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恋を狩る夜に  作者: シロクマシロウ子


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1/1

00 プロローグ

 



「ごめん。同じ部署の人間とは付き合わないようにしているんだ」


 それは真実(ほんとう)だ。

 だが 樋口(ひぐち)いずみは退()かなかった。


「じゃあ、じゃあ……同じ部署じゃなかったら考えてくれたって言うことですか?」


 勿論(もちろん)。──うまそうな獲物(えもの)大歓迎(だいかんげい)だ。


「いくらかはね。──でも、やっぱり断ったと思う。まだ別れて2週間だからね」


「…………前の彼女さん、素敵な方だったんですね」


「そうだね」極上(ごくじょう)の味だった。


「分かりました。──()()無理だっていうことは」


 その言い方に(あきら)めは感じられ無かった。しかし樋口いずみは、こちらに背を向けて保管室の扉へと戻っていく。


 ──諦めないのなら、ここで()()()()()方がいいのか……


「樋口さん」

 

 彼女を呼びとめた。

 毎日顔を合わせるような人間と付き合うと、別れたあとが面倒だった。周囲にも原因を(さぐ)られることもある。

 踏み出して彼女との距離を()める。

 まださほどの飢餓感(きがかん)(むしば)まれてはいない。が、()()()()()()()()()


 振り返ってこちらを見ている彼女の瞳が期待と不安に()れている。息が感じられる(ほど)に近づき、彼女のその瞳を見下ろす。その体に手を回そうと──


 ガチャリ


 と後ろで扉の開く音がした。──邪魔(じゃま)が入った。


「ここにいたのか夜岸(やぎし)係長! 住由工房(すみよしこうぼう)サンもう来てる」


 同期の川和田(かわわだ)が顔をドアから(のぞ)かせて言う。その時、もう樋口いずみとの間の距離は充分とっていた。


「13時半だったよな? 早くないか?」


 私は川和田に尋ねた。彼はうなずいて


「まだ13時10分だ──けど、来ちまったんだよ」


 と ぶっきらぼうな口調で言った。

 ヤレヤレ……と足速に私は保管室を出て、応接室に向かった。








 応接室のドアを、形だけのノックをする。


「入ります。失礼します」


 告げて開けると、中には20代後半くらいのグレイのスーツの女性がいた。────女か。


「夜岸です。お待たせして申し訳ありません」


 深く頭を下げて名刺を差し出す。ロングヘアを一つにまとめたその女性は両手で名刺を受け取り


「すみません! 実はこちらが勘違(かんちが)いしていたんです。13時だと思い込んで入って来てしまいました。13時半って……さっきメモを確認したら書いてあって…………」


 そして、言葉は不自然に途切(とぎ)れた。

 沈黙(ちんもく)の長さから何があったのかと女性を覗きこむ。名刺を見つめていた彼女は顔をあげ──


「夜岸……(れん)……くん?」


 と問うように私の名前を読んだ。


 何人もの女性達の記憶が(めぐ)ったが……分からない。素直に認めようと思った。


「すみません。分からなくて。──お名前をいいですか?」


 彼女が心底(しんそこ)おかしそうな笑顔を浮かべた。その顔すらも記憶にない気がする。


「分からなくて当然だわ。私変わったの。コンタクトレンズになったし、(あご)の整形もしたの。私──八ツ柳修子(やつやなぎしゅうこ)です」



 "八ツ柳修子"



 聞いた名前にハッとする──思い出した。



 自分が()なのかようやく自覚(じかく)し、"()り"もなっていなかった頃だった。……無理もないが。まだ中学生だったから。



綺麗(きれい)になったね。八ツ柳さん」




 心からそう告げて 優しく微笑(ほほえ)




 ────この"恋心を食す者"の 最初の恋人 に








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― 新着の感想 ―
あれ、これは短編の奴ですかな?? シリーズ物ですので、連載の方が合ってるのかも知れませんね。 新連載、頑張って下さいませ。 ゜+(人・∀・*)+。♪ 魔神が応援しておりますよっ♪ d(≧∀≦)b
夜岸さんの連載とは楽しみですね! でもジャンルがホラーならいちゃいちゃした感じよりもばっさりいくのかな? お話の展開も楽しみです(◕ᴗ◕✿)
ついに、夜岸氏の連載版がスタートしましたね。とても嬉しいです。これからどのようなお話になっていくのか、とても楽しみにしております。
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