~始業式と、入学式の演奏2~
始業式のあと生徒全員で入学式用の会場にセッティングして、教室の掃除とホームルームが終わる。
今日は入学式で運動場を来賓とか父兄用の駐車場に使用するので、部活動はなくほとんどの生徒は帰宅した。
残っているのは、入学式に出席する生徒会の数人と、私たち吹奏楽部の部員だけ。
みんなで手分けして、入学式の演奏をするために楽器を体育館に運んだ。
私たちが演奏するのは二階なので、階段を使って機材を上げる都合でティンパニーの代わりにドラムセットを上げた。
卒業式のときもそうだったけれど、ティンパニーは一番大きいもので直径が八十センチ、重量は四十キロを超えるので、とても階段などでは上げることができない。
ちなみに吹奏楽部で一番重い楽器はマリンバで、その重量は百キロにもなる。
さっそく入学式に演奏する「威風堂々」と、今年の全国吹奏楽コンクールの課題曲「エール・マーチ」を続けて演奏した。
演奏していて、管楽器やパーカッションに比べて木管、特にクラリネットの音が弱いことに気がついた。
美緒ならもっと音が出せるはずだと思って美緒の音を探すが、彼女はなるべく自分が目立ってしまわないように遠慮がちに周りに合わせて演奏をしていた。
一応サックスも同じメロディーを演奏していて、この場ではそう目立たないものの、本番ではクラリネットとサックスはステージの左右に分かれてしまうから、正面で聴いている審査員や観客からは丸分かりになってしまう。
春休み中から持田先生は忙しくてほとんど部活に顔を出していなかったし、いまも先生は入学式や新入生の対応で忙しい。
相模原支部大会で終わった場合夏休みの練習は最初の十日間で終わっていたものが、県大会に駒を進めることができたことで二週間に増え、県大会敗退の悔しさを糧にして結局夏休み中自主練習をさせてもらった。
その後の体育祭や文化祭でも、放課後の部活動の他に朝練や昼練を行う者も多くいた。
特に家で練習のできにくい管楽器とパーカッションのメンバーは自主練習に前向きに取り組み、家でもなんとか練習のできる木管……特にクラリネットの二年生はほとんど自主練習に来なかったことが影響して、他の部員のレベルアップに取り残されているのは確実だった。
案の定、演奏が終わったあとで江角くんがトロンボーンでわざと間の抜けた音を出して抗議の意思を示したのでハラハラしてしまったが、なにごともなく新入生を出迎える演奏は行われて安心した。
式典も終わり、新入生たちが退場するときには有名なポップスの曲を演奏して、これで今日の私たちの役目も終わった。
あとは音楽室から持ってきた機材を、元通りに仕舞うだけ。
今日は結構な重労働の日だ。
やっと機材の片づけも終わり、家路につこうとしたとき、新たな苦行が待っていることに気付いた。
それは新しい学年で習う全教科の教科書と副読本が詰められたリュックサックを担いで帰らなければならないこと。
「二宮金次郎かよ!」
一番にリュックを担いだ伊藤くんが言うと、部員みんなが笑った。
伊藤くんの、こういった才能はうらやましい。
帰り道で美緒が「一度に全部の教科書をくれなくても、どうせ授業は受けるに決まっているのだから、その最初の授業のときにその教科の教科書と副読本を配ってくれたらいいのにね」と言った。
これには伊藤くんも、無口な甲本くんも大絶賛していたけれど、それじゃあ予習はどうするの?
私はいつも新しい教科書を読むのが好き。
特に大好きな音楽と国語の教科書は、もらったその日か次の日には読み終えてしまう。
逆に数学と科学は、パラパラとめくるだけ。
食べ物の好き嫌いはないけれど、勉強の好き嫌いはなくしたい……。




