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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~新入部員1(今川さんと宮崎くん)~

 新入生を迎えるため、放課後の音楽室にはこの日のために部員全員が協力してアイロンフェルトで作った楽器のマスコットを見学の記念品に配った。


「千春ちゃん!」

 ちゃん付けて呼ばれるのは小学生以来だった。


 呼ばれたほうに顔を向けると、同じ小学校で一年下だった奈美ちゃんがいた。

「久しぶり! 見学?」

「はい!」


 奈美ちゃんは元気でそう答えたあと、入部前提での見学だと言ってくれた。

 そして奈美ちゃんのとなりには、いつも通り光一くんもいた。


 奈美ちゃんは、今川奈美子。

 同じ小学校の鼓笛隊で、ホルンを演奏していた。

 光一くんは、宮崎光一。

 光一くんも同じ小学校の鼓笛隊で、彼はトランペットを演奏していた。

 そして二人は幼なじみ。

 生まれたときから、家が隣で親同士もとても仲がよく、二人はまるで双子の姉弟(きょうだい)のように育った。

 まるで恋愛小説の主人公みたいなカップルで、正直うらやましい。


「よう光一! 入るのか?」

 光一くんの自称師匠を名乗る伊藤くんがやってきて偉そうに言い、光一くんは元気よく「お世話になります!」と言って丁寧に頭を下げた。


「中学校の吹奏楽部というのは、小学校の鼓笛隊とは違って甘くない、俺がまた一から教えてやるから最初は辛いだろうけど、いっしょにがんばろう!」

 伊藤くんが言うと光一くんは真面目な顔をして「よろしくお願いします!」と、またペコリと頭を下げた。


 それを見ていた私と奈美ちゃんは、顔を見合わせてニッコリと笑った。


 だって、たしかに小学校四年のときに鼓笛隊に入ってきた光一くんに、親身になってトランペットの演奏の仕方を教えていたのは伊藤くんだった。

 けれども私たちが六年生のときには、誰が聴いても伊藤くんより光一くんのほうが上手くなっていた。


 ふたりに記念品をあげると「これ千春ちゃんたちがつくってくれたんですか?」と感動してくれた。


 伊藤くんがふたりを連れて音楽室の中に入るのと入れ替わりに美緒がやってきた。


「信一って、演奏の実力はないけれど、ほんと面倒見だけは一流だよね」と言ったので、私は「それも実力のうちなんじゃない?」と伊藤くんのサポートをしてあげた。


 美緒も私の言葉に「そうよねぇ……」と言って、ため息をついた。


 伊藤くんは相手の気持ちや場の雰囲気を読むのが上手い。

 そして悪い雰囲気になりかけたとき、その波が大きくなる前にみんなを和ませる能力も惜しみなく発揮してくれる。

 ああ見えても、非常に感性が鋭い。

 けれどもその感性は、伊藤くん自身も悩ましてしまう。

 鼓笛隊のとき周囲からの声援を多く受けたときや、運動会のマーチングのときに私が目の前で激しく回転してスカートをふわりとさせてブルマをチラ見させたときなど、のぼせてしまい吹きこむ息が乱れて音がずれてしまう。


 タイプは違うけど、甲本くんや江角くんのように「我が道を行く」性格だったら、伊藤くんももっと上手になっていただろう。


 そう思いながら振り向くと、もう早速ほかの部員たちに二人を紹介して丁寧に頭を下げながらあいさつ回りをしている伊藤くんがいた。


「いいよね、伊藤くん」

 私がそうつぶやくと、となりにいた美緒も「うん」と、うなずいた。



   *

 一週間後、見学期間を終えて奈美ちゃんと光一くんは正式な部員となって入って来た。

 部の慣例に従い年下には苗字呼びというものがあり、この日から奈美ちゃんは今川さん、光一くんは宮崎くんと呼ぶようになった。

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