第21話:超特大の黒弾返しと、U字に曲がる戦車砲!
するとその時、真ん中の鉄ゴーレムの頭についた鉄のラッパから、反乱軍の隊長の下品で傲慢な怒鳴り声が広場全体に響き渡った。
『止まれ、そこのタンクローリー! こちら港湾解放戦線の第1戦車中隊だ! てめえらが武蔵野の中央工場から二十トンの温かいチョコレートを積んで逃げてきたことは無線で聞いてるぞ! 命が惜しけりゃ、今すぐそのタンクローリーと武器を置いて降りろ! さもないと120ミリ戦車砲で運転席ごと吹き飛ばすぞ!!』
「そ、そんな……!」
ハルトは隣の席に固定した『銀の冷たい箱』を見て、唇を噛み締めた。
「このケースに入ったゴブの抗体を、すぐ目の前の国立バイオ研究所の人たちに届けなきゃいけないのに! でも、あんな戦車の120ミリ砲で撃たれたら、運転席も後ろの二十トンのチョコレートタンクも一発で木っ端微塵に吹き飛んじゃうよ!」
ハルトが慌てて後ろへ下がろうと丸い舵を切った、その瞬間だった。
『逃げようったって遅えんだよ! 運転席のガキだけ吹き飛ばして、後ろのタンクは俺たちがいただく! 照準よし――主砲、撃てェッ!!』
――ガシャンッ! ウィィィィン……!
真ん中の鉄ゴーレムの頭がわずかに動き、長さ六メートルの『黒鉄の超巨大大杖』の先端――俺の頭がすっぽり入るほど太い暗黒の銃口が、ハルトの座る席と、その後ろにある『20トンの神の秘宝の大釜』へとピタリと向けられた!
(なっ……!? てめえ四天王の分際で、俺様の『生きた地図』と『20トンの温かい秘宝の大釜』に黒魔法をぶち込む気かァァァッ!? この銀の大釜に傷一つでもつけて秘宝を一滴でも地面にこぼしてみろ、てめえらを鉄の殻ごとスクラップにしてやるぞ!!)
「ゴブ、僕たちの『友情と信頼の絆』なら、どんな大砲にだって絶対に負けない! 僕たちで未来を切り開こう!!」
ハルトが右手の甲の金色の紋章を強く握りしめて叫んだ!
《契約主ハルトの『極限防衛命令』を受領しました!》
《皇帝固有権能【黒魔法完全支配】および【覇王の剛力】が限界共鳴を開始します!!》
「グガアアアアアアアアアッ!!」
六メートルの大杖の先端から灼熱の炎が噴き出すコンマ一秒前。
俺は十輪荷馬車の屋根の上から真下の石の道へと飛び降り、荷馬車の鼻先の三歩前に立ち塞がって、百三十センチの両足を大地に深く踏みしめた!
――ドゴォォォォォォォォンッ!!
真ん中の鉄ゴーレムの大杖から長さ五メートルもの巨大なオレンジ色の火柱が噴き出し、港中の建物の氷の板(窓ガラス)をすべて粉々に吹き飛ばすほどの凄まじい落雷のような轟音が炸裂した!
大気が真っ二つに引き裂かれる。
これまでの黒弾とは次元が違う、白い衝撃波の輪を纏った直径十二センチの【超特大の黒弾(120ミリ徹甲弾)】が、音速の五倍近い猛スピードで空間を抉りながら、俺の顔面と後ろの荷馬車へ向かって黒い彗星のように飛来した!
普通の人間なら、何が起きたか理解する前に肉片になっている速度だ。
だが――『敏捷440』を超える【ゴブリン・エンペラー(レベル58)】の俺の黄色い目には、その超特大の黒弾すらも、酔っ払った森リスが投げたドングリのように遅く見えた!
(こんなノロい黒魔法で、俺様の大釜に指一本触れられると思うなよ四天王めェッ!!)
俺は胸の皮膚で受け止めることすらしなかった。
俺は右手に握っていた愛用の相棒――『鉤爪付きの鉄の棍棒』を両手で野球のバットのように構え直し、背中の三十センチの赤い皇帝マントをバサッとひるがえして腰を深く捻ると、鼻先五十センチまで迫った【超特大の黒弾】のど真ん中へ向かって、神話級のフルスイングを叩き込んだ!
「ゴブァァァアアアアアアアッ!!(そっくりそのままお返しだ、くたばれ【暴食の痛撃・極】!!)」
――キィィィィィィンッ!! ドゴォォォォォォォンッ!!
俺の鉄の棍棒の平らな腹に宿った黄金と黒の覇気――皇帝権能【黒魔法完全支配】と『筋力440』の【覇王の剛力】が、飛来した超特大の黒弾を真正面から完璧に捉えた!
爆発すら許さない。
俺の鉄の棍棒に真芯で殴り飛ばされた超特大の黒弾は、黄金の稲妻を纏いながら来た時よりも『二倍』の超速度で真後ろへと跳ね返り――今しがたそれを放ったばかりの真ん中の鉄ゴーレムの『長さ六メートルの大杖の銃口の中』へと、寸分の狂いもなく逆戻りして飛び込んだのだ!
真ん中の鉄ゴーレムの中では、丸い覗き鏡を見ていた隊長が目を剥いて絶叫した。
『な、なんだとォ!? あの赤い前掛けをつけた緑のチビ助、俺たちの120ミリ徹甲弾を大工のバールで打ち返してきやがっただと――!?』
――ドガアアアアアアアアアアンッ!!
次の瞬間、真ん中の鉄ゴーレムの腹の内部で凄まじい大爆発が炸裂した!
重さ二十トンもある鉄ゴーレムの頭(砲塔)が、大杖ごと根元からポンッ!と栓抜きのように空高く吹き飛んで後ろの海へとドボンと落ち、中に乗っていた四人の手下どもは、背中を黒焦げにしながら後ろの鉄扉から飛び出して、積んであった魚網の山の上へ頭から突っ込んで気絶した!
静まり返った港の広場で、俺は赤いミニマントを風になびかせながら鉄の棍棒を右肩に担ぎ、煙を上げる棍棒の先端にフッと息を吹きかけてやった。
後ろの荷馬車の席では、ハルトが目を丸くして固まったあと、目のガラス(メガネ)の奥の瞳からポロポロと感動の涙をこぼした。
「す、すごいよゴブ……! 戦車の120ミリ砲をバール一本で打ち返して、しかも中の兵隊さんたちが死なないように砲塔だけを海に吹き飛ばすなんて……!」
ハルトは涙を拭うと、後ろの席から、前の要塞で奪い取った『大人の背丈ほどある漆黒の超巨大魔導長杖(50口径・対物ライフル)』と『爆裂魔石の連射筒(40ミリ自動擲弾銃)』を両手で引っ掴んだ!
「ゴブが僕とチョコレートを守るために戦車の砲弾まで打ち返してくれたんだ! 僕もゴブの主人として、残りの二台の戦車の足を止めるよ!!」
その時、真ん中の鉄ゴーレムが一撃で首を飛ばされたのを見た左右二体の鉄ゴーレム(残る二人の四天王)が、恐怖でパニックに陥りながら怒声を上げた。
『ひ、ひぃぃっ!? 120ミリ砲をバールで打ち返して1号車を破壊しやがったぞ!?』
『バ、バケモノだ! 近づかせるな、2号車と3号車で挟み撃ちにして、機銃と主砲でその緑のチビを挽き肉にしろおおおっ!!』
ゴゴゴゴゴッ! と左右二体の巨大な鉄ゴーレムが鉄の鎖を鳴らして前進し、六メートルの大杖を俺へと向けようと旋回させた――その刹那。
「僕の最高の相棒に、二度と大砲を向けさせるものかあああっ!!」
荷馬車の窓から身を乗り出したハルトが、『レベル12』の身体能力で超巨大長杖と連射筒を交互に構え、電光石火の早業で引き金を引いた!
――ドゴォォォン! ドォン! ドォン! ドゴォォォン!!
ハルトが放った一発目の【特大の黒弾】は、左の鉄ゴーレムの頭についていた『赤いガラスの目玉(照準サイト)』を正確に撃ち抜いて粉々に砕き、続く三発の【爆裂魔石】は、右の鉄ゴーレムの足元の『分厚い鉄の鎖』の継ぎ目を直撃して、鉄の鎖をズタズタに引きちぎったのだ!
《契約主『ハルト』の精密射撃により、敵の鉄甲ゴーレム2体の視覚と脚部が完全に破壊されました!》
(ふ……ふははははははっ!! 見たか、俺様の『大魔導師兼鞄持ち』の神業を!!)
俺は自分の緑色の胸板を小さな拳でドン!と誇らしげに叩いた。
(魔王軍の四天王が操るレベル18の巨大鉄ゴーレム二体を相手に、たった一息の黒魔法で片方の目玉を潰し、もう片方の鉄の足をへし折りやがったぞ! よし、動きが止まればあとはこの【ゴブリン・エンペラー】様の独壇場だ!!)
「ゴブァァァアアアアアッ!!(よくやったぞ鞄持ち! 周りの五百匹の雑魚どもごと、五秒で全部剥ぎ取って経験値に変えてくるぜ!!)」
俺が石の道を蹴った瞬間、『敏捷440』の俺の百三十センチの体は、緑と真紅の稲妻となって広場を駆け抜けた!
まずは鉄ゴーレムの周りに群がっていた『五百体の感染死体(レベル1)』の大群のど真ん中へ突っ込み、愛用の『鉤爪付きの鉄の棍棒』を真横に一閃させる!
――ドゴォォォォン!! バキバキバキィッ!!
もはや今の俺が棍棒をひと振りするだけで、竜巻のような真空の風圧が広場を薙ぎ払い、一列三十体のアンデッドがまとめて塵のように吹き飛んでいく!
わずか八秒で五百体のアンデッドを全滅させて広場を綺麗に掃除すると、俺はそのまま目玉を潰されてデタラメに小杖を乱射している左の鉄ゴーレムの頭の上へと、一足飛びで跳び乗った!
――キンキンキンッ! と俺の緑色の肌で黒弾を弾き返しながら、俺は頭のてっぺんにある分厚い丸い鉄の蓋の隙間に『鉄の棍棒の曲がった鉤爪』をガツン!とねじ込み、片腕の力だけでグイッと持ち上げた!
――メキメキメキィッ……バキィィィン!!
内側から鍵がかかっていた厚さ十センチの鋼鉄の蓋が、木の実の殻のようにいともたやすく剥がれ飛ぶ!
俺は中から悲鳴を上げる四人の手下どもの襟首を片手で大根を抜くように次々と引っ張り出して網の山へ放り投げると、そのまま右の鉄ゴーレムの上へと飛び移り、長さ六メートルの『黒鉄の超巨大大杖』を素手の両手で掴んで、グニャリ!とアルファベットの『Uの字』にひん曲げてから、残りの手下どもも全員引きずり出して港の鉄柱にミノムシのように逆さ吊りにしてやった!
《反乱軍・重装甲戦車部隊(Lv.18)3両を完全無力化し、感染死体(Lv.1)500体を討伐しました!》
《ロイヤル・ミルクチョコレート契約ボーナス(獲得経験値4倍)が適用されます!》
《レベルアップ! Lv.58 ➔ Lv.62 ➔ Lv.65 ➔ 『レベル68』に上昇しました!!(全ステータスが560を突破!)》
《共同戦闘により、契約主『ハルト』がレベル12から『レベル15』に上昇しました!》




