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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~(小学校までの道2)~

 最初に訪問が叶ったのは、私の母校の夢小学校だった。

 そこで今日は私たち六人が、それぞれの楽器を持って母校に赴くことになった。

 六人のメンバーは伊藤くん甲本くん美緒と私の三年生と、今川さんと宮崎くんの二年生で、共に夢小学校の卒業生。

 新しい部長の今川さんと、副部長の宮崎くんが抜けるので、吹奏楽部のほうは元部長である江角くんと早苗がみてくれることになった。


 帰り道に各々の家に寄り、勉強道具を置いてきて楽器と最低限の筆記用具だけを持って小学校に向かう。

 カスタネットとドラムスティックしか持ってきていない甲本くんが、今川さんのホルンを持ってあげていて意外に優しい。


 複数の楽器を使うパーカッションや、とても人一人で持ち運ぶことのできないピアノやハープを除けば、吹奏楽部で一番重い楽器はコントラバスとチューバで重さは共に十キロ前後となる。

 私が使うオーボエや、美緒のクラリネット、桃子の使うフルートは、どれも一キロ以内と軽い。

 低音パートを受け持つ楽器(バリトンサックス、ファゴット、ユーフォニアム)は、おおむね五キロから六キロほどで、私たちの中学校で使われる低音の楽器の中で最も軽いのが今川さんの担当するホルンの重さは三キロほどで、ハードケースに入れた状態だと五キロくらいにはなる。

 ちなみに伊藤くんのトランペットは一キロちょっとで、江角くんのトロンボーンは二キロくらいある。


「あれっ! 鮎沢、子の神坂を通るルートを使わないのか?」

 私がひばり橋の方に向かわずにそのまま道をまっすぐ東に向かったとき伊藤くんが私に聞いたので、バイパスの上を越えて無量坂から小学校に向かうと答えた。

 伊藤くんはそっちのルートだと少し遠くなると言ったけど、おそらくほんの少ししか違わない。

 子の神坂に向かうときに危険をおかして信号を使わずに県道をそのまま渡れば百メートル以上は近くなると思うけど、危険をおかしてもし事故にでも合えばせっかく協力してくれる小学校ができて実現できたこの計画そのものが消滅してしまう。

 学校の備品である高価な楽器を持って、ほとんど舗装されていない状態に近い砂や土で覆われた子の神坂を通って、足を滑らせて楽器を壊してしまえば持田先生は後輩たちにも迷惑がかかる。

 それに本来は九月いっぱいで引退しているはずの私たち三年生は、すでに学校から借りていた楽器を返していて、つまりこれはこの催しのために新たに借りてきた楽器という位置づけになる。


 以前の私だったら、何も考えずに登下校で使っていた子の神坂を通るルートを通っていたかもしれないが、ロンが家に来てくれてからは常に安全に気をつけるようになった。

 なんといっても私たちの身体能力を超えるスピードで走る犬を毎日散歩していると、とにかく私がしっかりしていなければまたロンを事故に合わせてしまうかもしれないから。


 小学校に着くと、私たちが小学校のときにお世話になっていた露木先生が校門の前で出迎えてくれた。

「ちょっと見ないうちに、みんな大きくなったわね~!」


 露木先生は私たちが五年生のときに新任で赴任してきた小柄できれいな音楽の先生。

 もうあれから五年近くたつのに、かわらずにきれいなままだった。


「伊藤くんも甲本くんも宮崎くんも、大きくなったわね~!」

 ちなみに伊藤くんは百八十センチ近くあり、甲本くんと宮崎くんは百七十センチ前後。

「あら鮎沢さんも菊地原さんも今川さんも、見違えるほどきれいになって!」

 さすが先生は大人だけあって、褒めるポイントをよく知っていて、社交辞令が入っていると分かっていてもうれしかった。


 露木先生に連れられて音楽室に入ると、風っ子音楽発表会に向けて練習をしている後輩たちがいた。

 六年生は私たちが卒業したあとに入ってくる新一年生。

 そして五年生は今川さんたちが卒業したあと、四年生は木乃実ちゃんが卒業したあとで入ってくる一年生。


 そう考えると吹奏楽部のためだけでなく、人を育てることの大切さがよくわかるとともに、中学校の持田先生や小学校の露木先生の教育に対する思いがなんだかよくわかるような気がする。


 小学校のみんなといっしょに楽曲の演奏をしたり私たちが持ってきた楽器を持ってもらい演奏の体験をしたり、甲本くんは持ってきたカスタネットやスティックの使い方のコツを教えるだけでなく、小学校の音楽室にあるすべてのパーカッションをいっしょに演奏してみせてアドバイスをしていた。


「やはり歳の差を感じるわぁ~」

 生徒たちと別れて帰り際に露木先生が言った。

 先生のほうが教えるのは上手でしょう?と私たちが言うと、それは教える内容を勉強しているからであって教えたことを子どもたちがどれだけ吸収してくれるかは生徒にかかっていると言った。


 そのうえで、私たちは子どもたちと年齢が近いから、教えてもらう内容の吸収力は先生が教えた場合とぜんぜん違うと言った。

 先生は所詮先生で、生徒ではない。

 だけど君たちは、この小学校の生徒にとって、来年や再来年というすぐにやってくる自分たちの未来の姿。

 露木先生は来てくれて本当によかったと言ってくれ、また来てほしいと言ってくれた。


 帰りも同じルートを通って帰ると、無量坂から見る景色はロンと下見を兼ねて散歩に行ったときと同じように丹沢山系にかかる夕焼けがとてもきれいだった。

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