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狼辺境伯と魔女令嬢の白い結婚 不器用同士の恋が成就するまで  作者: 庭師K炎


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28/90

幕間 焼き菓子の香りが残る夜明け

アステライト視点

 自分が毎朝起き出す頃の時刻になって、我に返る。

 しまった、と思うのと同時に理解する、満足感や、充足感や、焦燥や、恐怖のような感情。


 身体の下で、腕の中で、すっかり体力が尽きて眠ってしまっているリオノーラのなかから、ずるりと自分を抜き去った。


「…ん…ぁ……」


 微かな声をあげて、びくびくと身体を跳ねさせて反応を見せはしたが、リオノーラは目覚めたわけじゃない。

 敏感になりすぎた身体が、ただ反応しただけだった。



 離れたくない。

 離したくない。



 離れなくてはいけないのが惜しすぎて、また彼女の肌に痕を残す。

 泣き濡れた目元にも何度も口づけをして、涙を拭って、そっとリオノーラにブランケットをかぶせた。


 ベッドから下りたところに、脱ぎ散らかした自分の服と、乱暴に脱がしたリオノーラの寝衣のドレス。


 それを拾い上げようとして、ぽそりと布に包まれたものが落ちた。


「……?」


 布を開いてみると、数枚のクッキーが包まれていた。

 リオノーラが作ったものだとすぐに考えつく。


 昨夜、リオはこれを作りに厨房へ行っていた? 

 どこかへ行くつもりではなく?


 一つ、つまみ上げて口に運んだ。

 ジャムこそついていないが、優しい甘さに懐かしさを感じる。


「……美味ぃ…」


 変わらない、リオが作る食べ物の優しい味だと思い出せる。


 ゴクリと飲み込んだ。

 勝手に涙が滲む。


 立ち上がって、もう一度、眠るリオのもとへ戻った。

 ぎゅっと、力の入っていない柔らかな肢体を抱きしめる。


「リオ…、リオノーラ……」


 名前を呼ぶ。

 間違いなく、リオはこの腕の中にいるのだと思い知りたくて。


「……す、…て……ら…」


 小さな声が、未だ眠りの中にいる彼女が、それでもその名前を呼んでくれる。



 涙が落ちて、リオを抱きしめたまま、しばらく離れることができなかった。






アステライト

眠るリオノーラ

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