~(小学校までの道3)~
次の週は江角くんの母校、西小学校の番だった。
一本通りをはさんだすぐ隣にある西小学校には、江角くんと早苗と二年生の鈴木さんのOBの他に部長の今川さんの四人で行った。
今回は学区外の生徒が多い、私たちの中学校から離れた場所ではないので、練習が終わったら出張メンバーは学校に戻ってくる。
私はお留守番で宮崎副部長のサポートをしながら、出張したメンバーの帰りを待っていた。
まさかとは思うけど小学生たちが上手に練習できないのを見た江角くんが怒りだしたりしませんようにと、神に祈るような気持ちで待っていると教えている木乃美ちゃんに「先輩は、今日は気もそぞろ」だと注意されてしまった。
六時前に江角くんたちが帰ってきた。
帰ってきたみんなの顔を見ればすぐに成果がわかるほど楽しそうに笑っていたので、私もホッとしていると隣でそのようすをいっしょに見ていた木乃美ちゃんに「心配して損をしてしまいましたね」と言われて少し恥ずかしかった。
いっしょに行っていたメンバーのうち、部長の今川さんがいないことに気がついて江角くんに聞くと、今日の報告をするために職員室に行っていると教えてくれた。
私たちのときは中学校の学校区のなかで一番離れている小学校まで行ったので、中学校には戻らないで当日の連絡は終了して家に戻ったあとで私が先生に電話で伝えたのだけど、夢小のときも西小のときも部長としていずれの小学校にも学校を代表して参加した今川さんには迷惑をかけていると思った。
帰り道で今川さんにそのことを謝ると、今川さんは「迷惑どころか、千春先輩にはもう感謝しかありません!」と、明るい声でこたえてくれた。
今川さんの明るいこたえには、もうひとつわけがあった。
というのは、西小学校の校長先生から持田先生あてに、正式な交流の依頼が入ったことだった。
「西小の校長先生からということは、今川さんたちが帰ったあとですぐに職員会議を開いて決まったこと?」
目を丸くした私が聞くと、今川さんもそのようで、さっそくうちの職員室でもこれから緊急の職員会議が開かれるということを教えてくれた。
「すごいじゃない!」
「でも、まだ決まったわけではないし……」
「決まるに、決まっているでしょう? 依頼してきたのは相手側の校長先生よ!」
そんな話をしていて時間が経ってしまい、最終下校時刻が近付いてきて帰り支度をしているとき、急にすごい勢いで音楽室の扉が開いたと思ったら息を切らした伊藤くんと甲本くんがいた。
そういえば今まで静かだと思っていたら、伊藤くんたちがいなかったんだ。
私たちが振り向くと同時に、伊藤くんはなぜか大声を出して言った。
「西小学校との合同練習が決まったぞ!」と。
言うまでもなく音楽室は歓喜の声に包まれた。
伊藤くんと甲本くんは今川さんと私の話を聞いて、こっそり職員室に行って職員会議の盗み聞きをしていたのだ。
私たちがキャーキャー言っているところに、持田先生が入ってきて正式に合同練習と交流会の話を伝えてくれた。
家に帰ってそのことをロンに伝えると、ロンも喜んでくれて、夕方の散歩は二人ともスキップをするように軽やかに走って楽しく散歩をした。
もちろん次の日の朝の散歩も。
朝練に行くときは普通に伊藤くんも甲本くんもいたけれど、夕方の練習には来なかった。
どうしたのかと思っていたら、大切な職員会議を盗み聞きしたことの罰で、一週間の謹慎だということを江角くんから教えてもらった。
この忙しい時期に……とは言っても美緒と早苗も十月いっぱいで引退するし、桃子や加奈子たち他の三年生はほとんど体育祭で引退した。
本来なら私たちも既に引退しているはず。
けれども私が無責任に言い出したことだから、責任をもってこれをまとめなければならないと思っている。
本当なら去年気がつけばよかったのだけど、やはり三年生として、吹奏楽部の副部長として大会に挑んで初めて分かることはある。
私はそれに気づいた。
そして、それを後悔にはしたくなかった。
後悔にしてしまえば、また後悔は繰り返されるだけだから。




