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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~卒部会と卒業式とサプライズ2~

 卒業式が終わったあと狩野部長や朝比名先輩たちとしばらく話していると、二岡先輩も来て少し話した。

 二岡先輩は別れ際に「鮎沢には今日きっとサプライズがあるかも」と、またいつものようにからかうように言い残して行った。


 サプライズってなんだろう? と、ぽけっと一人でいたところに、卒業生でクラリネットを担当していた児島祐樹先輩に呼び止められた。

 なんだろうと思っていると、児島先輩は「これからも、あの情熱あふれるオーボエを頑張ってください」と丁寧に私に伝えてくれたあと、急に制服の第二ボタンを千切った。


 驚いて見ている私に児島先輩は、いま目の前で千切り取ったボタンを私に渡して「鮎沢さんと、鮎沢さんのオーボエに出会えて本当に良かった。これからもがんばってください」と言って校門のほうに走っていった。


 制服の第二ボタンと言えば、女子が好きな男子におねだりしてもらうものだと思っていたのに、まさか男子のほうから渡されて驚いた。


 いったい何が起こったのかわからなくてしばらく児島先輩が走っていた方をぼーっと眺めていると、後ろから狩野部長が現れて、どうしたのかと私に聞いた。

 私は慌てて児島先輩からもらった制服の第二ボタンを右のポケットに仕舞い、何でもないと言って振り向くと狩野部長から話しかけられた。


「いろいろあったな」

「はい」


「鮎沢は本当によく頑張ったな」

「いえ、それは私たちが先輩たちにかけることです。本当に私たちを引っ張っていってくれて、ありがとうございます」

 私はそう言って、頭を下げた。


「いや、鮎沢は本当に頑張った。春日部長からバトンを渡されたときに、鮎沢がいたから県大会に進めたって春日部長が言っていた。そして今年県大会まで進めたのも、君のおかげだ。よく木管をまとめてくれたね」


 私は、自分がまとめた意識はひとつもなくて、むしろ乱した方で迷惑をかけたことを謝ると、狩野部長はそれがあったからこそ木管グループのムードメーカーだった二岡さんが立ち直ることができたのだと教えてくれた。


「二岡さんが、立ち直るきっかけ……?」

 狩野部長は詳しいことは何も教えてくれなかったけれど、私の何事にも挫けないで前向きな姿勢が二岡さんと二岡さんを守っていた人たちの心を動かしたのだと言ってポンと肩を叩いて歩き始めたと思ったらすぐに止まった。


 私は狩野部長が何か言い忘れたことでもあるのかと思って見ていると、プチンという何かの紐が切れるような音がした。

 そして少し間をおいて振り返った狩野部長は、私の手に何かを握らせると「また縁があれば、高校でいっしょに演奏しよう!」とだけ言って正門のほうに駆けて行った。


 狩野部長の後ろ姿が消えるまで見送って、持たされたものを見るために手を広げると、そこには学生服のボタンがあった。

 そういえばさっき児島先輩にももらったので、同じものなのか見比べてみた。

 やっぱり同じ……。


 そのとき不意に背後の階段上から声をかけられた。


「千春……」

 振り向くと階段の上には里沙がいた。


 慌てて児島先輩のボタンは右のポケットに仕舞い、狩野部長のボタンは左に仕舞おうと思ったが、なかなか思うように早く仕舞えなかった。


 私が何をしまっているのか気がついた里沙が、いっしょにしないところが千春らしいって笑った。


「まさか見ていたの?」

「偶然ね」


「盗み見?」

「見たのは、一瞬よ。すぐに顔を引っ込めたもん」


「でも、聞いていたでしょう?」

「だって聞こえるのは仕方ないでしょう? 慌てて聞こえないところまで戻るときに音を立ててしまうと気の毒だし」


「気の毒って、どっちに気を使っているのよ! もう、いっそのこと音を立ててくれれば、こんな厄介なもの二つももらわないですんだのに……」


 とほほな私に里沙ちゃんは、気を使わなくていいのではないかと言った。

 理由は二人とも、卒業したから。

 もし二人とも私と付き合いたいと本気で思っていたのなら、卒業式のあとではなくてそのずっと前に想いを打ち明けたはずだと言った。


 たしかにそうだと思った。

 でも、それって何?

「私、ただの度胸試しに使われたってことなの??」


「いいじゃないの。一日に二人から第二ボタンをもらえるなんて、そうそうあることじゃないんだから」と里沙はからかうように言った。


 そういえば二岡先輩が帰るときに、サプライズがあるかもって、これもからかうように言っていた。

 知っていたんだ……。


 なんとなく心が温かくなる思いで、里沙と手をつないで学校を出た。

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