↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/20

第20話 十年後、私は処刑台に立つ。

《処刑の日まで》


《あと10年》


その文字を。


誰も。


見ることはなかった。


地下深く。


壊れた契約室。


そこで。


ただ静かに。


本来の歴史が。


もう一度。


動き始めていた。


◇


それから。


十年。


世界は。


終わらなかった。


巻き戻らなかった。


レオンも。


死ななかった。


セシリアも。


死ななかった。


ルークも。


生きた。


ただ。


当たり前のように。


時間だけが。


進んだ。


◇


王国暦291年。


春。


セシリア・アルフォード。


二十三歳。


あの日。


処刑された。


年齢。


だった。


「セシリア!」


王宮の廊下。


後ろ。


声。


「待って!」


セシリアは。


振り返らない。


「嫌!」


「話を聞いて!」


「聞かない!」


「五分だけ!」


「昨日も聞いた!」


走ってくる。


金色の髪。


青い瞳。


二十三歳。


レオン・アストレア。


十年前より。


背が。


ずっと高い。


顔立ちも。


大人。


でも。


今。


ものすごく。


焦っている。


「セシリア!」


ようやく。


腕。


掴む。


「離して」


「離したら逃げるでしょう」


「逃げる」


「だから離さない」


「王族の権力乱用」


「僕もう王族としてほとんど権力ないから」


「じゃあ普通の迷惑男」


「ひどい」


廊下の端。


ルーク。


壁。


寄りかかって。


見ている。


二十六歳。


「朝から元気だね」


セシリア。


「助けて」


「嫌だ」


即答。


「何で!」


「夫婦喧嘩に入るほど」


「……」


「僕は愚かじゃない」


レオン。


「まだ夫婦じゃない」


ルーク。


「十年婚約してそれ言う?」


レオン。


「うるさい」


セシリア。


顔。


赤い。


「婚約を十年続けてるのは」


「……」


「誰かさんが結婚式の日を」


「……」


「何度決めても延期するからでしょう!」


レオン。


「だって」


「何!」


「怖い」


セシリア。


止まる。


ルーク。


「そこ真顔で言う?」


レオン。


「だって」


「……」


「結婚したあと」


「……」


「何か起こりそうで」


セシリア。


ため息。


十年前。


未来。


見えなくなった。


赤い文字。


消えた。


それから。


レオンは。


少しだけ。


未来を怖がるようになった。


幸せなことが。


近づけば。


近づくほど。


《また何か起きるんじゃないか》


そう。


考える。


セシリアには。


分かる。


自分も。


同じだから。


でも。


「レオン」


「何?」


「十年だよ」


「うん」


「矢も」


「……」


「毒も」


「……」


「呪いも」


「……」


「世界滅亡も」


「……」


「一回もなかった」


レオン。


「世界滅亡を日常みたいに言わないで」


「だから」


セシリア。


彼の手。


握る。


「そろそろ」


「……」


「幸せになってもいいんじゃない?」


レオン。


黙る。


そして。


小さく。


笑う。


「……うん」


◇


十年。


たくさん。


変わった。


王国。


王制は。


完全には。


なくならなかった。


でも。


大きく。


変わった。


王の権限。


縮小。


議会。


設置。


貴族だけではなく。


商人。


職人。


地方。


代表。


参加。


レオンは。


王には。


ならなかった。


正式な称号。


《王国代表》


本人。


言う。


「王より面倒になった」


らしい。


国王。


レオンの父。


あの日。


死亡表示。


出た。


でも。


実際には。


カイルによって。


仮死状態に。


されていた。


王位継承を。


強制するため。


星喰い契約。


消滅後。


蘇生。


それから。


数年かけ。


王権。


議会へ。


移した。


現在。


隠居。


北の離宮で。


王妃エレノアと。


暮らしている。


「最近」


レオン。


言う。


「父上、釣りしかしてない」


セシリア。


「平和でいいじゃない」


「国王だった人とは思えない」


◇


父。


エドワード。


相変わらず。


過保護。


セシリア。


二十三歳。


なのに。


帰宅。


少し遅いだけで。


護衛。


十人。


出す。


リナ。


今も。


そば。


いる。


弟。


エリオット。


病気。


治った。


今は。


医師。


目指している。


そして。


カイル。


十年間。


生きた。


最初の数年。


罪。


裁かれ。


自由。


ほぼ。


なかった。


でも。


ルーク。


何度も。


会いに行った。


少しずつ。


父と。


息子。


話す。


ようになった。


今では。


王国の時間魔術。


完全に。


封印するための。


研究。


している。


「父さん」


ルーク。


よく。


文句。


言う。


でも。


その声には。


昔みたいな。


憎しみ。


ほとんど。


残っていない。


◇


そして。


ノア。


「セシリア」


肩。


小さな。


光。


《呼んだ?》


「呼んでない」


《呼ばれた気がした》


「気のせい」


十年。


ノアも。


いる。


星喰い。


だった存在。


今は。


小さな。


光。


自由。


人。


近く。


飛ぶ。


話す。


最近。


覚えたこと。


嫌味。


「ルークが教えたでしょう」


ルーク。


「何を?」


《僕、自分で覚えた》


セシリア。


「成長しなくていいところ成長した」


ノア。


《生きるとは成長》


「言うようになったね」


◇


でも。


一つ。


だけ。


セシリアが。


ずっと。


気にしていたこと。


十年前。


最初の。


人生。


処刑。


された日。


今日。


だった。


四月三日。


朝。


目を覚ました瞬間。


胸が。


ざわついた。


でも。


赤い文字。


ない。


何も。


ない。


だから。


気のせい。


そう。


思っていた。


◇


昼。


王宮。


会議。


セシリア。


議会側。


参加。


レオン。


王国代表。


ルーク。


魔術監察局。


代表。


いつもの。


日。


だった。


午後。


三時。


扉。


開く。


兵士。


駆け込む。


「レオン殿下!」


全員。


振り向く。


「どうした」


「毒が!」


セシリアの。


身体。


凍る。


「何?」


兵士。


顔。


青い。


「殿下の飲み物から」


「……」


「毒が発見されました!」


世界。


音。


消える。


十年前。


いや。


七回目。


王太子。


暗殺未遂。


毒。


セシリア。


罪。


処刑。


「……嘘」


レオン。


すぐ。


セシリアを見る。


二人。


同じ。


記憶。


ではない。


でも。


知っている。


今日。


何の日か。


「誰が」


ルーク。


聞く。


兵士。


「現在調査中です」


そして。


もう一人。


兵士。


走る。


「アルフォード公爵令嬢のお部屋から!」


セシリア。


息。


止まる。


「毒物が」


「……」


「発見されました!」


◇


十年前と。


同じ。


いや。


七回目と。


同じ。


商人。


毒。


部屋。


証拠。


次。


何が来るか。


セシリア。


分かる。


「リナ」


扉。


方向。


見る。


リナ。


立っている。


二十五歳。


顔。


青ざめる。


兵士。


彼女を見る。


「侍女リナ」


「……」


「確認したいことがあります」


セシリア。


胸。


痛い。


七回目。


《セシリア様は王太子を殺すと言っていました》


脅されて。


証言。


した。


リナ。


一歩。


前。


兵士。


「公爵令嬢は」


「……」


「レオン殿下に対し」


セシリア。


拳。


握る。


リナ。


「ありません」


兵士。


止まる。


「何?」


「セシリア様が」


リナ。


強く。


「レオン様を殺したいなど」


「……」


「一度も」


「……」


「聞いたことはありません」


セシリア。


目。


熱くなる。


未来。


違う。


◇


でも。


証拠。


出る。


毒。


セシリアの部屋。


商人。


証言。


《アルフォード家の人間に売った》


さらに。


手紙。


セシリアの筆跡。


《レオンを消す》


完全。


同じ。


「誰が」


セシリア。


呟く。


星喰い。


終わった。


アルディオン。


解放。


カイル。


今さら。


しない。


バルディス。


死んだ。


なら。


誰?


その瞬間。


十年間。


一度も。


見なかった。


赤い文字。


視界。


現れる。


《本来の歴史との再接続》


セシリア。


息。


止まる。


「……」


レオン。


「セシリア?」


《歴史修正開始》


《本来の出来事》


《王太子暗殺未遂》


《セシリア・アルフォード逮捕》


「嫌」


《三日後》


《処刑》


「嫌!」


会議室。


全員。


見る。


レオン。


すぐ。


近づく。


「見えてる?」


セシリア。


頷く。


「戻った」


「何が」


「文字」


ルーク。


顔。


変わる。


「何て?」


セシリア。


声。


震える。


「三日後」


「……」


「私」


「……」


「処刑される」


◇


静寂。


でも。


十年前。


違う。


今。


セシリア。


一人。


ではない。


レオン。


即座。


言う。


「却下」


全員。


「……?」


セシリア。


「何が」


「処刑」


「未来表示に却下って」


「知らない」


レオン。


真剣。


「でも却下」


ルーク。


「雑」


レオン。


「じゃあ丁寧に」


セシリア。


「そういう問題じゃない」


でも。


少し。


笑えた。


「調べる」


ルーク。


「証拠全部」


父。


会議室。


入ってくる。


誰か。


連絡。


したらしい。


顔。


怖い。


「娘に」


「……」


「何の用だ」


兵士。


全員。


一歩。


下がる。


セシリア。


「お父様、怖い」


「今からもっと怖くなる」


◇


調査。


始まる。


まず。


毒。


セシリアの部屋。


見つかった。


でも。


リナ。


証言。


「昨日までありませんでした」


誰が。


入れた。


王宮。


記録。


確認。


一人。


侍女。


見知らぬ。


女。


部屋。


近く。


通る。


映像。


魔術記録。


残っている。


追跡。


する。


女。


存在しない。


戸籍。


ない。


次。


商人。


尋問。


「私は」


震える。


「覚えていない」


「何を」


「誰に売ったのか」


記憶。


抜けている。


でも。


帳簿。


ある。


十年前。


いや。


七回目と。


同じ。


日付。


同じ。


金額。


「おかしい」


ルーク。


「何が?」


「この紙」


触る。


「十年前のものだ」


全員。


止まる。


「今日の取引なのに?」


「紙そのものは」


ルーク。


「十年以上前」


セシリア。


赤い文字。


見る。


《歴史修正率――21%》


「歴史が」


「……」


「昔の出来事を」


ルーク。


理解。


「今に重ねてる」


◇


ノア。


光。


震える。


《異常》


セシリア。


「分かる?」


《旧時間記録》


「……」


《現世界へ流入》


レオン。


「止められる?」


《原因検索》


少し。


《原因――八回目世界》


「私たちの世界?」


《はい》


《旧契約消滅後》


《本来の歴史が》


「……」


《空白を修正しようとしている》


セシリア。


「意味分からない」


カイル。


部屋。


入る。


「私には分かる」


ルーク。


「父さん」


カイル。


十年。


老けた。


でも。


穏やか。


「時間は」


「……」


「大きく変えれば」


「……」


「元へ戻ろうとする」


セシリア。


「じゃあ」


「七回目の歴史が」


「……」


「本来?」


「違う」


カイル。


「“最も強く刻まれた歴史”だ」


処刑。


セシリア。


死。


レオン。


絶望。


世界。


巻き戻る。


七回目。


強い。


感情。


だから。


時間。


それを。


正解。


だと。


誤認。


している。


「じゃあ」


レオン。


「また」


「……」


「セシリアを処刑すれば」


「歴史修正は」


カイル。


顔。


暗い。


「完了する」


「絶対にしない」


即答。


◇


《歴史修正率――34%》


文字。


上がる。


「止める方法」


セシリア。


カイル。


「一つ」


全員。


見る。


「また一つ?」


セシリア。


「その言い方嫌い」


カイル。


「すまない」


「何?」


「本来の歴史より」


「……」


「強い現実を」


「……」


「作る」


レオン。


「どうやって?」


「歴史は」


カイル。


「記録と」


「……」


「人の認識で固定される」


「つまり」


ルーク。


「セシリアが犯人じゃないことを」


「……」


「全員が知る?」


「それだけでは弱い」


「じゃあ」


「本来」


カイル。


レオンと。


セシリアを見る。


「この日に起こらなかった」


「……」


「強い出来事を」


「……」


「上書きする」


セシリア。


「強い出来事?」


カイル。


「人々が」


「……」


「長く覚えるような」


ルーク。


少し。


笑う。


「結婚式とか?」


セシリア。


「は?」


レオン。


固まる。


カイル。


「……有効だ」


セシリア。


「ちょっと待って」


父。


「賛成だ」


セシリア。


「お父様!?」


父。


「十年待たされた」


レオン。


「僕が怒られてる?」


父。


「お前以外に誰がいる」


◇


セシリア。


「いやいやいや!」


顔。


真っ赤。


「処刑される日に」


「……」


「結婚式!?」


ルーク。


「歴史的には強い」


「そういう問題じゃない!」


レオン。


「僕は」


「……」


「賛成」


セシリア。


「早い!」


レオン。


少し。


笑う。


でも。


目。


真剣。


「セシリア」


「何」


「十年前」


「……」


「幸せになっていいって」


「……」


「君が言った」


「うん」


「僕」


「……」


「まだ怖い」


「……」


「結婚したあと」


「……」


「君を失うかもしれない」


「……」


「子どもができたら」


「……」


「エリアのこと思い出すかもしれない」


「……」


「また」


「……」


「何か壊れるかもしれない」


セシリア。


黙る。


レオン。


続ける。


「でも」


手。


取る。


「怖いまま」


「……」


「進みたい」


セシリア。


涙。


出る。


「それ」


「……」


「プロポーズ?」


レオン。


「たぶん」


ルーク。


「下手」


レオン。


「うるさい」


セシリア。


笑う。


「じゃあ」


「……」


「ちゃんと言って」


「今?」


「今」


「人いっぱいいる」


「今さら」


レオン。


深く。


息。


吸う。


十年前。


十三歳。


好きだと。


言った。


今。


二十三歳。


「セシリア・アルフォード」


「はい」


「僕は」


「……」


「君と」


「……」


「未来を生きたい」


涙。


「死ぬ日まで」


一瞬。


二人。


笑う。


「今度は」


レオン。


「ちゃんと」


「……」


「一回だけの人生を」


「……」


「君と生きたい」


「……」


「結婚してください」


セシリア。


泣きながら。


「はい」


◇


三日後。


本来。


処刑の日。


王都中央広場。


十年前の。


記憶。


同じ場所。


でも。


処刑台。


ない。


代わり。


花。


白。


銀。


青。


人々。


大勢。


集まる。


セシリア。


白い。


ドレス。


あの日。


処刑された。


白い服。


とは。


違う。


今日は。


花嫁。


「緊張してる?」


リナ。


後ろ。


「死にそう」


「縁起でもないこと言わないでください」


セシリア。


笑う。


父。


扉。


前。


待つ。


娘。


見る。


「綺麗だ」


「お父様」


「何だ」


「泣いてる?」


「泣いてない」


「泣いてる」


「風だ」


「室内」


「うるさい」


◇


広場。


レオン。


待つ。


正装。


王冠。


ない。


それでいい。


ルーク。


隣。


立つ。


「逃げるなら今」


レオン。


「逃げない」


「十年前なら?」


「逃げたかも」


「成長」


「君は?」


ルーク。


「何が」


「エリア」


一瞬。


ルーク。


空。


見る。


「忘れてない」


「うん」


「たぶん」


「……」


「一生」


「……」


「忘れない」


「それで」


「うん」


ルーク。


笑う。


「生きる」


◇


音楽。


始まる。


セシリア。


父と。


歩く。


一歩。


一歩。


処刑台へ。


歩いた。


記憶。


重なる。


群衆。


罵声。


《悪役令嬢》


《人殺し》


《処刑しろ》


でも。


今。


拍手。


笑顔。


「おめでとう!」


声。


聞こえる。


セシリア。


涙。


出る。


視界。


赤い文字。


突然。


《歴史修正率――91%》


まだ。


高い。


「セシリア?」


レオン。


小声。


「見えてる」


「何%」


「91」


「高いね」


「うん」


でも。


進む。


◇


誓い。


司祭。


読む。


バルディスではない。


若い。


司祭。


「レオン・アストレア」


「はい」


「セシリア・アルフォード」


「はい」


「互いの人生を」


「……」


「支配するのではなく」


「……」


「尊重し」


セシリア。


胸。


鳴る。


新契約。


同じ。


言葉。


「喜びも」


「……」


「喪失も」


「……」


「共に受け止め」


「……」


「それぞれの未来を」


「……」


「共に選ぶことを」


「……」


「誓いますか」


二人。


見る。


「誓います」


同時。


答える。


《歴史修正率――74%》


下がる。


指輪。


交換。


《52%》


レオン。


手。


震える。


「震えてる」


セシリア。


「君も」


「私はドレス重いだけ」


「嘘」


《31%》


そして。


最後。


司祭。


「それでは」


「……」


「誓いの口づけを」


レオン。


固まる。


セシリア。


「今さら?」


「人多い」


「王国中見てる」


「言わないで!」


セシリア。


笑う。


そして。


自分から。


少し。


近づく。


「レオン」


「何?」


「未来」


「うん」


「見えないね」


「うん」


「怖い?」


「すごく」


「私も」


二人。


笑う。


「じゃあ」


セシリア。


小さく。


「一緒に怖がろう」


レオン。


「うん」


そして。


唇。


重なる。


◇


鐘。


鳴る。


一回。


二回。


三回。


王都。


全部。


祝福。


拍手。


花。


空。


舞う。


《歴史修正率――12%》


《7%》


《3%》


《1%》


そして。


《歴史修正――》


文字。


止まる。


セシリア。


息。


飲む。


《失敗》


次。


新しい。


文字。


《新歴史》


《確定》


そして。


《本来の処刑日》


文字。


消える。


《削除》


セシリア。


涙。


溢れる。


「消えた」


レオン。


「何が」


「処刑の日」


「……」


「なくなった」


レオン。


目。


閉じる。


安心。


息。


吐く。


「よかった」


◇


その瞬間。


世界。


一瞬。


白くなる。


セシリア。


目。


開く。


そこ。


誰も。


いない。


真っ白。


場所。


「……?」


遠く。


人影。


一人。


七回目の。


セシリア。


その隣。


七回目の。


レオン。


第四世界の。


ルーク。


セレナ。


ガルド。


アルディオン。


そして。


エリア。


第11話で。


別れた。


エリア。


「お母様」


セシリア。


泣く。


「エリア」


駆ける。


今度。


触れる。


抱きしめる。


温かい。


「結婚」


エリア。


笑う。


「おめでとうございます」


「見てた?」


「ずっと」


「恥ずかしい」


「お父様」


「何?」


「キス下手でした?」


セシリア。


吹き出す。


「たぶん」


遠く。


レオンの声。


聞こえそう。


◇


「エリア」


セシリア。


抱いたまま。


「あなた」


「……」


「これから」


「……」


「どこへ」


エリア。


少し。


考える。


「分かりません」


「怖い?」


「少し」


「私も」


「でも」


エリア。


笑う。


「未来って」


「……」


「分からないから」


「……」


「いいんでしょう?」


セシリア。


涙。


笑う。


「そうだね」


エリア。


離れる。


「お母様」


「何?」


「今度」


「……」


「もし」


「……」


「また」


声。


少し。


震える。


「あなたの娘に」


「……」


「生まれられたら」


セシリア。


泣く。


「絶対」


「……」


「分かる?」


「分かる」


即答。


「どうして?」


「母親だから」


エリア。


笑う。


「根拠ない」


「いいの」


「じゃあ」


「うん」


「またね」


セシリア。


同じ。


言葉。


「またね」


◇


光。


消える。


気づく。


広場。


レオン。


目の前。


「セシリア?」


「……」


「泣いてる」


「うん」


「どうした?」


「エリアに」


声。


詰まる。


「会った」


レオン。


目。


見開く。


「本当に?」


「うん」


「何て?」


セシリア。


少し。


笑う。


「キス下手だったって」


レオン。


「絶対そんなこと言ってない!」


「言った」


「嘘!」


ルーク。


遠く。


「何の話?」


二人。


同時。


「何でもない!」


◇


それから。


三年。


王国。


少しずつ。


変わった。


王。


いる。


でも。


一人で。


国を。


決めない。


議会。


民。


地方。


王家。


貴族。


みんな。


ぶつかる。


時間。


かかる。


失敗。


する。


でも。


それでいい。


未来は。


一人が。


決めるものじゃない。


◇


セシリア。


二十六歳。


ある朝。


窓。


光。


カーテン。


揺れる。


隣。


レオン。


眠る。


顔。


昔より。


少し。


大人。


でも。


寝相。


悪い。


「重い」


腕。


セシリア。


上。


乗っている。


「レオン」


反応。


ない。


「レオン」


「……あと五分」


「子どもみたい」


「……五分」


そのとき。


隣室。


赤ちゃん。


泣く。


「ほら」


レオン。


目。


開く。


「僕?」


「私、昨日夜中三回起きた」


「行きます」


即座。


起きる。


セシリア。


笑う。


◇


寝台。


小さな。


赤ちゃん。


銀色。


髪。


まだ。


ほんの少し。


瞳。


青。


レオン。


抱く。


「泣かないで」


さらに。


泣く。


「何で」


セシリア。


「抱き方下手」


「練習してる」


「三か月経ってる」


「難しい」


赤ちゃん。


小さな手。


レオンの。


髪。


掴む。


「痛い痛い!」


セシリア。


笑う。


そして。


赤ちゃん。


セシリア。


見る。


一瞬。


笑った。


その笑顔。


胸。


懐かしい。


「……」


レオン。


気づく。


「どうした?」


セシリア。


赤ちゃん。


抱く。


「何でもない」


「泣いてる」


「嬉しいの」


「名前」


レオン。


聞く。


「やっぱり」


「……」


「これでいい?」


セシリア。


頷く。


二人。


赤ちゃん。


見る。


「エリア」


名前。


呼ぶ。


赤ちゃん。


また。


笑う。


偶然。


かもしれない。


生まれ変わり。


なんて。


本当は。


分からない。


未来。


見えない。


だから。


確かめることも。


できない。


でも。


それでいい。


「おはよう」


セシリア。


小さな。


額。


口づけ。


「エリア」


赤ちゃん。


手。


伸ばす。


セシリアの。


指。


握る。


温かい。


生きている。


それだけで。


十分。


◇


十年前。


私は。


処刑台で。


こう思った。


次の人生では。


あなたに。


会いたくない。


でも。


今なら。


違う。


何度。


人生が。


あったとしても。


きっと。


私は。


また。


あなたに会う。


ただし。


次は。


運命だから。


じゃない。


呪いだから。


でもない。


自分で。


選ぶ。


あなたを。


そして。


あなたが。


別の未来を。


選ぶなら。


それも。


受け入れる。


だって。


愛することは。


相手の未来を。


自分のものにすることじゃない。


一緒に。


未来を。


作ることだから。


「セシリア」


レオン。


「何?」


「幸せ?」


セシリア。


少し。


考える。


昔なら。


すぐ。


答えたかもしれない。


今は。


ちゃんと。


考える。


昨日。


リナと。


喧嘩。


した。


父。


また。


過保護。


ルーク。


相変わらず。


嫌味。


ノア。


朝から。


うるさい。


レオン。


寝相。


最悪。


子育て。


大変。


国。


問題。


山ほど。


未来。


分からない。


でも。


セシリア。


笑う。


「うん」


「……」


「今は」


レオン。


「今は?」


「明日は」


「……」


「明日決める」


レオン。


少し。


笑う。


「それでいいね」


「うん」


未来は。


未確定。


だから。


今日を。


選ぶ。


生きる。


愛する。


失うことを。


怖がりながら。


それでも。


進む。


◇


セシリアの視界には。


もう。


赤い文字は。


浮かばない。


《死亡まであと何日》


そんなもの。


知らなくていい。


最後の日が。


いつなのか。


知らないから。


今日。


伝える。


「レオン」


「何?」


「愛してる」


レオン。


少し。


驚いて。


そして。


笑う。


「僕も」


窓。


外。


朝。


始まる。


新しい。


一日。


誰にも。


決められていない。


八回目の。


その先。


初めての。


未来。


――完――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。