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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
104/107

104.大学

 佐々木ビルから松屋銀座まで戻り、


「姉貴に土産買ってもいいっすか? 今まで店番してもらってたんで、お礼に」


 という畑谷のリクエストを受け、デパ地下で松戸にはないというショコラティエでチョコレートを購入し、駐車場に戻った。

 車に乗り込み、シートベルトを付けながら畑谷が言った。


「次は高輪の病院に行くっすか?」

「その前に、ちょっと寄ってほしいところがある。方面的には途中にあるはずなんだ」

「どこっすか」

「海洋大学」

「海洋大学?」


 畑谷はピンと来ていないようだった。

 カーナビに海洋大学を探した。


「品川と越中島にあるっすけど」

「とりあえず品川で」


 場所を登録し、駐車場を出て、車を走らせながら畑谷が訊いてきた。


「確かにルート上っすね。なんで海洋大学なんすか?」

「香川さんによると、オレ、この大学行ってたらしい」

「何の勉強してたんすか? 魚とか船とかっすか?」

「食品らしい。そのまま食品メーカーに就職して、営業してたらしい」

「営業?! 全然イメージないっすね」

「オレ自身も驚いた。記憶喪失になった後、その職場に一旦は戻ったらしいが、すぐに辞めたらしい」

「それも覚えてないんすか?」

「覚えてねえんだよなあ。まあ、過去の記憶が無くなってりゃ、大学で学んだことなんて覚えてないし、当然そのメーカーの商品に関する知識だって丸っと無くなってるわけで、その時のオレは耐えられなかったんじゃねえかな」


 10分ほどで海洋大学に到着した。正面にあった駐車場に車を停め、キャンパスに向かった。キャンパスに入りがてら、


「何か思い出したっすか。オレ初めてっすよ。海洋大学」


 と畑谷が訊いてきた。


「うーん」


 はっきりとは思い出せない。

 並木道をどんどんと進んでいく。


「次の建物、図書館?」


 オレは少し先に見える建物を見た。

 畑谷は手前の案内板のようなものが見えたようで、


「あ、図書館っす」

「ということは、この角曲がると奥にグラウンドがあるんだ」


 オレたちは曲がり角を入った。その先にはグラウンドが見えた。


「思い出せたっすか」

「いや、何かを思い出したわけではないけど、なんかそんな感じがするって感じだ」

「モヤモヤっとした感じっすか」

「そうだなー」


 オレたちは端まで歩いて、そして戻った。

 結局、食堂・購買・体育館・教室…なんとなくの場所は合っていた。しかし、その時に自分がどんなことをしていたとか、そういう記憶は全く戻らなかった。


「習慣的なものは、体に染みついてるのかもしれないっすね。日本語話すとか、鍵を開けるとか、家事洗濯とか、そういうのは無意識に出来てたんすもんね」

「そういうことかもな」

「定期的に散歩とかに来れば、何か思い出すかもしれないっすね」


 駐車場に戻って、次の目的地・高輪の病院を設定しながら、


「出身大学に来てもこの程度なら、一度しか訪れたことのない病院行っても何も思い出せないかもな」


 オレは思わず言った。


「ま、とりあえず行ってみましょ」


 畑谷はそう言って、車を出した。

 10分弱で病院に到着した。地下駐車場に入った瞬間、


「あ、来たことある気がする」

「マジっすか」

「地下に入る感じ…」


 駐車場は満車に近く、空きを探すのに苦労したが、無事駐車できた。

 エレベーターに乗って、1階ロビーに出た。


「あ…」


 オレは思わず声を出した。


「思い出したっすか」

「来たことある気がする。はっきりとは覚えてないが、この丸い感じ…見覚えがある」

「まあ、1度しか来てないなら、ボワンという記憶なのも分かるっす。俺もそうっす」

「でも、畑谷君が言う通り、記憶が無くなる前に訪れていた場所を訪れるのは、何かを思い出すきっかけになりそうだな」


 結局のところ、劇的に思い出すようなことはなかった。

 車に戻り、シートベルトを締めながら言った。


「今日は付き合わせて悪かったな」

「いや、初めて行く場所ばかりだったから楽しかったっす」

「これから帰るんだろ?」

「その予定っす」

「あのさ、岡田教授の住んでた団地、連れてってくんね?」


 国立に住んでた岡田教授が松戸に引っ越した理由、そこが気になっていた。


「いいっすよ」


 畑谷はカーナビを「自宅に帰る」に設定し、駐車場を出た。 

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