~花火大会~
花火会場に向かっていると、伊藤くんの列の中に江角くんも加わっていた。
会場につくと、さっそく屋台めぐりをしていると色んな人に出会った。
たとえば三年の二岡先輩と大原先輩は、吹奏楽のときと同じように仲がよかった。
同じく三年の江成真奈先輩と一年の美奈の、美人姉妹ではちょっとどう呼べばいいのか戸惑った。
なかでもメッチャ焦ったのは、今年卒業して高校生になった春日元部長と、三年生の角崎しのぶ先輩とのツーショット!
普段は超がつくほど地味なタイプのマイペースな角崎先輩だけど、自身が演奏するフルートの調子がいい時には自分の音に酔いしれるロマンチスト的なタイプだからユーフォニアム担当の春日元部長がその様子を見て恋をしてアプローチしたのか?
あるいは春日部長の男っぽさに、角崎先輩が恋をしてアプローチしたのか?
みんなでどっちだろうと盛り上がっていると、向こうも気がついて私たちのところに来て話をしてくれた。
もちろん話は二人の恋のなれそめの話ではなく、今年の吹奏楽部の活躍の話。
春日部長は全員参加での銀賞が、同じ色でも去年のものより価値があると。
特に私たち二年生の活躍が目覚ましく、これが吹奏楽部全体のレベルを上げたのだと私たちを褒めてくれた。
高校生になった春日部長がこれほど褒めてくれるのは、二人の仲がいい証拠。
きっと角崎先輩と色々吹奏楽部の話も聞いているのだろう。
そのあとは今川さんと宮崎くんのカップルと会った。
私や美緒にとっては小学校の頃から見慣れた光景だったけど、里沙たちにとっては珍しい光景だったらしく「あの子たち、いつから付き合っているの?」と聞かれて「生まれたときから」だと答えるとみんなが驚いていた。
伊藤くんと甲本くん、それに江角くんの三人組にも出くわしたけど、なんとなくこの三人の和服ショットは先の春日部長と角崎先輩や今川さんと宮崎くんのカップルを見たあとでは、青春を謳歌する若者の花火大会の一コマとは程遠くて、どちらかと言うと昭和初期を描いた任侠ものの映画の一コマにしか見えなくておかしかった。
“男の子って、中二くらいになると急にオジサンっぽくなるのが、おかしかった”
それからみんなで水風船釣りをしたり、射的をして遊んだりして、あとは縁日で好きなものを買って食べながら花火を見て遊んだ。
最後の大玉は、とても素敵で素晴らしかった。
花火が終わって私たちは吹奏楽部の二年生で集まって帰った。
最初に江角くんと早苗と別れて、次に里沙と桃子と別れ、甲本くんと美緒と別れた。
「じゃあね!」
最後に伊藤くんと別れて家に戻ろうとしたとき、伊藤くんは自分の家のある通りのほうには向かわずに、私の家まで送ってくれると言ってくれた。
私の家だってもう数百メートルだから大丈夫だと言うと、伊藤くんはたった数十メートル離れただけで事件や事故に遭った人もいるからと家まで送ると言ってくれたので、私は「ありがとう」とお礼を言って素直に従い家の前で伊藤くんと別れた。
問題はここから。
おいてけぼりにされたロンが、怒っていたらどうしよう……。
ドキドキしながら、おそるおそるドアを開けると、バタバタと忙しそうに大きな尻尾を振るロンが抱き着いてきた。
やはりロンは可愛い!
おいてけぼりにされたことよりも、私が無事に帰って来たことのほうを喜んでくれている。
私もロンに会えてうれしくて、無事に送り届けてくれた伊藤くんに、心の中でもう一度ありがとうを言った。
でもやはりロンは連れて行ってもらえなかったことを少し気にしているのだと思った。
何故なら私の浴衣についた匂いを、懸命に嗅ぎあさっていたから。




