105.岡田教授の遺物
40分ほどで松戸に着いた。
「次の信号左に曲がったら、団地っす」
信号を曲がるのとほぼ同じようなタイミングで、ギーーーーーーーーーーーーーー―というオルダの共鳴が聞こえ始めた。
「めちゃくちゃいるじゃん…」
オレが言うと、
「何がっすか?」
畑谷が言った。
オレは耳栓を付け始めた。
「オルダっすか?」
畑谷が言う。
「お前のオルダ共鳴しないの?」
「全くっす」
「ってことは、岡田教授が持ってたオルダの可能性があるな」
「マジっすか」
オルダの共鳴はどんどん強くなっていく。かなり強くなったところで車は止まった。
「着いたっす」
目の前に5階建て建物が3棟並ぶ。おそらく昭和40年代に建てられたと思われる団地で、階段だけでエレベーターは無さそうだ。
オレたちは車を降りた。
「どっち方向から聞こえるっすか」
「一番端の建物。C棟?」
「岡田教授の住んでた建物っす。何階くらいから聞こえるっすか?」
「いや、上というより下の方から聞こえるが…」
オレたちは鳴き声が強い方に向かった。
「これだ…」
オレは立ち止まった。
そこには石垣で囲われた花壇があった。
「この周りの石っすか。岡田教授が集めてた石を花壇にしたんすかね」
基本的には三波石や花崗岩、青石などをうまく組み合わせて石垣にしている。ところどころヒスイが内側に入っていそうな石も混じっている。
オレはペンダントを外し、オルダを花壇の石に次々に当てていった。すべての石がそうではないが、何個かに一回、共鳴が消えていく。
その途中、管理人のような人が近づいてきた。
「何してる? 花盗もうとしているのか?」
と言ってきた。
オレと畑谷は思わず立ち上がり、
「あ、いえ、この花壇の石が気になって見てました。ところどころに良い石が混じっていたものですから」
オレはオルダの共鳴に気を取られながらも、慌てて言い訳を口にした。
「ああ、その石は元々ここの住人だった人が趣味で集めていたそうなんだが、亡くなってしまって、石の処分に困って花壇にしてみたんだ。中には良い石も混じっているのかもしれないが、石の価値は分からんので」
「花壇に使われなかった石もあるんですか?」
「業者に引き取ってもらったよ。いい石だからって盗むなよ。絶妙なバランスで成り立ってるんだから」
「はい、盗むようなことはいたしません。もう少し見物させてください」
管理人のような人は去っていった。
オレは引き続き挨拶をしていった。すべての石に挨拶させたつもりだが、まだ共鳴は残っている。
「他の場所にもいる」
「他の場所っすか」
「もっと奥の方に…」
オレは鳴き声の強い方に進んでいく。
畑谷がオレの後をついてくる。
団地を通り過ぎると緑が多めの公園があった。オルダの共鳴はその方向から強く聞こえる。
オレたちは公園の中に入っていく。
入ってすぐに白い立札のようなものがあり、城跡だということが書いてあった。確かに勾配や曲輪のようなカーブがあり、城跡というのも頷ける作りだった。共鳴がどんどん強くなっていく。
「戸塚さん、あれ怪しくないっすか?」
畑谷が指した先に、巨岩がいくつか並んでいる場所があった。共鳴は確かにその方向から強く聞こえる。
巨石群に近づき、オレは自分のオルダを一つ一つに当てていく。すると、巨岩のうち3つの岩にオルダがいた。同時に共鳴はパタリと止んだ。
「これと、それと、あれにオルダがいた」
「マジっすか。結構土に埋まってて、かなり前からありそうな感じっすよね」
「岡田教授、この石目的にあの団地に引っ越したんじゃ…」
「そういうことっすか?」
「いや、わかんねーけど、全部違う種類っぽいし、凝灰岩、緑色片岩、片麻岩それぞれにオルダがいる。石オタクなら興味をそそられそう」
「確かに…」
オレたちは、それ以上の情報を結局掴むことができないまま、畑谷の店に移動することにした。




