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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~恋バナと、ゆううつな修学旅行のこと2~

「だって千春、副部長でしょ」

「それと好き嫌いは関係ないと思うけど」


「そうかなぁ……」

「そ・そうでしょう、ふつう」


「でもね、美緒から聞いたんだけど江角くん、部長になってだいぶ変わったって言っていたよ」

 なぁ~んだ、そんなことか。


 部長副部長の男女の関係ってすぐに恋話にされちゃうんだよなと思って「部長になって意識が高くなったんじゃない?」と言うと里沙は「私も最初はそう言ったんだよ美緒たちに」と言った。


 ん?

 ”美緒たち”っていうことは噂の出所が一人じゃないってこと?


「それに部長になった経緯も問題があると思うの」

「?」


「だって、千春が副部長になることが決まってから江角くんが部長になることが決まったんでしょう?」


 そういえば部長を決めるときすごく難航していて、それなら先に副部長を決めることになり、そこで私が副部長になることが決まると、部長もあっけなく決まったような気がした。


「それに、江角くんってもともと人の世話ができる子じゃなかったでしょ。それが今では部長として人の世話も頑張っているし」

「だから、それは部長になった意識の違いじゃ……」


「だったら、なんで木乃美っていう一年生のお守をしている千春の応援に来たの? おなじ木管楽器担当者の美緒ならまだ分かるけれど、江角くんはトロンボーンでしょう?」


 たしかにそう言われると不思議な気もする。

「でも、トランペットの伊藤くんと宮崎くんや、ホルン担当の今川さんにパーカッションの甲本くんだって来てくれたよ」

「あー、それは……」


   *

 立木里沙は、その続きを言わなかった。

 伊藤くんが千春のことを好きなのは、千春以外なら知っている人は多い話。

 甲本くんにしても、一年生のときに千春に卑怯な意地悪をしようとした女子から千春を守るために暴力的なことをして先生から怒られた話は、おおやけになっていないけれど知る人ぞ知る有名な話。


 里沙自身もそうだけど、美緒や一級下の今川さんとその幼なじみである宮崎くんにとって千春は特別な存在。

 そういった人たちが木乃美さんを支えるために必死になっている千春を助けるため、少しでも負担を軽くするために心配して集まってきた。

 おそらく江角くんも。

 なぜなら、その人たちはみな千春の性格を知っている。

 千春は思いつめたら、自分が倒れるまで自身の限界を超えてしまう心配があるから。

 私たちのように急に何かに夢中になるのとは違い、千春の場合は永続的に夢中になる傾向がある。

 そう。

 ロンやオーボエのように。


「もう来月には、修学旅行だね! 私、京都とか奈良とか行ったことないから楽しみなんだ」

 里沙は、話を来月にせまった修学旅行の話に変えた。

 修学旅行は、みんなが楽しみにしている中学生活で最大のイベント! のはずなのに、修学旅行の話に変えたとたん千春の顔が曇ったので理由を聞いた。


   *

「どうして修学旅行行きたくないって言うの!」

 里沙に怒られたのは、私が担任の先生に修学旅行を休めるかどうか聞いたことを言ったから。


 先生からは行けない理由があるのなら仕方がないけれど、ただ個人的に行きたくないというのなら先生に理由を話してほしいと、結局たいした理由もなしに休むことができないらしい。

 いっそのこと当日か前日に、風邪だと言って休んでしまえばよかった。


「もしかして、ロンのためだって言うんじゃないでしょうね」

 ズバリ正解。


 でもなんだか正直に言えなくてコクリと首だけ縦に振った。


「やっぱりね。君たちはいつまで新婚夫婦気どりなんだ?」

 机の下でご飯を食べているロンに向かって里沙が言う。


「ううん。ロンは関係ないの。私がロンと離れるのが嫌なだけなの」

「でも、たった三日よ」


 しかしロンがうちに来て一日もロンに会えなかった日なんてなかった。

 去勢で入院した日だって一晩会えなかっただけだし、その一晩の寂しかった気持ちは今でも忘れられない。

 それなのに修学旅行は三日もある。


「だって、工程表どおりだと、六十時間もロンから離れてしまうのよ!」


 千春の言葉を聞いて里沙は思った。

 これは“新婚気どり”ではなく、まさに“新婚そのもの”なのだと。

 これをなんとかしない限り、千春には人間の彼氏なんてできないかもしれないと。

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