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第20話:四天王の緑鉄ゴーレムと、大木のような120ミリ大杖

南の海から吹きつけてくる潮風が、俺の背中に新しく生えた長さ三十センチの『真紅の皇帝マント』を誇らしげにはためかせ、頭の小さな黄金の王冠の真ん中に宿った赤い魔石を夕日の中でギラリと輝かせていた。


西の要塞から南の港へと続く『黒い石の道』を、十個の車輪がついた巨大な『銀の大釜付きの荷馬車(タンクローリー)』が獣のような唸りを上げて疾走していく。


その屋根の上に仁王立ちした俺――神話級の最終種族【ゴブリン・エンペラー(レベル58)】へと登り詰めた身長百三十センチのゴブは、足元に積み上げた美しい木の箱に緑色の鉤爪の手を突っ込み、金色の薄い皮に包まれた『日本一の極上ロイヤル・ミルクチョコレート』を四本まとめて口の中に放り込んだ。


――トロリ……。


熱い舌の上に乗せた瞬間、噛むよりも早く溶けてなくなる。

十年間熟成された神の豆の芳醇な香りと、天上の女神が絞ったかのような濃厚な白い乳のコク、そして魂まで震えるほど滑らかな『甘い神の脂』が口いっぱいに広がり、俺の黄色い目から歓喜の涙がこぼれ落ちた!


《神話級供物【極上ロイヤル・ミルクチョコレート(URランク)】を摂取しました!》

《魔力炉が最高潮で稼働中! 全ステータス(440以上)の維持および契約ボーナス(獲得経験値4倍)が常時発動しています!》


「ゴブゥ……グガ、ゴブゴブ!!(あああ、何度食っても反則級の美味さだぜ!! 腹の中にはこの最高級秘宝が九十箱、そして俺様の尻の下の銀の大釜には温かい二十トンの秘宝がタプタプと揺れてやがる! 今の俺様なら天界の神々が束になってかかってきても負ける気がしねえぞ!!)」


俺の真下の席では、俺様の専属『黒魔導師兼鞄持ち』であるレベル12の人間・ハルトが丸い舵(ハンドル)を握りしめ、隣の席には、さっきの白い衣の女学者から託された『俺様の聖なるヨダレ付きの綿棒が入った銀の冷たい箱』を大事そうに固定していた。


「見えてきたよ、ゴブ!!」


ハルトが前方の透明な氷の板(窓ガラス)の向こうを指差して、弾んだ声で叫んだ。


「あれが僕たちの目的地、『横浜港』だ! あの岸壁に建っている白い大きな建物が、君の抗体から世界中の人を救う特効薬を作る『国立バイオ研究所』……そしてそのすぐ後ろの海に停泊しているのが、社長さんが言っていた『一万トンの最高級チョコレートを積んだ巨大貨物船』だよ!!」


俺は荷馬車の屋根の端から緑色の頭を突き出し、キラキラと輝くヨダレを風になびかせながら前方を見据えた。


港の鉄門の向こう、暗い海の波に浮かんでいたのは、山のように巨大な『黒鉄の浮遊要塞(大型貨物船)』だった!

しかも、その巨大な船の腹の中からは、潮風の匂いすらも塗り潰すほど濃密で甘美な『一万トンの神の秘宝』の香りが湯気のように立ち昇っているではないか!


(あったぞ……! 大釜どころじゃねえ、一万トンの神の秘宝が丸ごと詰まった『浮遊要塞』だ!! あそこを占領すれば、俺様はこれから先、千年経っても腹ペコになることはねえぞ!!)


だが――俺の愛しき一万トンの浮遊要塞と、白い石の城(研究所)の入り口へと続く広大な石の広場には、招かれざる先客どもが陣取っていた。


広場を埋め尽くしていたのは、青い水夫の布を着た『五百体以上の感染死体(レベル1)』の大群。

そして、そのアンデッドの群れのど真ん中に、色とりどりの巨大な鉄の箱(コンテナ)を盾にして横一列に並んでいたのは――車輪ではなく『分厚い鉄の鎖(キャタピラ)』を履いて地面に鎮座する、全長十メートル近い『三体の巨大な緑鉄の魔導ゴーレム(主力戦車)』だった!


しかも、その三体の鉄ゴーレムの回転する頭からは、前の要塞で叩き潰した巨人が持っていた六連回転杖の『十倍』は太くて長い、まるで大木の幹のような『長さ六メートルの黒鉄の超巨大魔導大杖(120ミリ滑腔砲)』が、こちらへ向かって突き出されていたのだ!


ハルトは広場の手前百歩のところで十輪荷馬車を急停止させ、目のガラス(メガネ)の奥の瞳を見開いて息を呑んだ。


「あ、あれは反乱軍の『120ミリ主砲を積んだ本物の主力戦車』だ……! しかも三台も並んで、研究所の入り口と貨物船の桟橋を完全に塞いでいるぞ!」


俺は黄金の王冠の下で黄色い目を細め、三体の巨大な鉄の怪物にスキル【捕食鑑定】を発動した。


――――――――――――――――――――

【種族:反乱軍・重装甲戦車部隊(120ミリ主砲搭載)――レベル:18】

【装備:超口径・黒鉄大杖(120ミリ滑腔砲)/複合黒鉄重装甲】

【精神状態:絶対的傲慢・破壊衝動・秘宝強奪】

――――――――――――――――――――


俺の百三十センチの緑色の背筋に、ゾクゾクと熱い闘争本能の電流が駆け巡った。


(レベル18……! しかも本当に、大木の幹みてえに太い『十倍デカい黒鉄の大杖』を抱えて待ち構えてやがる!)


俺のゴブリン・エンペラーの頭脳の中で、敵軍の布陣が完璧に読み解かれた。


(なるほどな! 前の要塞で俺様がミンチにしたレベル15の巨人は、やはり【魔王軍・四天王】の中でも一番弱い先鋒に過ぎなかったんだ! そしてこの港の入り口を守っているレベル18の三体の巨大鉄ゴーレムこそ、鋼の肉体と合体した『残る三人の四天王』に違いねえ!!)


お読みいただき、誠にありがとうございます!

ゴブ様とハルトのすれ違いゾンビサバイバル、引き続き次話もお楽しみいただけますと幸いです!

(※もし本作を気に入っていただけましたら、ブックマークに追加していただけますと今後の執筆の大きな励みになります!)


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