~中学最後の大会3(支部予選と里沙の準決勝の応援)~
いよいよ今年のコンクールが始まった。
相模原支部大会が行われる相模女子大学グリーンホールも、もう中学に入って三回目。
一年生のときにステージへ立つことは叶わなかったけれど、あのときはあのときで私たちは裏方として充実していた。
決して裏方に甘んじていたわけではないが、ステージに立てないことはもう決まっていたのでそれを悔いていても何も始まらない。
だから裏方の正規メンバーとして、がんばった。
こうして、がんばることで何かが変わると信じて。
幸いにも今回大会に選ばれなかったメンバーも、一年生の木乃美ちゃんを中心にして前向きにがんばってくれて、まるであの頃の自分を見ているように逞しくて私たちも負けないようにがんばろうと思った。
この日は昼前から小雨が降っていたけれど、お父さんもお母さんも、そして兄も来てくれた。
ロンだけは会場に入れないので、絵でお留守番だったのが少し寂しかった。
木乃美ちゃんたちがはりきってくれたおかげで私たちは大会に集中することができて、メンバーの誰もミスすることなく今まで練習してきた中で最高の演奏ができた。
もう結果なんて気にする部員はいなくて、私たちは自信をもって結果の発表を待ち、結果も私たちの思うような結果で県大会に駒を進めることができた。
ホールから久しぶりに外に出たときには、もう雨も上がっていて晴れた空には大きな虹がかかっていた。
次の日は日曜日だったので吹奏楽部の練習はお休み。
いつもどおりなら、このまま家で練習に明け暮れる一日を送るのだけど、里沙のソフトボールの県大会の応援に行くことにした。
ソフトボール部の里沙はエースとして金曜日の初戦、土曜日に行われた二試に両方先発し完投勝利して、今日行われる準決勝に進出した。
ロンも一緒に応援に行けるようにと、茂山さんが家まで車で迎えに来てくれた。
「わざわざすみません」
「なんの!どうせ暇人だから。それにしても、その大きいバッグって応援グッズか何か?」
茂山さんの気が付いた私のバッグにはブルーシートに日傘をはじめ、おしぼりに、ドリンクのほか、ロンの糞尿の処理や暑さ対策グッズが入っている。
特に犬は私たち人間のように体中に汗腺がないので、うちわや扇風機みたいに間接的に冷やす方法は取りにくく、実は熱中症対策は難しい。
お散歩や運動が大好きな犬たちは真夏の暑い中でも飼い主に外に連れて行ってくれることを喜ぶが、実は熱中症のリスクは高く、たまに散歩の途中ではあはあと荒い息をしたまま動かない子を見かけるが、あれは動かないのではなく熱中症で動けなくなったものがほとんどなのだ。
その犬たちの熱中症対策は、
・日に直接当たらないようにしてあげる。
・地面からの熱を受けにくくしてあげる。
・お水をいつでもたくさん飲めるようにしてあげる。
・いざとなったら直接水で体を冷やすようにしてあげる。
などがある。
また車に乗せる場合には車の中に置き去りにしないのは当然なのだけど、いったん止めた車に再度乗るときは十分に車内の熱い空気を逃がして冷房をしっかり効かせてから乗せないと、車内の暑さに耐えかねて走り出した車の中からでも開いた窓から外に飛び出すこともあるので注意が必要なのだ。
だから、バッグの中には大量の水に保冷材も入っていて茂山さんが大きいバッグに驚くのも無理はない。
熱中症対策のほかにも茂山さんの車を借りるので、簡易シートと犬用シートベルト、それに粘着性ゴミ取り器(通称コロコロ)も持参した。
車で40分ほど走ると、試合の行われる総合公園のグラウンドに到着した。
私の大きな荷物を茂山さんは、ひょいと持ち上げて運んでくれた。
『こんなに大げさでごめんなさい。でも私にはそれだけロンが大切なの……』
きっと茂山さんは分かってくれていると思う。
だって兄や美樹さんの友達なんだもん。
そう思って、甘えることにした。




