~真夏のクリスマス3~
スキーで会った、兄の友だちの……。
「茂山さん。おまたせぇ~」
そうそう!茂山さんだ。スキーのときに里沙とべったりだった。
んっ?
それにしても“おまたせ”って……何??
「やっぱりロンは賢いなぁ~ちゃんと俺のことまで覚えてくれていてありがとよっ!」
ロンと茂山さんが遊んでいる間に里沙ちゃんに聞いた。
「どういうこと?」
別に怒ってはいないけど、いったい何?
里沙は照れたように笑って「ごめんね!驚かそうと思って。と言っても千春を驚かすつもりじゃなくてロンを驚かそうと思ったのよ」
「だったら、私には話してくれてもいいじゃない」
「ごめん!本当にごめん!でも千春に教えちゃうと、千春が話さなくてもロンは絶対に千春の雰囲気を察して分かっちゃうから」
言われてみると確かに……さっきもこのお店に入るためにドアノブに手を掛けて押そうと思ってためらっていたら、ロンもドアを押してくれていたし。
お互い話し合うことはできないけれど、心が通じ合っている実感は確かにある。
でも、だからって……。
「ごめんね千春ちゃん。実は俺が里沙ちゃんに黙っておくように頼んだんだよ」
茂山さんがそう言ってきた。
「でも、なんで、ですか?」
「だって、最初から俺の実家に遊びに行くなんて言ったら気が引けて行くのが面倒になるだろ」
「面倒だなんて、思いませんよちっとも……って、このお店茂山さんのお店なんですか~!!!!」
「いや、俺の店じゃなくて、親父の店なんだ」
そう言えば、さっき実家だと言っていたことを思い出してカウンターのほうを見ると目の前の茂山さんよりだいぶスリムな中年の男性がこっちを見ていて、目が合うと会釈をされたので私も慌てて頭を下げた。
「ほらほら、こんなところにお客さんを立たせてないで早くお通ししないと!」
横からかけられた声に振り向くと、背は高くないけれど頑丈そうな体つきの小母さんがいた。
私が挨拶すると小母さんはニッコリ微笑み「あなたたちが噂のカップルね。会えてうれしいわ」と言いながらロンの頭を優しく撫でてくれた。
親しみやすい感じの女性は、誰から見ても茂山さんのお母さんに違いなかった。
窓際のテラス席に通された。
テラスの下には芝生の敷き詰められたドッグランになっていて、そこで飼い主がゆったりとコーヒーを飲みながらくつろいでいる間、犬は自由きままに過ごしたりもできるようになっていて、ちょうど今は小学校4・5年くらいの女の子がシェルティーと遊んでいた。
メニューは人間用とペット用があり、里沙と私はケーキセットをたのんで、ロンは何がいいかメニューを見せながら様子を確認すると。
ペット用ケーキセットの写真を見せたときに、私と目を合わせたので、それにすることにした。
すぐに茂山さんがオーダーを取りに来た。
里沙が「私と千春はケーキセットで」と言いかけて、「三人ともケーキセットです」と言い直して私のほうに振り向いて「これでいいよね!」と笑った。
私は里沙の気遣いがうれしくて涙が出そうになるのを堪えながら満面の笑みで「うん。ありがとう!」と答えた。
里沙は茂山さんにオーダーを伝えるときに、私たちの二人の分とロンのペット用を分けて言いかけた。
それはごく当たり前のことだと思う。
でも、もし私(千春)だったら普通に「三人前」って言うんだろうと気がついてくれて言い直してくれた。
確かに他人から見れば、人間と犬だけど、私から見るとロンは家族同然じゃなくて「家族」なのだ。
そのことを気遣ってくれた里沙の気持ちがうれしかった。
私たち三人が少しだけおしゃべりしながらドッグランで遊んでいる子供たちを見ている間に、茂山さんが三人分のケーキセットを持ってきてくれた。
なかでもロンの分は台が付いていて食べやすいように工夫されていた。
茂山さんのお母さんに頼んで食べる前に茂山さんを含めた4人で写真を撮ってもらった。
美樹さんに送るための写真だけど、茂山さんのお店に私とロンが行ったなんて、きっとびっくりするに違いなくって今からわくわくする。




