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恋を狩る夜に  作者: シロクマシロウ子


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3/3

02 表面だけの甘さ

 



 人生初めての正式な告白を受けて、初めてその"恋心"を食した。

 だが、だからといってその女子が初めての"恋人"ではない。


 目の前の女子生徒には食べ尽くされて恋心はもはや無い。当然、付き合いたいという意志も無くなっているだろう。今はただ自分が何をしたのか分からず混乱している。


「私どうしてここにいるんだっけ……? 夜岸(やぎし)……くん」


 恋愛感情とそれに(ともな)う行動についてはあやふやになるが、記憶は残っているようだ。


「さあ? 僕は誰かいるなって(のぞ)いたら具合が悪そうだったから入って来ただけ。もう大丈夫?」


 尋ねると彼女は少し時間がかかったが、強くうなずいた。


 私に"何か言っても仕方ない"と思ったのだろう。──それでいい。


 教室を出る時、一言だけ彼女に声をかけた。


「さようなら」








 真の"食事"の味を知った自分は何というか……

 簡単に言えば有頂天(うちょうてん)になっていた。


 ずっと気になっていた鍵のかかった箱が開き、自分の探していたものの答えがそこにあったような気持ち──



 自分はついに見つけた


 これだ 


 これだったのだ



 意識を集中して()ぎ分けると、教室内には何人かがよい香りを(ただよ)わせていた。しっかり見ると、他の人間よりも(あで)やかで魅力的に感じる。──自分にとって必要なものに。



 翌日から 私は社交的な人間になった。

 人ざわり良く誰にでも声をかけた。──女子には特に。


 良い香りがする人間には、ぶつかったり握手をする程度でも触れれば()えが(いや)やされることも覚えた。


 人の食事は変わらず食べ続けることは勿論(もちろん)できた。感覚としては、肉体維持のために。だが飢えや(かわ)き、空腹の気持ちを(しず)められるのは唯一(ゆいいつ)"恋心"だけだった。


 それを補充(ほじゅう)することは意外にも容易(たやす)かった。

 よい香りのする──食欲を刺激する女子を呼び出し、自分から告白をした。


 "私も好きだった"と言われたら喜ぶ仕草(しぐさ)として抱き締める。そうすれば恋心は吸収できた。しかもすぐに相手の女性達はその一連(いちれん)の出来事は忘れてしまうのだ。

 実験的な告白をしたことさえあった。






 中学2年の頃にもなると、背丈(せたけ)は伸び、女優の母親の血のおかげもあってか外見で目を()くようになっていた。


 愛想(あいそ)を振る舞うよりも、この時期はスポーツが得意なら人間からの人気は上がるようだった。

 バスケットボールには真剣に取り込み、朝はジョギングをして、走り込みだけは常にクラスでトップを(きそ)っていた。

 狙いは当たり、部活や体育祭では黄色い歓声をよく耳にするようになった。

 そして行動はエスカレートしていく──




 ある日、自分に好意があることが明白(めいはく)な2人の女子生徒を家に連れて帰った。

 期末考査前で、部活動は休みだった。テスト勉強をしようと言うのが集まった目的だった。

 ところが私の部屋で3人で話しているうちに、内容は(みょう)な方向に向かい出した──



(れん)くん 私たちさ、2人とも……連くんが好きなんだよね」


 橋本爽子(はしもとそうこ)加々見舞(かがみまい)は顔を見合わせながら、お互いを(さぐ)るようにした。


「えっ?」


 びっくりした顔をする。もう何度もしてきた顔だ。だが続く爽子の言葉には、演技ではなく驚かされることになる──


「連くんは、あたしと舞…………どっちが好き?」



 部屋は静まり返る。

 女の子達は不安そうにしながらも、少し いたずらめいたような笑みを浮かべてこちらを見ている。


 その期待した瞳の輝きを際立(きわだ)たせたものは、確かな()だ。


 彼女達の奥に(ひそ)む"無邪気(むじゃき)獰猛(どうもう)さ"に気付かされた瞬間だった。

 ただ喰われるだけの生き物ではないらしい。





 面白い──





 心から そう 思った。








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― 新着の感想 ―
こんな中学生いたら怖い! ってジャンルはホラーか(ほっ) ⋯⋯んっ?(笑) でも最近の子は大人びていますしねぇ。
あえて大声で言わせてもらう。 「こんな中学生はいないっ!!!」 大人びてますねぇ。夜岸くん。
食べちゃうと前後の記憶もなくなるのか…………。 便利(*'▽'*) 日記を書いてる子がいたりすると夜岸くん、ピンチ? Xなんかで「好き好き好きーっ!」って投稿しているのに気づいた被食者は夜岸くんを調べ…
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