~(ある提案1)~
目標としていた県大会での金メダルは獲得した。
だけど私たちは県大会を突破して東関東大会へ進むことはなかった。
もともとそれは「希望」であって「目標」としていなかったから。
東関東大会やその先の全国大会を目指すためには、もっと高度な練習が必要となるだろう。
顧問の持田先生だけでは指導が行き届かないし、私たち上級生の中でも下級生にちゃんとした指導ができるのは江角くんくらいなものだ。
私はオーボエしか教えられないし、加奈子もファゴットしか教えられなくて、ともに教えられる人数はオーボエもファゴットも二本ずつしかないので、その都合で一人だけとなる。
そして大会が終わったいま、そのうちの一本は春に新入生が入ってくるまで使われない。
次に何かをつなげるために、なにかが違う気がした。
私たちは、このまま引退していいのだろうか……。
『ニワトリが先か、タマゴが先か』という有名な議論がある。
私は、ニワトリが先だと思う。
だってニワトリという親が先にいるから、タマゴから生まれたヒナは親から生きるための知識を学び、外敵からも守ってもらうことができるでしょう?
もしタマゴが先だとしたら、生きるための知識も知らないまま外敵におそわれて次の世代につなげることが難しくなってしまう。
だから私たちは先輩として、親になってあげないといけないと思う。
そしてそれを高いレベルで受けついでいくことで、いますぐは難しい目標であっても、いずれ達成される目標となる。
それが文化であり、伝統だ。
大会が終わった休み中に、練習をしながら、ロンをなでながら、勉強しながら、そんなことをずっと考えていた。
月曜日に、そのことを江角くんに相談した。
江角くんは、もう終わったことだと言った。
俺たちは一応体育祭までで、その後のことは後の者たちが決めればいいと。
おせっかいだということはわかっている。
けれども、だったらなぜ大会での演奏が終わったあと、会場を出て悔しそうにしていたのかと聞いた。
終わったことであれば、わざわざ振り返って悔しがることもなかっただろうと。
ムキになって食い下がる私に、いつもクールな江角くんが声を荒げて言った。
後悔したって時間は戻れない。
あのとき、ああしておけば、とか。
あそこを、こうしていれば、とか。
そもそも何も知らない一年生が入ってきたときから、大会までにたった3か月しか時間がないのにゴールデンウイークや修学旅行も入るのだからよほどできのいい一年生が入ってこない限り戦力にはならない!と言った。
もともと江角くんは一年生を多くメンバーに入れることに反対していた。
それを私が経験をつませるために、できるだけ多く入れたいと言い、できる限り多くメンバーに入れてもらった。
江角くんの言った「できのいい一年生」とは、既に担当する楽器の基礎を身につけて中学に入ってきた江角くんや加奈子のような子のこと。
それは親や家庭環境の問題で、私たちにはなんともしようが……ない!?
江角くんの言葉が大きなヒントとなり、私はあることに気がついた!
担当楽器の経験をつんだ一年生が、たくさん入ってきてくれる希望はうすい。
けれども、担当楽器の経験を少しつんだ一年生が、たくさん入ってきてくれるようにすることはできるのではないだろうか?
私はその考えを江角くんに伝え、すぐにパートリーダーと二年生の副リーダーを集めてミーティングを行い、その結果を持って持田先生のところに行き相談した。




