第18話:素手のグレネード掴み取りと、宿敵『魔王(仮)』への鉄槌!
最終進化の黄金の稲妻が巻き起こした熱風が、俺の背中に新しく生えた長さ三十センチの『真紅の皇帝マント』をパタパタと誇らしげにはためかせ、頭の小さな黄金の王冠の真ん中に宿った赤い魔石がギラリと光を放った。
俺は『百三十センチ』へとさらに巨大化したこの堂々たる皇帝の巨体で荷馬車の鼻先に仁王立ちし、二十歩先に立つ宿敵――身長二メートル十センチの『魔王(ゴウザブロウ・レベル15)』を傲然と見下ろしてやった(気持ちの上では)。
『あ、あれだけド派手な黄金の雷光を放っておいて、伸びたのはたったの5センチで、背中に赤ちゃんの前掛けみたいな赤い布が生えただけだとォ!?』
魔王はハルトに撃ち抜かれた右膝の痛みに顔を歪めながら、黒い鉄仮面の奥で狂ったように怒鳴り散らした。
『ふざけるなよ、この緑の奇形チビ助がァッ! おい、後ろの増援の装甲車、突っ込め! 40ミリ自動擲弾銃で運転席のメガネのガキごとトラックを木っ端微塵に吹き飛ばせえええっ!!』
――ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!!
魔王の後ろの黒い鉄の戦車の屋根についた大筒と、さらに横の道から新たに現れた二台目の鉄の戦車に乗った『十人の黒鎧の精鋭部隊(レベル6)』、そして音に引き寄せられた『二百体のアンデッドの群れ』が一斉に殺到した!
空を切り裂いて飛んでくるのは、六発の『巨大な緑色の爆裂魔石』だった。
しかもその狙いは俺ではなく、すべて俺の後ろの席から顔を出している俺様の鞄持ち――ハルトの頭へとまっすぐに向けられていた!
「ハルトォッ!!」
人間であるハルトには、避ける時間すらなかった。
だが――ゴブリン族の神話の頂点【ゴブリン・エンペラー(レベル50)】へと登り詰め、『敏捷370』を手に入れた今の俺の黄色い目には、空を飛んでくる六発の爆裂魔石など、泥の上を這うナメクジのように遅く見えた!
(俺様の大切な『生きた地図』に指一本触れさせてたまるかァァァッ!!)
――ドォォォンッ!!
俺の百三十センチの体が、緑と赤の残像を残して荷馬車の鼻先から消えた。
六発の爆裂魔石がハルトの鼻先すぐ近くの窓へと突き刺さるコンマ一秒前――俺は空中に躍り出て、飛来する六発の爆裂魔石を、なんと『素手の両手』で熟れた木の実でも摘むかのように空中で全部まとめて掴み取ったのだ!
「ゴブゥッ!!」
俺は空中で体をひねり、『筋力360』の覇王の剛力を込めて、掴み取った六発の爆裂魔石をそのまま二台目の黒い鉄の戦車と二百体のアンデッドの群れのど真ん中へとまとめて投げ返してやった!
――ドゴォォォォォォォンッ!! グシャアアアアッ!!
天地を揺るがす大爆発が連鎖し、増援の鉄の戦車は一撃でひっくり返り、十人の黒鎧の精鋭たちは鎧ごと空高く吹き飛ばされて道の木々の枝に引っかかり、周囲の二百体のアンデッドは一瞬にして塵へと還った!
だが、敵の攻撃はそれだけでは終わらなかった。
爆煙の隙を突いて、一台目の戦車の上に乗っていた手下が『肩に担ぐ巨大な黒鉄の筒』を構え、窓から身を乗り出していたハルトの胸板へ向けて、炎を噴く特大の魔導槍を至近距離から放ったのだ!
「くたばれメガネ野郎ォッ!!」
(しつけえぞ雑魚どもが! 俺様の地図係に手を出すんじゃねえ!!)
俺は地面に着地することすらなく空中で空気を蹴り、ハルトの窓のすぐ前に割り込むと、右手の愛用の『鉤爪付きの鉄の棍棒』を横薙ぎに一閃させた!
――ガキィィィンッ!! ドゴォォォン!!
俺の鉄の棍棒に真横から殴り飛ばされた炎の魔導槍は、明後日の方向の空高くへと弾き飛ばされて空中爆発を起こし、俺は背中の小さな赤い皇帝マントを広げて、爆風と熱波からハルトの顔を完璧に守り抜いた!
すぐ後ろの席で、ハルトは自分の目の前に立つ俺の小さな背中を見つめ、感動のあまり全身を震わせて涙を流していた。
(ま、まただ……! ゴブはたった一秒の間に、素手でグレネードを掴み取り、対戦車ロケット弾をバールで叩き落として、二回も僕の命を救ってくれた!!)
ハルトの胸の中で、熱い確信が燃え上がった。
(僕を守るためなら、どんな爆発すらも恐れない……。これこそが僕とゴブの『心の絆と友情の力』なんだ! 僕たち二人がこうして信じ合い、力を合わせれば、どんな悪党の軍勢にも負けないし、きっとこの崩壊した世界だって一緒に救うことができる!!)
「ありがとう、ゴブ!!」
ハルトは涙を拭い、レベル10の怪力で再びあの『漆黒の超巨大魔導長杖』を窓から構えて叫んだ。
「僕たちの『友情の力』で、あの大ボスを倒そう! 僕が奴の武器を止めるから、ゴブが決めるんだ!!」
(おう、二回も命を助けてやったんだからな、きっちり働けよ俺様の黒魔導師兼鞄持ち!!)
広場の真ん中に一人取り残された魔王は、怒りと恐怖で血走った目を剥き、手にした『六連回転杖』を再び俺たちへと向けた。
――ブォォォォォンッ!!
だが、六本の黒鉄の杖から再び三千発の黒弾が吐き出されるより一瞬早く――ハルトの構えた超巨大長杖が火を噴いた!
――ドゴォォォォォォォンッ!!
ハルトが放った渾身の【特大の黒弾】は、魔王の分厚い胸の鎧ではなく――魔王の背中の巨大な鉄箱と六連回転杖を繋いでいる『太い魔力供給の鉄管』を、寸分の狂いもなく撃ち抜いて引きちぎったのだ!
――バチバチバチィッ!! ガシャンッ!!
青い火花が散り、魔王の手の中で唸りを上げていた六本の回転杖が、完全に沈黙して止まった!
『な、なんだと!? ガトリング砲の給弾ベルトと電源ケーブルを撃ち抜きやがっただと!?』
それが、この世界で『魔王』が発した最後の言葉となった。
次の瞬間。
『敏捷370』の脚力を解き放った俺の姿は人間の視界から完全に消え去り――コンマ一秒後には、身長二メートル十センチの魔王の分厚い胸板のど真ん中に、両足でドォン!と着地していた!
黒い鉄仮面の奥の魔王の目が、驚愕に見開かれる。
奴の目のすぐ前には、黄金の王冠と赤い魔石を輝かせた、俺の百三十センチの緑色の顔があった。
俺の黄色い瞳に宿っていたのは、慈悲などではなかった。
それは前世のエルドリアの冷たい泥の味と、あの日、下働きになるのを誇り高く断った俺様が、三日間何も食えず腹ペコで動けない隙を突いて卑怯にも胸を撃ち抜かせた魔王に対する、どす黒い復讐の炎だった。
(ついに詰みだぜ、宿敵『魔王』よォォォ!!)
俺は左手に持った『鉤爪付きの鉄の棍棒』の曲がった先端を、奴が抱えていた自慢の『六連回転杖』の隙間に引っ掛けると、『筋力360』の怪力でグシャアッ!と飴細工のようにひん曲げて地面へむしり捨てた!
『ひ、ひぃぃっ……ま、待て化け物! 金ならいくらでもやる、武器も食料も全部やるから命だけは――!!』
「ゴブ……グガアアアアアアアアアアアッ!!」
(前世では下働きを断った腹ペコの俺様を手下に命じて黒弾で撃たせやがって、俺様を呪いで飛ばしたのか殺したのかは知らねえが、この世界にまで追いかけてきて俺様の『生きた地図』と『神の秘宝の大釜』まで奪おうとした罪、てめえの命以外で償えると思うなよ魔王ォォォ!! 腹いっぱいの俺様は無敵なんだよ、これで前世の借りは完済だ、地獄の底で泥でもすすってろおおおおおっ!!)
俺は愛用の『鉤爪付きの鉄の棍棒』を両手で頭上高く振りかぶり、ゴブリン・エンペラーのすべての神話級パワーを一点に凝縮して、魔王の黒い鉄兜の脳天から胸板へかけて真っ直ぐに振り下ろした!
――【暴食の痛撃・極】!!
――バキィィィンッ!! ドゴォォォォォォォォンッ!!
雷が落ちたかのような轟音とともに、分厚い黒鉄の兜と全身鎧がガラス細工のように粉々に砕け散った!
俺の鉄の棍棒の衝撃波は魔王の巨体を突き抜けて真下の黒い石の道をすり鉢状に深く陥没させ、宿敵『魔王』は声すら上げることなく白目を剥いて地面に沈み、完全に絶命した。
《敵総首領『ゴウザブロウ(Lv.15)』、精鋭部隊10名(Lv.6)、およびアンデッド200体を完全討伐しました!》
《契約ボーナス(獲得経験値4倍)が適用されます!》
《レベルアップ! Lv.50 ➔ Lv.53 ➔ Lv.56 ➔ 『レベル58』に上昇しました!!(全ステータスが420を突破!)》
《共同戦闘により、契約主『ハルト』がレベル10から『レベル12』に上昇しました!》




