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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~中学最後の大会1(大会を前に思うこと)~

「いってきまーす!」

 玄関ですこしロンと遊んでから家を出た。


 今日から通常モードで、朝練の一番乗りを目指す。

 いつものように路地の角で伊藤くんと美緒と甲本くんに出会い、私たちは四人で学校についた。

 まだ閉まっている正門の前には江角くんが来ていて、七時がきて正門が開くころには桃子と早苗、それにソフトボール部の里沙も来た。


 今年は副部長で、木乃美ちゃんにオーボエを覚えてもらうのに忙しくて応援に行くことはできなかったけれど、里沙は五月におこなわれた全国中学女子ソフトボール大会の相模原予選をすべて1失点以下の完投で優勝して既に県大会進出を決めている。


 私たちの地区予選会は七月で、同じ日に里沙たちの県予選が行われる。

 だから里沙に負けないように、私たちはここで県大会出場を勝ち取らなければならない。

 里沙とアイコンタクトをとったあと、私たちは職員室に鍵を取りに行き、里沙は運動場に向かった。

 鍵を取って職員室を出たときに「すみません、遅れました」と言って息を切らして木乃美ちゃんがやってきた。


 私は大丈夫よと言ったあとで、体育館に着くまでに乱れた呼吸を整えておくように言って前を歩いた。


 江角くんたち男子はそのまま音楽室に上がり、金管の二人は音を出していい時間までは楽器のメンテナンスやマウスピースを使っての練習をして、パーカッションの甲本くんはドラムスティックだけを使ってカーペットを叩いて練習している。


 定期考査の発表から部活動がお休みになって、定期考査後から修学旅行に行ったので二週間ぶりに木乃美ちゃんの練習をみるが、その上達ぶりに驚かされた。

 家での練習を聞くと、高校になっても吹奏楽を続けているお兄さん(児島先輩)がいつも練習をみてくれているのだと教えてくれた。


 やはりそうだ。

 私と同じ。

 誰か一人でも、聴いてくれる人がいれば練習は楽しくなる。

 楽しくなると毎日練習するようになり、毎日もっと練習するようになれば、おのずと上達も早くなる。


 結局、だれも急に上手くなるような事はないのだ。

 音楽での楽器の演奏は、その楽器の演奏が好きで、好きなうえにどのくらい練習に時間がかけられるかがもっとも大きいと私は思っている。

 もちろん人によってその上達の速さは異なるが、かけた時間は決して裏切らない。

 それが楽器の演奏の特徴。

 スポーツのように運動神経がいいとか体力があるとかではなく、誰でもやろうと思えばできるのが音楽の良さだと思う。


 六月も終わりになっても、まだ一年生の大会メンバーは決められなかった。

 江角くんのほうはもう決めているみたいだったけど、私が待ったをかけているのが決まらない理由。


 もう少し、ほんのもう少し頑張ってくれたなら。

 そういった当落線上にいる子がすごく多い。

 メンバーに入りたい気持ちは、みんな同じ。

 できるなら去年のように全員で演奏したいけど、今年は去年より人数が増えたのでそれでも収まりきらない人が出てしまう。

 ほんの数人だけ落ちた中に入ってしまうと、心が傷つきそう。

 だから一定の基準を設けたが、その判断も難しい。

 いっそのこと、一昨年のように、担当楽器の経験年数を優先してその基準を満たさない人はすべて落としてしまうほうが、批判は受けてもあとくされがなくてよかったかも。

 でもそれでは編成が小さくなってしまい、曲に厚みが作れない。

 結局それほど大所帯ではない私たちの中で考えられる最良は、大会までのわずか三か月の間に、いかに一年生を育てるのかにかかっているのだろう。


 そのためには、なにをするべきなのか。

 なにをしなくてはいけないのか。


 私の心は、もう大会が終わったあとのほうに向いていた。

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