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恋を狩る夜に  作者: シロクマシロウ子


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2/3

01 目覚めの刻

 




 自分が人間(ひと)とは違うことに気がついたのはいつだろう





 思えば父親もどこか──()()()()()()が感情の薄い男だった。


 産みの母親は女優の爾来(しらい)領子(りょうこ)

 だが自分にその女性との記憶は無く、父は次から次へと新しい女性を連れてきた。



 ────何故(なぜ)だろう


 それが(まった)(いや)ではなかった


 なんとも思わない──どころか

 当然だ と思った。


 次から次に来る様々な女性達に とり入って

 物分かりの良い 楽しい子供を演じる


 可愛(かわい)がられ(はぐく)まれ


 新しい女性が来ればまた

 彼女達を褒めて 喜ばせる


 (いつく)しまれ愛される


 父親も そういう私に満足しているようだった。





 だがどうしても────


 料理だけは 誰の作ったものも 美味(おい)しい とは思えなかった








 ある朝 父の寝室のドアが開いていた。


 彼が眠っている女性に心底(しんそこ) (いと)おしいそうに触れているのが見えた。


 彼のその表情に驚いて 目が離せないでいると

 やがてその瞳と目が合った。


 父は楽しそうに微笑んで言った。


 "お前も もうすぐ 分かるようになる"


 と。



 朝日の差し込む部屋で聞いたのに


 その時の彼の瞳は 夜のような漆黒(しっこく)の闇を 宿していた。










 それは中学1年の秋だったと思う。


 校内で体育祭が行われて、自分はバスケットボールに参加した。

 何本かシュートが決まり そのチームは優勝した。決勝では3年生に勝ったので クラス中大盛り上がりだった。

 その日帰ろうとした時──


(れん)くん、話があるんだけど……いい?」


 と呼び止められて、クラスの女子に上目遣(うわめづか)いに見られた。

 瞬間、相手からなんとも言えない香りがした。

 本能的に()き起こる──"()え"


  自分でもよく分からないが、とにかく今目の前にいる女の子は魅力(みりょく)があると感じた。なんだか……()きつけられる。


「いいよ、何?」


 優しく微笑むと彼女はホッとしたような顔をして手招(てまね)きした。

 2人で 使っていない教室に入る。


 どうしようもなく……気持ちが高揚(こうよう)している。それでいて()()まされていて……

 ()()()()と目の前の女子を真剣に見つめた。

 彼女は もじもじしていたが 話し出した。


「あの……あのね、私 前から連くんがいいなって思っていたの。今日はもうシュートも連発だし、すっごいカッコイイなって思っちゃって、それで……」


 顔を赤らめて 息をついてから彼女は言った。


「好きなので、付き合って下さい!!」


 言われたことに答える必要は()()()()()()

 大切なのは──


「好きになってくれて 嬉しいよ」


 ()()だ。告白してくれた彼女の腕を(つか)み 抱き寄せた。


「れ、連くん……!」


 驚きと戸惑(とまど)いを(ふく)む声がしたが、全身で包み込んで抱き締めた。

 誰にも──父にも教わりもしていないのに 自然と身体はそう動き、そして──

 



 流れ込んできた……!




 確かに ()()()()()

 


 この肉体に

 血に肉に

 五臓六腑(ごぞうろっぷ)

 骨にまでも



 染み渡る



 満たされる




 今まで常にあった(かわ)きと飢えが

 ひび割れていた土のようにそれを取り込む

 埋められて はめ込まれて



 足りていなかったものに初めて気づく


 そして知る


 父が味わっていたものは()()だったのだ──と。


 この個体からはもう()()()()()ことを感じ、腕の中で呆然としている女子を支えながら自然に笑みが浮かんだ。

 ()()()()()()()せっかくの好意は消えてしまったようだ。



 本当にありがとう


 “ごちそうさま”


  


 そして、見えないけれども何故か これはハッキリと分かった。


 自分の瞳は今きっと 夜のような闇を宿しているのだろう────あの人と同じ。







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― 新着の感想 ―
蓮の父親が純血だとすると、蓮はハーフくらいなのかなぁなんてぼんやり思いました。 母親が蓮を生むことができたエピソードもちょっと気になってみたり(◍•ᴗ•◍) (ネタバレになっちゃいそうなので、上の返信…
まさかの遺伝性!? 遺伝性恋愛心理摂取型強迫観念的精神症候群! なんだそれっ!?ヾ(≧∇≦) これ、一定の範囲内でしか行動しない人だったら相手を探すのも大変だよなあ。 広く狩り場を拡げていかないと(…
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