~ガブリエルのオーボエ2~
さがみ風っ子文化祭当日。
いつものように朝練をして、それからバスとトラックに音楽機材を乗せて市民会館に向かった。
副部長として初の演奏会。
去年のようにアンコールをもらえたらいいなと思っていた。
幕が上がって私たちの番になった。
一曲目に、ハチャトゥリアンの組曲「ガイーヌ」剣の舞。
もともとパーカッションと金管が見せ場の曲ではあるけれど、それにしてもすごい迫力のある演奏でありながら楽しい雰囲気も忘れられていなくて素晴らしくて会場の雰囲気を一気に私たちの流れに引き込んでいた。
二曲目は、アメリカン・グラフィティXXII「遥かなる西部によせて」
この曲はアメリカの古い西部劇映画のテーマソングを集めたもので、私たちのおじいさんやおばあさんはもちろん、私たちだって何となく聞いたことがある曲が入っているし、ノリもいい。
この曲でもパーカッションが馬のひずめの音を再現してみせ、また甲本くんのドラムのロールがきれいなうえに重低音のチューバから高音のトランペットまでの金管も躍動感があり、特に伊藤くんや宮崎くんたちのトランペットだけでなく江角くんのトロンボーンまでまるで自分たちだけでなく誰かのために声を合わせて応援しているようにさえ聞こえた。
会場の反応もいいかんじで、これはひょっとすると二年連続してアンコールがもらえるかもって期待してしまった。
演奏が終わるとすごい拍手を贈られた。
幕が閉じても、拍手はなかなか鳴りやまなかった。
既にパーカッションをはじめ、みんなは片づけをはじめていた。
「これ、ワンチャンあるかも!」
「だよね!」
部員たちの期待を込めた話し声が聞こえる中、ついに鳴りやまなかった拍手は一定のリズムを奏でるようになり、そしてついにアンコールの大合唱が巻き起こった。
「先生!?」
私が持田先生を振り返ると、持田先生はニッコリ笑って「行きなさい」と言ってくれた。
まず私が一人、閉まったままの幕の前を歩きながらステージの中央へと向かう。
一定のリズムをとっていた拍手がリズムを止めて轟音のような拍手に代わり、私がオーボエのリードを口によせると波が引くように静かになり、私は思いっきり息を吸い込んでからリードに息を吹きこんだ。
私の次はクラリネットの美緒が演奏して、美緒の次はフルートの桃子が、桃子の次はサックスの早苗が演奏して行った。
演奏をする順番に幕から出てきて、演奏が終わるとまた幕の中に戻って行く。
その間私の楽譜はずっと休符だったけれど、私は目立たないほどのハーモニーになるように小さく、そしてほんの少しだけ遅れてオーボエを演奏してみた。
すると思った通り曲の情感に厚みが増した。
みんなの演奏はどれも素晴らしかったけれど、その中でも身震いしてしまうほどの演奏を披露してくれたのは、なんと江角くんではなくトランペットの伊藤くんだ。
その演奏はなにかはるか遠く、届かない思いを届けようとするように、とても切ない情感があふれていて聴いていて胸が熱くなった。
“伊藤くんも、やればちゃんとできるじゃん!”
そしてバトンを受け継いだ私は、その思いを受け取った少女が空のかなたまで、さらに切ない思いを届けるように強く穏やかに毅然として優しさを込めた感情をリードに吹きこんで演奏をした。
演奏が終わるとたった一人ステージに残っている私に盛大な拍手が送られ、私は照れくさかったのとみんなに申しわけがないと思い少し恥ずかしかった。
だって、私だけのステージではなかったし、この演奏のあいだ私だけが片づけに参加していなかったのだから……。




