠りの中にいる彼女が、それでもその名前を呼んでくれる。
涙が落ちて、リオを抱きしめたまま、しばらく離れることができなかった。
アステライト
眠るリオノーラ




