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~さようならロン、またあう日まで~ (中学校編)  作者: 湖灯


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   ~卒部会は山小屋で5~

 夕食はキャンプの定番、カレーライス!

 せっかくだから一般で来てくれた父兄も呼んで、お接待することにした。

 もちろんその中には里沙や茂山さん。

 それにロンもいた。


 カレーは女子がつくり、ご飯のほうは班ごとに男子が飯盒で焚く。

 私たちの班はお調子者の伊藤くんが班長なので心配……。

 火おこしのときから、ほかの班と競い合い、火力が一番高いことを自慢している。

 調理中に炊飯棟から聞こえてくる声に耳を立てていると、違う班の江角くんから火が強すぎることを指摘されても言うことを聞かない伊藤くんの態度に不安しか感じない。


 カレーができあがって、あとはご飯が炊きあがるのを待っていると、伊藤くんがほかの班より早く焚けたといって棒にぶら下げた飯盒をいくつも持ってきた。

 伊藤くんが持ってきた飯盒のフタをおそるおそる開けると、真っ白いご飯に炊きあがっていたのでビックリした。

 香ばしい匂いも食欲をそそる。

 伊藤くんの自慢気な笑顔をみて、疑っていたことを後悔しかけた。

 けれども、結局白いのは上のほうだけで、飯盒の中のご飯をしゃもじで取り出そうとしたところ下半分は炭同然の状態になっていた。

 焦げが酷くて、四合炊きの飯盒で取れるお米はせいぜい二人前。

 本当なら四つの飯盒で、二十人分のご飯が炊ける予定だったのに、これでは八人分しか取れない。


「なによ!これじゃあ全員分ないじゃないの!」

 招待されカレー作りも手伝っていた里沙が、激怒して伊藤くんに食ってかかる。

 さすがにお調子者の伊藤くんもバツが悪くて謝るしかない。

 と、ここに救世主登場!

 なんと茂山さんがレトルトパックのご飯を持ってきてくれたのだ。


「さすが、お兄ちゃん!」

 さっきまで怒っていた里沙が、茂山さんに抱きついて大喜び。


『う~ん。まるで本当の従兄みたい』

 ロンは、そんな事件など気にすることもなく自分の目の前にあるボールに入ったいつも食べている犬用のご飯の前できちんと姿勢を正して『食べてもいいよ』って言ってもらえるのをじっと待っていた。

 ようやくそのことに気が付いてあげることができた私は、いつもより愛情をこめて“お手おかわり”で差し出すロンの手をにぎり「お食べ」と頭を撫でてあげた。


 無事夕食も終わり、後片付けは父兄も含めて全員で済ませて、いよいよお楽しみの星空コンサート。

 オープニングを飾るのは一、二年生による「星に願いを」


 いつのまにかロンの隣には持田健吾くんが来ていてロンは私の隣で固まっている。


「噛む?」

 不意に聞かれた私は「尻尾を踏んじゃったり乱暴なことをしたり急に大声を出したりするとビックリしちゃって噛むかもしれないから優しくしてあげてね」と返事しながら健吾くんの手に自分の手を添えて一緒にロンをなでなでした。

 そうしているうちにロンも慣れてきたのかリラックスして男の子の手をペロッと舐めた。

 子供は犬に舐められた手でも平気で口に入れたりするので、私は持っていた除菌用のウェットティッシュで手を拭いてあげた。


 ステージなんてないけれど、一、二年生の演奏が終わると今度は三年生のソロ。

 一応デュオやアンサンブルでもいいと事前に江角くんが言っていたので女子はアンサンブルが多かった。


 今は、伊藤くんのトランペットソロで「ルパン三世のテーマ」を吹いていて、お約束通りサビの高音域で疲れ果てて情けない音を出して皆を笑わせた。

 笑いながら横を見ると、すっかり疲れてしまったのか、健吾くんはいつの間にか伏せをしているロンに寄りかかったまま寝てしまっていた。


 私は「シューベルトのアヴェ・マリア」を演奏して、三年生の最後は前部長の江角くんが「Story」をトロンボーンで演奏して、最後にコンクールで演奏した「トゥーランドット」を全員で演奏した。

 これで一旦コンサートは終わり、部長の江角くんが挨拶をして会を閉めた。


 そしてこのあと登山道を登る企画を打ち明けるが、ここは道が悪いので大型楽器は持って行かないことと、手持ちのできる楽器でも持って行く人は自己責任として、特に持って行くことを強要もしなければ推奨もしない旨伝えて、この会の片付けが終わったあと再びここに集合してから出発すると皆に伝えた。


 私はロンとのんびり星を見ながら音楽を聴いてロマンチックな気分に浸ろうと思っていたのに、江角くんに呼ばれて一枚の楽譜を渡されて驚いた。


 その楽譜は、私が中学校で吹奏楽部に入部して担当の楽器を選んだ理由を発表したとき、ほかの人が「かっこいいから」とか「きれいな音色だからとか」「ジャズが好きだから」とか、当たり障りのないことを言っているのに「この曲のオーボエの調べを聞いてもらい、森林浴を浴びているような爽やかで、前向きな気持ちになってもらいたい!」と、まだ演奏もできないのに堂々と胸を張って言ったことを。


 そして思い出した。

 そのときかっこいいと思っていた男子から「習っているの?」って聞かれて、リコーダーなら小学校の学習発表会で吹いたと答えたとき「話にならねーや」と馬鹿にされたこと。


 言われて、正直嫌だったし、その男子のことを嫌いになった。

 でも、そのせいで「見返してやろう!」と、いっしょうけんめい練習してきたから今日があったのだと思う。

 そして今日、その男子から、この曲の楽譜を渡されようとは夢にも思っていなかった。

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