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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~秋子おねちゃんのオーボエ~

みなさま、おはようございます(^▽^)/

『~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)』開始しました!

ブクマ&高評価&拡散で応援いただければ嬉しいです。

毎朝6時に投稿しますの、宜しくお願いいたします(⋈◍>◡<◍)。✧♡

 犬の名前が決まったあとは、いよいよ私のお誕生会!

 私がロンと遊んでいるほんのすこしの間に、お料理などはリビングに運ばれていた。


 ハンバーグにナポリタンスパゲッティ、それにオムライスの横にはフライドポテトとニンジンのグラッセやブロッコリーが、まるでお子さまランチのようにワンプレートでのっていた。


 食事の前にお誕生日プレゼントをもらって驚いた。

 だって、もうロンという最高のプレゼントをもらっていたから、さらにそこからもらえるなんて思っていなかったから。


 お父さんからは、新しい筆箱。

 お母さんからは、新しいシュシュ。

 兄からは、新しい帽子をもらった。


 そしてもうひとつ、お母さんが袋から取り出したものは、ロンが家に来る前にダイニングテーブルの上に置いてあった黒いケース。


 お母さんはそのケースを私の手の上にゆっくりとやさしく乗せて、私に言った。


「もし、いやだったら、我慢しないで言ってちょうだい」と。


 手の上に運ばれたものは、思った以上にずっしりとしたもので、今までもらったものとは全くちがう重厚さがあった。

 それに、やはり新品ではないけれど、そこには新品が持ち合わせていない歴史を感じさせるものを感じた。


「開けてごらんなさい」

 お母さんがいつもよりやさしく、そしておごそかに私に言った。


 私はお母さんの声に、まるで魔法にかけられて止まったままの時のながれに抗うように閉じられたロックを外し、ゆっくりとふたを開く。


 ふたの隙間から光が逆流してもれてくる。

 ふたを開くと落ち着いた黒いボディーに銀色に輝くたくさんのボタンや装飾で着飾った楽器がキラキラと輝いていた。

 その楽器は三つに分解され、クラッシックな感じのする濃い緑色の上等なシートの上にたいせつに寝かされていた。

 シートの上には楽器の他に、赤い綺麗なヘアピンもあった。


 中学から高校まで吹奏楽部にいたお母さんに組み立て方を教わり、できあがったオーボエの姿を見て感動した。


「こ・れ・は……」

 うれしくて、こわくて、声がふるえた。

 小学6年生になったばかりの私には、あきらかにふさわしくない贅沢な楽器だった。


「これはオーボエという楽器で、秋子おねえちゃんが使っていたものなの。千春は秋子ちゃんのこと覚えている?」


「うん」

 秋子お姉ちゃんというのは、お母さんのお姉さんの娘にあたり兄より五つ歳上、私からだと十三歳年上のとてもきれいなお姉さん。


 幼稚園に入る前の私に小さな横笛を教えてくれたのも秋子お姉さんで、その時に二人で撮ってもらったセーラー服姿の秋子お姉ちゃんは今でも私の理想のヒロイン。

 その後、音楽大学に通い出しても何度か家に遊びに来てくれてリコーダーも教えてもらった。


 たしか音楽大学を卒業したあと秋子お姉ちゃんはアメリカの楽団に入って、最後に会ったのは二年前日本で結婚式を挙げたのが最後。

 結婚式のとき、私は秋子お姉ちゃんと旦那さんになったアメリカの人と二人に花束をあげる係をつとめたのだから忘れるはずはない。


「お古で悪いけど、って、千春ちゃんに演奏してもらいたいと送ってくれたの。もちろん気に入らなければ断ってもかまわないそうよ。どうする?」


 気に入らないわけがない!

 高級すぎてビビっているだけ。

 それにお母さんは「お古」と言ったけど、新品同様のようにしか見えなかった。


 きっと私が気に入らないと言えば、よそにまわされる。

 秋子お姉ちゃんは優しくて大好きだったから、たとえこれが古くて壊れていたとしても私は使いたい。


「ほんとうに、私がもらっていいの?」

「いいよ」


 じわじわと、うれしさが溢れてきて、それと同時に何故か涙も溢れてきて止まらなかった。

 おんおんと私が泣きだすと、なぜだかお母さんも泣き出してしまい、お母さんはお父さんに介抱されていた。


「ごめんね、せっかくのお誕生日会をしめっぽくさせてしまって」


 お母さんが私にあやまったので、私は「いいよ。泣き出したのは私のほうが先だったから、お母さんはなんにも悪くない」と答えると「千春は優しいね」って言って笑ってくれた。


 直接秋子お姉ちゃんにお礼を言えればいいけど、日本と海外だと連絡が大変そうだから、おばさんにお礼を伝えてもらうようにお母さんにお願いした。


 秋子お姉ちゃんのおばさんに写真を送るために、もらったオーボエといっしょの私の写真を撮ってからオーボエをケースに戻したけれど、またすぐに開けて早く演奏してみたいと胸をワクワクさせていた。


 テーブルの中央にあるお母さんがつくってくれたイチゴのホールケーキに12本の色とりどりのローソクが立っていて、そんな私の喜びをオレンジ色のかわいい炎が私の心をはやしたてるように踊っていた。


 部屋の灯りが落とされると同時に、兄がシンセサイザーで演奏してくれるHappy Birthday to Youのメロディーに合わせてみんなが私の誕生日を歌ってくれ、最後に私がお誕生日の願い事をした。


 願いごとは2つ。

 一つは今日家族になったロンと仲よくいつまでも暮らすこと。

 もう一つは、秋子お姉ちゃんからもらったオーボエが上手く演奏できるようになること。


 ふうーっと目をつむって息を吹きかけ、そして吹き終わったあとで目を開けると、さっきまではやし立てるようにゆらめいていた炎たちはみんな魔法をかけられたように消えて、ろうそくたちの白い煙だけがゆらゆらとさまようように上へ登っていて私は不思議な感覚でその煙をみつめていた。

   千春がもらった秋子お姉ちゃんのオーボエ

挿絵(By みてみん)

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