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狼辺境伯と魔女令嬢の白い結婚 不器用同士の恋が成就するまで  作者: 庭師K炎


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22/92

アステライトの過去 三年前 辺境伯の日々

 諦めなかった。

 諦めきれなかった。


 その日はどうやって城まで帰り着いたのかは分からなかったけれど、俺はどうにか生きていて、今まで過ごしてきた日常を思い出し、明日からもまた、戦いながら生きていくことを理解した。


 そして、時間を見つけては、境界の森のリオの家を訪れ、何か手がかりはないかと探してはなにも得られずに絶望し。

 軍行をしては、森の中、山脈の近く、王都へ行っても、地方の村へ防衛に行っても、あらゆるところでリオの姿を探した。


 国中で、魔女じゃないかと言われる女性の話題が上がったら、時間を作って会いに行った。

 冒険者を装って、そちらからも情報を集めた。


 ただし、そのどれもが徒労に終わった。



 ウォルフィンリード辺境伯となったことで、様々なところから縁談話が持ちかけられた。


 ちょうど俺たちの世代の高位貴族に令嬢はとても少なく、家格が釣り合わないということで、王太子フォーレスタの婚約者もまともに決まらないという状況なのだが、辺境伯という特殊な高位貴族である俺には、多少家格が釣り合わなかろうと、軍侯爵を切り盛りできるだけの才覚がある貴族の女性なら嫁げるのだ。


 それを分かっている貴族たちから、殺到するように縁談が届けられた。


 弟には、昔からとっくに夜会に連れて出る恋人(隣国王女だと判明する前から、ウォルフィンリード辺境伯夫人候補として周りから見られていた)がいたからこんなことは起こらなかった。


 けれど、俺はウォルフィンリード辺境伯とならないのであれば、どんな地位につかされ、どんな役職を持ち、どんな爵位を得るかもはっきりしないという理由から縁談話自体から遠ざかっていた。


 しかし、その全部が覆ってしまったものだから。


 フォーレスタの誕生日に開かれた夜会に出なくてはいけなかったときは、とんでもないことになった。


 どんな爵位の女性でもフォーレスタの目に留まるならばと、国中の貴族の女性たちが招待された王太子のための誕生祭の夜会だったのだが、どうやら女性たちは国母になる野望に燃えるよりも、辺境伯夫人になるほうが確実に手が届くと思ったらしい。


 俺は夜会から逃げ出すなんてことを初めてやらかした。


 後でフォーレスタに腹を抱えて笑われた。

 その時、仕方なくフォーレスタに事情を話した。

 

 親友は、そうか、と短く納得の言葉をこぼして、黙って肩を叩いてきた。


 あれから、何かと理由をつけて夜会への招待を断っても、フォーレスタはなにも言ってこない。

 そのうち、ウォルフィンリード辺境伯には想い人がいる、という噂が国中でひっそり語られるようになり、俺への縁談話は何十分の一といった数に抑えられることとなった。


 無くなりはしなくて、しつこいくらいに熱意を持って娘の良さを手紙にしたためて送ってくる貴族はいる。

 なんだか逆に娘ではなく、これだけ娘を褒め称えられる親本人に会ってみたい気にさえなってしまうのが不思議だ。


 そうして、俺がどうにかこうにか足掻いて生きて、リオを探し続けている日々が当たり前になったころ、父が息を引き取った。


 もう、言葉を交わせる時間はそう残されていないかもしれない、と連絡をして、ソルアンドレがウォルフィンリードに帰郷していた時だった。


 久しぶりに家族が揃って、父は嬉しそうに笑って、眠って、そのまま目を覚まさなかった。


 ちょうど、今年のデビュタントの夜会が開かれるという招待状を受けた時期だった。

 いつもとは違う意味で欠席の旨を返事する。


 前ウォルフィンリード辺境伯の死を悼んで、領内は喪に服す。


 父は、領民にも、部下にも、冒険者たちにも慕われていた。

 もちろん、息子である俺たちにも。


 葬儀が終わり、しばらくして、心配でならない、なんてことを言いながらソルアンドレは隣国へ戻っていった。


 俺は一人、ウォルフィンリード辺境伯としての使命を果たし続ける毎日に戻った。


 時々、フォーレスタが先触れも出さずに遊びに来る。


 それも変わらない日々であり、……リオの行方が分からないままなのも、変わらないことだった。





アステライト・ウォルフィンリード

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