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主君が大事すぎる侍従武官と侍女に、普通の恋は難しい  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)


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4話 侍従武官と侍女、計略する

「ですが、見違えるほど会話数が増えましたね」


 思い出して涙が潤みそうになっているレオを一瞥し、マリーが言う。

 レオは我に返り、うなずいた。


「それは俺も気づいた。やはり得意分野というのがよかったのだろうか」

「得意分野……?」

「同じ問いかけをこちらもさせてもらおうじゃないか」


 互いににらみ合ったが、こほんとレオは咳ばらいをする。


「なんにせよ、殿下が楽しそうでなによりだ。こういう機会をいくつか作るのがいいのかもしれん」

「こういう機会とは?」


 マリーが自分を見上げる。


「なんとなくだが……。婚約式の間に、数回顔を合わせて会話をしておけば、勝手に仲が深まると思っていたが、ある程度お膳立てをしておいたほうが当事者同士はいいのだろう」


 婚約の話が持ち上がり、実際にレイチェルがこの国にやって来た。

 侍従武官のレオだけではなく、侍従長や王室家政長とも打ち合わせをし、「お茶会」を設定していた。


 茶でも飲みながら、若い者同士数回話せば、打ち解けるだろう。

 そう考えていたが、甘かったのかもしれない。


 確かに、その辺の同世代の男や女ならそれでもよかったのかもしれないが、互いに超がつく箱入り息子と娘。ある程度の介入が必要なのだろう。


「姫様も今日は、久しぶりに声をたててお笑いになりました。婚約式までまだ日があります。このような機会を増やしましょうか?」


 マリーも納得したようだ。レオはうなずいた。


「殿下は、草花に対して造詣が深くあられる。今度はピクニックなどどうだろう」

「警備は大丈夫ですか?」


 マリーが目に険しさを宿らせた。レオは苦笑いする。


「王城内の東に自然を残した場所がある。そこに敷物をしき、屋外で飲食するとそれっぽいだろう。植物も山ほどある」

「なるほど、それなら問題ありません」

「ならば、今日の夜にでも日程を決めて伝えよう」

「承知しました」


 安心したマリーを見、レオは腕を組んだ。


「しかし貴嬢の腕前、なかなかのものだな。今日は感心した」

「それは嫌味ですか」


 マリーが鼻を鳴らす。

 セオドアのなんちゃって忖度試合稽古のあと、微妙な空気を払拭しようとレオが提案したのだ。


『そちらの侍女殿は腕に覚えがあられるらしい。ぜひ、俺と一度お手合わせ願いたい』と。


 当初、『女性になんということを言うのです』とセオドアに叱られたが、レイチェルがころころと笑い、『マリーは強いですよ?』と許諾してくれたのだ。


 そうして、互いに得意の得物を持ってコートに入場。


 レオは模擬剣。マリーはドレスの下にズボンを履き、警棒を持っていた。構えは相変わらず独特のかなり腰を低く落としたものだ。


 はじめ、の掛け声で開始した模擬試合。

 マリーの変則的な横からの振りに当初戸惑った。その上、彼女はレオの脛や足首を狙ってくる。打突と離脱の速度が速く、試合の序盤、レオは押されまくった。

 一緒に見学していた近衛たちが大声で叱咤し、レオと同じ立場の武官たちも「なにやってんだ!」と怒声を飛ばすが、「だったらやってみろ!」とレオは言い返す。


 上から打ちかかってきたり、突きを繰り出す攻撃法ならいくらでも対応できるが、薙ぐような横払いは初めてだ。しかも片手持ち。


 中盤までは相手の攻撃パターンを読むことに徹し、ヒット&アウェイのタイミングをつかむ。


 ここだ、と読んだ攻撃を上から叩き落し、かつ、警棒を上から踏みつける。引っ張りぬけなかったマリーが前かがみになったところを、レオは二打目を振り下ろす。


 彼女の頭上すれすれのところで剣先を止めた。


『やめ』と声がかかり、試合は終了した。


「貴嬢、警備も兼ねているのか?」

「もちろん。だからこそ、姫君の侍女を仰せつかったのです」

「この国にはない攻撃方法だが」

「我が国の女子にのみ伝わる武道です」

「ほう、興味深いな。今度、時間のあるときにご教示願いたい」


 レオがそう言うと、マリーは驚いたように少し目を見開いた。

 だがすぐに、お世辞だとでも思ったようだ。わずかに肩を竦め、「そうですね、また今度」と応じた。


「では、ピクニックの日程が決まれば」

「ああ。連絡する」

 こうしてふたりは別れた。


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