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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~卒部会と卒業式1~

 冬休みが終わり、また学校が始まった。

 ロンも私も白い息を吐きながら走る朝の散歩、冬の早朝は空気が澄んでいるので気持ちいい。

 これで富士山でも見えれば最高なのだけど、相模原市の大部分では西にある大山と丹沢山系が近すぎて見えない。


 ロンの散歩を終えて散歩の後のケアをして、朝食を食べてから朝練をするために学校に向かう。

 冬になって朝の苦手な美緒と甲本くんは滅多に朝いちで来なくなり、私はいつも伊藤くんと二人で学校に向かう。


 正門前では桃子とパーカッションの陽子先輩に江角くんといういつものメンバーが開門前に来ていた。

 新年初日の朝練では、特に決まったお題はないのでアニメ映画の挿入歌を女子三人で演奏した。


「ハープの音色、朝にあうよね」

「千春、今日は抑え気味だね」

 曲が終わったときに狩野部長と水沢綾音副部長が入ってきて言った。


 私にかけられた「抑え気味」という言葉は、さがみっ子文化祭のときの演奏がキレキレだったことが後で問題になったことに対するもの。

 ほかの部員たちから苦情は来なくて、よかったとほめてもらったのだけど、第十三曲「四羽の白鳥の踊り」のオープニングで私と一緒に演奏した大原さんたち二年生のクラリネットから後で苦情を言われたことが起因している。


 最初は個人的に軽く言われただけだったのに、それを耳にした江角くんが「ちゃんと連取していないから、そうなったのに文句を言う前に自分を責めろ」と言ったことで問題が大きくなり先生を呼ぶまでの混乱になった。


 呼ばれてやってきた持田先生は曲の理解度の差が出ただけだと言ってくれたが、白鳥の湖の物語では「四羽の美しい白鳥の中でも特に美しい一羽の白鳥にジークフリート王子は目を奪われた」ことになっているので、やはり私はやりすぎたのだと思って反省して三人やほかの人もあやまった。


 さがみっ子文化祭が終わった日の帰り道で甲本くんをほめたように、私も周囲の音にもっと敏感になり合わせなければならないと思い、あの帰り道で甲本くんが言った「二年生は、いまごろ悔しくて泣いているかも」という言葉どおりの結果になってしまったことを後悔した。


 夕方の部活では三年生の卒業式で演奏する曲についてのミーティングが行われた。

 今年も例年通り卒業生入場時にはエルガーの「威風堂々」をリピートで、退場時には「蛍の光」と「仰げば尊し」を交互に演奏している。

 今年の卒業式も、これでいいかという話しだった。


 私は毎年同じものを演奏するよりも卒業生と相談してリクエストがあれば、それに応える方法がいいのかなと思ったが、夏休みの早朝練習の件や文化祭で目立ちすぎた件もあって言い出せないでいた。


「卒業するのは三年生なので、こういうことを議論するのであれば、まず当事者である三年生の意見を聞くことが先ではないのですか?」

 私が言い出せないでいたことを江角くんが言った。


「うぜえ」と木管グループの二年生から嫌なささやきが漏れ、狩野部長はそれをかき消すように大きな声で、まず三年生に聞く前に我々在校生ができるかできないか、やりたいかやりたくないかの意見をまとめておかないと意味がないかと思ったので先にここに集まった我々の意見をまとめたい。

 だから意見があるものは、自由に言ってほしいと言った。


 それを聞いた伊藤くんがさっそうと手を上げ、卒業生のキャッチコピーを作って演奏の合間にそれを叫ぶのはどうでしょうと言うと、狩野部長は例えばどういうものなのか聞き返した。


「ん-……例えば春日部長だと、かみなり様も驚く低音の達人、ユーフォニアムの春日博之!」

 伊藤くんの言葉にみんながどっと笑い、険悪になりかけた空気が一気に和んだ。


 大原さんたちも「なにそれAKBグループじゃん」と言って笑っていた。

 “さすが、伊藤くん!”


 狩野部長も面白いと言い、それはぜひ採用したいですとは言ったものの、卒業式は学校全体の行事だから、それは卒部会のときに使用したいので先輩たちや自分を含めて考えておくのはどうでしょうと皆に問いかけた。


 やはりみんなが面白いということは決まるのも早くて、全員が賛成して決まった。

 ただし悪口やからかうこと、あと容姿については、いじらないようにと注意も添えた。


 結局伊藤くんの機転の利いた質問で、場の雰囲気は格段に良くなり、私たちは先輩の意見を聞いて練習をがんばることで意見が一致した。



 後日、三年生の意見を聞くと違う曲に挑戦することは部員の実力も上がるので、先生たちの了承を得られるなら曲は我々在校生に任せるということに決まり、私たちは何の曲を届けるのか正式に考えることになった。


 

 そして三月の卒業式には、入場時の「威風堂々」「マーチ・シャイニング・ロード」と、退場時の「蛍の光」「仰げば尊し」「旅立ちの日に」「手紙」をきちんと演奏して三年生の先輩たちを見送った。

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