~新しい友達、里沙~
中学生になって新しい友達ができて、今日はその友達が遊びに来る日。
名前は立木里沙。
違う小学校の子だけど気が合って学校でロンの話をしたら会いたいと言ってくれた。
もちろんクラスは私といっしょ。
里沙には私を押し倒すことや去勢に至ったリフティングの件はロンの名誉のためにはなしてはいない。
あらかじめロンに伝えなければならないこともあり、私は部屋を片付けると言って先に家に帰った。
「ロン、よく聞いて。これはとても大切なことなのよ」
わたしの真剣なまなざしが通じたのか、ロンもまじめな顔をした。
「このあとすぐに、お姉ちゃん(私)のような可愛いお友達が来るけれど、悪さしちゃだめだよ。おとなしく賢そうに振る舞うのよ。それができたら何でも言うこと聞いてあげるから」ってロンに言うと、言葉など分かるはずもないのにロンは、おとなしく私の話を聞いてくれた。
すこしたって玄関のチャイムが鳴り、ロンに小さな声で「飛び掛かっちゃだめだよ!」と声をかけて扉を開けた。
ロンはキチンとお座りをして尻尾を振っている。
『いいぞ!ロン!』心の中でロンをほめた。
いったん家に帰って着替えてきた里沙ちゃんは、この4月下旬の暖かさを楽しむようなショートパンツにTシャツ姿。
小学校のときからソフトボールでピッチャーをしている里沙の胸は、すでに第二次成長期を謳歌するように自信に満ちていたし、ショートパンツからは弾けんばかりの生足がむき出しになっていた。
ロンの大好きな生足。
貧相な私の生足にでさえ飛びついてリフティングしてしまうロンが、いま目の前にあるおいしそうなこの生足を前に、はたして我慢できるものなのか不安でしかたない。
『うわっ!駄目だ!!やばい!!!』
ロンが飛び掛かる前に二階へ連れて行こうとしたけど、里沙はロンが気に入って「わあ!ふわふわ!」と逆にロンの首に抱きついてしまった。
『ロン!我慢して!!あとでご褒美あげるから!!!』
ロンは私の気持ちが分かるのか、それともただの偶然なのか、じっと私のほうを向いて我慢しているように見えた。
ロンが私のほうばかり気にしていることに気が付いた里沙は、それが気に入らないのか、ついにロンの両頬を手で押さえて正面から向き合うかたちになった。
これだと100パーセント前足を肩にかけて押し倒す。
もうほとんどあきらめにも似た心境で、転ばされた里沙の上に乗ったロンをどうやって引き離すか考えるしかなかった。
そして次の瞬間……。
「キャッ!」
里沙の小さな悲鳴に一瞬目をつむってしまった私は、状況を確認するためにおそるおそる開いて見えたその光景に驚いた。
ロンは里沙の頬をペロッとひと舐めしただけで、あとはおとなしく座ったままでいた。
里沙も挨拶代わりに舐めてもらって満足したらしく、ロンの頭をなでると立ち上がった。
それから里沙と私は二階に上がり、おしゃべりしていた。
すぐあとから小さくチャカチャカとロンが遠慮がちに階段を上がってくる音が聞こえた。
里沙は話に夢中になっていて気がつかない。
ドアを前足で擦って部屋に入るおねだりをするのかな……と思っていたけど、ドアを擦る音は聞こえなくて、どうやら部屋の前でおとなしくしているみたい。
二時間くらい里沙とおしゃべりをしていて、帰るときにドアを開けたらロンは部屋の前にはいなくて、階段を下りると玄関できちんとお座りをしていた。
「わー賢い!」
里沙がロンを褒めて抱きついたが、ロンは飛びかかるわけでもなく、かといって嫌な顔をするわけでもなく、本当に賢い犬を頑張っているようだった。
里沙が帰るとき、私は玄関に置いているコロコロで里沙の体についたロンの毛をとってあげた。
背中からかけて、胸もかけた。
私の場合は背中も胸も同じようにコロコロとスムーズにかけられるのに、里沙の胸は大きく盛り上がっていて私のようにスムーズには転がらなかった。
これが第二次成長期の威力!
次は私の番だと思った。
里沙が帰ってから、ロンに「お利口さんだったね!」と言って頭をなでた。
ロンは「エヘン!」と言わんばかりに胸を張っていた。
台所にいるお母さんにことわってロンの大好きな、おやつをご褒美にあげることにした。
ロンの前に座って、袋からおやつを取り出してロンに「お手、おかわり」をさせてから「よし!」と、合図を出した。
ロンは大喜びで、おやつに飛びつく。
……かと思っていたら、なんと私に飛びついてきた。
いつもどおり、私は仰向けに転ばされて、いつもどおりロンが私の上に馬乗りになる。
そして、いつもどおり私の顔を舐める。
いつもは嫌だったけど、今日のロンは私のために賢い犬を頑張ってくれたし、大好きなおやつよりもご褒美に私を選んでくれたのだからニコニコと我慢してあげた。
もちろん私もうれしかった。
でも、やっぱり途中で息ができなくなり、ロンにどいてといってもどいてくれなくて、最後はいつもどおり足をバタバタさせてお母さんに救援を求めた。
「もー!ロンのエロ!」
起き上がるなりロンを怒ってしまった。
夜中に兄と一緒にロンの散歩に出た。
夜空がとてもきれいで、小高い丘の上の原っぱでしばらく私たちは夜空を眺めていた。
最初一緒に星を見上げていたロンの顔が、いつのまにか私の横顔を見上げているのが分かった。
ロンにとって私が一番星なのかなってちょっと自惚れて、もっとロンが好きになった。




