~ロンとオーボエと私1~
みなさま、おはようございます(^▽^)/
『~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)』開始しました!
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お誕生日の食卓を終えると、いよいよ待望のオーボエの演奏ができると思って心がわくわくしていた。
ふだん私が使っているアルトリコーダーよりも圧倒的にきれい!
さっそく構え方も教えてもらって吹こうと思ったときに、吹き口がないことに気がついた。
「お母さん、これ吹き口に穴が開いているだけだけど、どうやって吹くの?」
フルートみたいに穴に向かって横から息を吹きかけるのかなと思って吹いてみたけれど、これでは肘が窮屈になって演奏できるような気がしないし、息を吹きこんだところでたいして音も出ない。
お母さんは台所から水を入れたお茶碗を持ってきて、それに薄い板のようなものを赤い糸で巻き付けられたコルク管のようなものの板の部分を浸けてもってきてくれた。
これはリードといって、これを楽器の穴に差し込んで使うものらしい。
そして薄い板をくわえて音を出すしくみ。
「これくらいでいいかしら?」
お母さんはそう言って、リードを水から取り出した。
水に浸けられていたリードは二つあって、お母さんがその一本をまるで歯の抜けたおばあさんのような口をして咥えて息を吹きこむと、何回かパスっと息が抜けたような音がした後でプーッと草笛のような音が鳴った。
そしてもう一本を渡してくれて、咥え方を教えてくれた。
私もおばあさんのような口で咥えた。
「草笛を吹くような感じで、あまり強く咥えずにして口の中心から息を吹きこんでみなさい」って言われ、私はおそるおそるそうなるようにおなかに力を入れて息を吹きこんだ。
でもお母さんのように音が出ないばかりか、息が抜けてくれなくて苦しいばかり。
最初はみんな「がんばれ!」とか言って見てくれていたけど、あまりにも音が出ない私に飽きてしまい、そのうちにお母さんは台所に行き洗いものをはじめ、お父さんはお風呂に行き、兄も勉強をしに2階に上がった。
誰も相手にしてくれなくなったので私はリードを咥えたままロンのいる玄関に行った。
私が近づく気配を感じたロンは、すぐに下駄箱の下から出てきて、とてもうれしそうな顔をしてくれた。
ロンは玄関に腰掛けて、いつまでもスース―としか音を出せない私をまっすぐに見てくれている。
その表情は、まるで「いつすてきな音が出るんだろう?」と楽しみにしているようにキラキラと輝いていて、私はそんなロンの表情にかたくなった心がほどけてくるような気がした。
そして、ついにそのときはおとずれた。
「プー」
鳴った!
リード口から放してロンにそう言うと、ロンも喜んだようにワンと言って喜ぶように少し前足を浮かしてスッテプしてみせた。
すぐにもう一度リードを咥えなおして息を吹きこむと、また「プー」と音が鳴った。
「プ、プ、プー」とリズムをとってみると音色はバラバラだったけど、それでもロンはキラキラと目を輝かせて、まるで「もっと吹いて!」と言っているみたいに見えた。
なんどもロンに見てもらっているうちに、しだいに音色も安定して出すことができるようになり、家族みんなに音を聞いてもらうとほめてくれた。
でも、私は「ロンといっしょに練習したら、吹けるようになった」と言ったのに、誰もロンのことはほめてくれなかった。
しゃくにさわったので、そのあと私はロンのところにいき「ありがとう」を言ってなんどもロンの頭をなでてあげた。




