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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~真夏のクリスマス1~

 さがみ風っ子文化祭も無事終わり、そのあとの定期考査も終わった。

 あとは終業式を終えれば、お楽しみのクリスマス。


 学校から帰ってくると、ロンはいつも玄関でお出迎えをしてくれる。

 そして私の傍から離れずについてくる。

 最近特に付いてくる頻度が上がり、付きまとうという表現が似合っているくらい。


 ロンは私のストーカー?

 いいえ、実はロンが付きまとうのには訳があって、その原因を作っているのは私。


 学校から帰るとすぐに宿題をすると、お母さんが晩ご飯の支度をする前に台所を使って“ある料理”の練習をしている。

 ネットで調べた、たくさんのレシピの中から色々と作っているのはロンのためのケーキ。


 ケーキと言っても犬用のケーキは、私たちがいつも食べているケーキとは少し違う。

 もちろんスポンジケーキもあるけれど、ジャガイモやサツマイモがベースだったり、カボチャやご飯、ニンジンがベースだったりと様々なものがある。


 そしてその全部に共通しているのは、塩や砂糖を使わないこと。


 特に砂糖を食べさせると死んでしまうということはないけれど、人間が普通に摂取する塩の量は犬にとってかなりの量になり高血圧や心臓病の原因になる。


 もちろん塩分は必要だけど取り過ぎないように注意が必要。

 そして砂糖も同じ。


 ベースに使うサツマイモやカボチャは元々甘い食材で、人間が甘いと感じる野菜や果物は犬にとってスウィーツ同然!


 そこに砂糖を加えると糖分の取り過ぎになって肥満や脂肪肝の原因になり人間でいう生活習慣病になってしまう。

 余分に食べさせてなくて散歩もしっかりしているのに太っている犬は、もしかしたら糖分の与えすぎを疑ったほうがいいと言われるくらい犬にとって与えないほうがいいのが、この糖分と塩分なのだ。


 その日私が作ったのは「おからヨーグルトケーキ」


 おからに、ヨーグルトを混ぜ合わせたものに、ベーキングパウダーを加えた薄力粉に卵を混ぜ合わせてオーブンで焼いて出来上がり。

 本番はこれにきれいなデコレーションをするのだけれど、今は練習なので冷ましてロンの晩ご飯として与える。


 毎日、“美人”が手作りしてくれる“おいしい手料理”


 ロンが付きまとうのも頷けるでしょ!



 こうして作ったケーキや料理は撮影している。

 ついでに食べているロンのことも。


 撮った写真はレシピ表に貼りつけたりして管理しているけれど、一番大きな理由は美樹さんに見てもらうこと。


 実はニュージーランドに旅立った美樹さんとはフェイスブックやメールなどでコミュニケーションをとっている。


 別れるときは辛くて悲しかったけれど、こうやってパソコンや携帯でいつでもやり取りができると分かると地球はなんて狭くなったのだろうと、お別れのときにあんなに泣いたのが恥ずかしいくらい。


 特にニュージーランドと日本の時差は、通常で日本が三時間遅れで、サマータイムには日本が四時間遅れとなる。

 北半球と南半球の違いで、季節は反転しているから今向こうはサマータイム。

 日本での時間が今は午後四時だから、ニュージーランドでは午後八時で、それほど時差を気にする必要もないのかも。


 私たちが、そのように通信の世界で距離感をさほど意識しなくなったのに、ロンはそういう世界に入り込めない。

 携帯に映った美樹さんの顔を見せても声を聞かせても、実際の美樹さんに会えたような反応はなくて、どちらかと言うと親しみよりも迷惑そう。


 きっとロンには目の前で生きているもの。

 つまり実物以外は本人として認識しないのかもしれない。


 美樹さんが目の前で動き

 美樹さんの生の声がして

 美樹さんの匂いがして

 美樹さんの心臓の鼓動が聞こえて

 そして、美樹さんの思いが伝わる


 きっとそれ以外、たとえ美樹さんの声がしても、体が動いても、ロンには全く興味のない、美樹さんとは別のものとしか思えないのだろう。


 ひょっとしたら、私たちだって勝手にそれが美樹さんだと信じているだけなのかもしれない。

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