第19話 ふたつの世界、ひとつの願い。
《世界融合》
《成功率――3.1%》
《失敗時》
《第三世界消滅》
《第六世界消滅》
《接続中の八回目世界》
《同時消滅》
セシリアは。
何度見ても。
数字が変わらないことを確認した。
3.1%。
百回やれば。
九十六回以上。
失敗する。
しかも。
失敗すれば。
二つの過去世界だけではない。
今。
自分たちが生きている。
八回目の世界まで。
消える。
「無理」
セシリアは。
即答した。
第三世界のレオン。
眉を寄せる。
「まだ何も」
「無理」
「話くらい」
「融合はしない」
第六世界のセシリア。
静かに。
今の自分を見る。
「どうして?」
「成功率3.1%だから」
「それでも」
「ダメ」
「私たちは」
第六世界のセシリア。
一歩。
前へ出る。
「もう」
「……」
「一人で生きるのに」
唇が。
震える。
「疲れたの」
◇
第三世界。
レオンだけが生き残った世界。
第六世界。
セシリアだけが生き残った世界。
互い。
最愛の人を失い。
それでも。
時間だけ。
残った。
「話して」
今のセシリアが言う。
第三世界のレオン。
「何を」
「全部」
「……」
「どうして」
「……」
「そんなに融合したいのか」
第三レオン。
第六セシリア。
互いを見る。
同じ場所。
でも。
違う世界。
手を伸ばしても。
触れない。
「分かった」
第三レオン。
ゆっくり。
口を開く。
◇
第三世界。
セシリアは。
十六歳で。
死んだ。
毒。
だった。
今のセシリア。
「また毒……」
第三レオン。
「暗殺対象は俺だった」
「じゃあ」
「彼女が」
声。
詰まる。
「俺の代わりに飲んだ」
今のレオン。
顔。
青くなる。
「僕を庇った?」
「ああ」
「どうして」
第三レオン。
今のレオンを見る。
「好きだったからだろ」
言葉。
簡単。
でも。
重い。
「俺も」
「……」
「好きだった」
「言った?」
今のレオン。
第三レオン。
苦笑。
「死んだあとに」
ルーク。
「遅い」
「分かってる」
「かなり」
「分かってる!」
第三レオン。
声。
荒くなる。
そして。
すぐ。
力。
抜ける。
「だから」
「……」
「後悔した」
◇
セシリアが死んだあと。
レオン。
星喰い。
発動。
でも。
第三世界。
少し。
違った。
レオン。
怒り。
憎しみ。
全部。
自分へ。
向けた。
「自分に?」
今のセシリア。
「ああ」
第三レオン。
「俺が」
「……」
「もっと早く」
「……」
「好きだって言えば」
「……」
「セシリアは」
拳。
握る。
「俺のために死ななかったかもしれない」
今のセシリア。
「それは違う」
即答。
第三レオン。
「何が」
「好きって言われてても」
「……」
「私はたぶん」
自分。
分かる。
「庇った」
レオン。
今の。
「セシリア」
「何?」
「それ褒められない」
「分かってる」
第三レオン。
少し。
笑う。
でも。
そのあと。
レオンは。
自分を。
罰し続けた。
王位。
捨てない。
国。
復興。
外交。
政治。
全部。
完璧に。
こなす。
笑わない。
休まない。
死ぬことも。
許さない。
《セシリアが死んだ分まで》
そう。
思って。
生きる。
「何年?」
今のレオン。
「十二年」
第三レオン。
今。
二十八歳。
「十二年」
「……」
「毎日」
「……」
「彼女に」
「……」
「言えなかった言葉を」
飲み込んだ。
《好きだった》
《愛していた》
《死んでほしくなかった》
《俺を置いていくな》
全部。
◇
「第六世界は?」
今のセシリア。
未来の自分を見る。
第六世界のセシリア。
「反対」
「反対?」
「レオンが」
「……」
「私を庇って死んだ」
今のレオン。
「やっぱり僕ら」
ルーク。
「似た者同士すぎる」
誰も。
否定できない。
第六世界。
十八歳。
セシリア。
狙われる。
暗殺者。
剣。
レオン。
前。
出る。
胸。
刺される。
「最後に」
第六セシリア。
言う。
「何て言ったと思う?」
今のセシリア。
「生きて?」
「正解」
「また……」
「本当に」
第六。
苦笑。
「どのレオンも同じ」
そして。
レオン。
死。
セシリア。
残る。
王位。
空く。
でも。
王国。
混乱。
だから。
セシリア。
立つ。
王族ではない。
でも。
レオンが。
最後に。
託した。
《国を頼む》
その言葉。
守るため。
摂政。
なり。
十二年。
生きる。
「第三世界と」
今のセシリア。
「同じ十二年?」
「そう」
第三レオン。
第六セシリア。
同じ年。
同じ時間。
違う世界。
片方。
レオン。
片方。
セシリア。
残った。
◇
ノア。
《第三世界・第六世界》
《相互共鳴率――99.7%》
ルーク。
「高い」
《世界構造》
《ほぼ同一》
「違いは」
今のレオン。
《生存者》
《レオン・アストレア》
《セシリア・アルフォード》
だけ。
違う。
だから。
引き合う。
鏡。
みたいに。
「融合すれば」
第三レオン。
「俺の世界に」
第六セシリアを見る。
「セシリアが戻る」
「私の世界にも」
第六。
「レオンが戻る」
「でも」
今のセシリア。
「本当に?」
二人。
止まる。
「融合して」
「……」
「目の前の人が」
「……」
「あなたが失った本人になるの?」
沈黙。
ノア。
《否》
一言。
第三レオン。
顔。
変わる。
「……何?」
《第三世界レオン》
《第六世界セシリア》
《融合後も個体情報は別》
第六セシリア。
「つまり」
ノア。
《失ったセシリア》
《失ったレオン》
《復活しない》
第三レオン。
「じゃあ」
「……」
「融合しても」
ノア。
《互いは》
《互いが失った人物に近似》
《しかし》
《同一人物ではない》
空気。
冷える。
◇
第三レオン。
「そんな」
第六セシリア。
「でも」
「……」
「同じでしょう?」
今のセシリア。
「違う」
第六。
「私もセシリア」
「うん」
「この人もレオン」
「うん」
「なら」
「あなたは」
今のセシリア。
静かに。
「七回目の私と」
「……」
「同じ?」
第六。
止まる。
「第四世界の私とも?」
「……」
「第一世界の私とも?」
答え。
出ない。
今のセシリア。
「違うでしょう?」
第六。
涙。
溜まる。
「でも」
「……」
「似てる」
「うん」
「声も」
「……」
「顔も」
「うん」
「だったら」
「それでも」
今のセシリア。
胸。
押さえる。
「あなたが愛したレオンは」
「……」
「その人だけ」
第六。
涙。
落ちる。
第三レオン。
目。
伏せる。
◇
今のルーク。
静かに。
「僕も」
二人。
見る。
「同じことを」
「……」
「考えた」
エリア。
何人も。
いた。
最初の世界。
第11話。
魂。
戻らない。
選んだ。
第16話。
第一世界。
生きたい。
選んだ。
同じ。
エリア。
でも。
違う。
「同じ名前で」
ルーク。
「同じ顔でも」
「……」
「選んだことが違えば」
「……」
「別の人なんだ」
第三レオン。
「じゃあ」
声。
低い。
「俺たちは」
「……」
「何のために」
第六セシリアを見る。
「会った」
今のルーク。
「分からない」
「……」
「でも」
「……」
「亡くした人の」
「……」
「代わりになるためじゃない」
◇
第六セシリア。
顔。
手。
覆う。
「分かってる」
泣く。
「そんなこと」
「……」
「分かってるの」
「……」
「でも」
「……」
「十二年」
声。
壊れる。
「十二年なのよ」
今のセシリア。
何も。
言えない。
「毎朝」
「……」
「起きるたびに」
「……」
「いない」
「……」
「食事しても」
「……」
「いない」
「……」
「眠るときも」
「……」
「いない」
「……」
「嬉しいことがあっても」
「……」
「話す人が」
涙。
「いない」
第三レオン。
同じ。
顔。
している。
「俺もだ」
二人。
初めて。
互いへ。
本当の意味で。
目を向ける。
第三レオン。
「十二年」
第六セシリア。
「十二年」
「俺は」
「私は」
同時。
止まる。
そして。
少し。
笑う。
「同じだな」
「そうね」
◇
今のセシリア。
その瞬間。
気づく。
「ねえ」
二人。
見る。
「何だ」
「融合じゃなくて」
「……」
「行き来できない?」
ノア。
光。
点滅。
ルーク。
「世界間移動?」
「そう」
「それなら」
レオン。
「二つの世界を消さない」
「うん」
「混ぜない」
「うん」
「でも」
「……」
「会える」
第三レオン。
「そんなこと」
ノア。
《計算開始》
全員。
待つ。
《世界融合》
《成功率――3.1%》
《世界接続》
一拍。
《成功率――78.6%》
ルーク。
「高い!」
セシリア。
「できるじゃん!」
ノア。
《ただし》
全員。
「……」
嫌な。
言葉。
《恒常接続には》
《時間源――不足》
「また時間!」
セシリア。
頭。
抱える。
《一時接続》
《可能》
第三レオン。
「どれくらい」
《一回》
《最大24時間》
第六セシリア。
「その後は?」
《世界分離》
「また」
「……」
「会えない?」
《通常は》
第三。
顔。
曇る。
今のセシリア。
「通常は?」
ノア。
《両世界が》
「……」
《独自に》
「……」
《接続技術を確立した場合》
ルーク。
「未来で」
ノア。
《再接続可能性あり》
沈黙。
第三レオン。
第六セシリア。
互いを見る。
二人。
どちらも。
大人。
王国を。
十二年間。
一人で。
支えた。
政治。
技術。
魔術。
研究。
進められる。
「未来が」
第六セシリア。
小さく。
「ある」
第三レオン。
「自分たちで」
「……」
「また会う方法を」
「……」
「探せる」
今のセシリア。
笑う。
「そういうの」
「……」
「いいと思う」
◇
「でも」
第三レオン。
「今は」
第六を見る。
「二十四時間」
ノア。
《はい》
第六セシリア。
少し。
笑う。
「十二年待ったの」
「……」
「一日くらい」
「……」
「十分長い」
第三レオン。
「短いだろ」
「じゃあ」
「……」
「その一日を」
「……」
「長く感じるくらい」
笑う。
「話しましょう」
◇
《世界接続》
《開始》
二つ。
光。
近づく。
融合ではない。
重ならない。
間。
扉。
できる。
第三世界。
昼。
第六世界。
夜。
その間。
小さな。
橋。
第三レオン。
一歩。
歩く。
第六セシリア。
一歩。
歩く。
中央。
止まる。
手。
伸ばす。
触れる。
今度は。
すり抜けない。
「……温かい」
第六。
涙。
第三。
同じ。
「セシリア」
「私は」
「分かってる」
「……」
「あなたのセシリアじゃない」
「分かってる」
「あなたも」
「……」
「私のレオンじゃない」
「分かってる」
「それでも」
第三レオン。
少し。
笑う。
「初めまして」
第六セシリア。
目。
丸くなる。
そして。
泣きながら。
笑う。
「初めまして」
「レオン・アストレア」
「セシリア・アルフォードです」
「知ってる」
「私も」
二人。
笑う。
それは。
再会ではない。
新しい。
出会い。
だった。
◇
ノア。
《第三世界》
《未来生成》
《第六世界》
《未来生成》
《融合要求――解除》
セシリア。
「できた」
でも。
残る。
問題。
時間。
《現世界残り》
《9時間02分》
「九時間」
ルーク。
「もう世界は全部?」
ノア。
確認。
第一世界。
独立。
第二世界。
仮独立。
第三。
未来生成。
第四。
解放。
第五。
独立。
第六。
未来生成。
第七。
解放。
「全部」
セシリア。
「七つ」
レオン。
「終わった」
でも。
ノア。
《否》
三人。
「え?」
《第二世界》
「そうだ」
第二世界。
仮独立。
時間源。
まだ。
ない。
《第二世界独立に必要な時間源》
《推定――240年》
解放済み。
余り。
約15年。
全然。
足りない。
「どうする」
ルーク。
セシリア。
考える。
第一世界。
未来生成。
独立。
第五世界。
独立。
第三。
第六。
別々。
時間。
ある。
「時間」
「……」
「分けてもらう?」
レオン。
「それって」
「……」
「また誰かの時間を」
「奪う」
セシリア。
首。
振る。
「勝手には」
「でも」
ルーク。
「聞けばいい」
セシリア。
彼を見る。
「全員に?」
「うん」
「240年」
「一世界」
レオン。
考える。
「40年ずつなら」
六世界。
第四。
第七。
解放済み。
残っている。
第一。
第三。
第五。
第六。
現世界。
五つ。
第二。
自身。
除外。
一世界60年。
それでも。
重い。
「人間一人の寿命じゃない」
ノア。
《世界時間源》
《個人寿命とは別》
「じゃあ」
《世界全体から》
「……」
《未来可能性を一部提供》
セシリア。
「具体的にどうなる?」
《各世界》
《約0.000003%》
「……」
ルーク。
「小さすぎない?」
ノア。
《世界時間は》
「……」
《個人時間と規模が異なる》
つまり。
世界全体から。
ほんの。
少し。
未来の可能性。
分ける。
それなら。
「聞こう」
◇
第一世界。
エリア。
答え。
即答。
《いいよ》
大人のセシリア。
《もちろん》
大人のレオン。
《好きに使え》
青年ルーク。
《未来をもらったんだ。少しくらい返す》
第五世界。
レオン。
少し。
笑う。
《好きにしろ》
《俺はこれから忙しい》
第三世界。
レオン。
《構わない》
第六世界。
セシリア。
《同じく》
今の世界。
父。
カイル。
王妃。
人々。
すべての。
意思。
必要。
「どうやって」
ノア。
《代表承認》
「誰が代表」
《王家》
レオン。
「王やめる予定」
《暫定》
「便利だな」
《アルフォード》
セシリア。
《ヴァレンタイン》
ルーク。
三人。
また。
世界。
代表。
する。
でも。
今回は。
勝手に。
決めない。
「お父様に」
セシリア。
「聞く」
◇
現実。
一度。
戻る。
契約室。
身体。
ある。
父。
待っている。
カイル。
「何があった」
セシリア。
一気に。
説明。
父。
途中。
三回。
頭。
抱えた。
「つまり」
「……」
「別の世界を救うため」
「……」
「この世界の未来を」
「……」
「0.000003%」
「分けたい」
父。
長く。
沈黙。
「それが」
「……」
「この世界の民に」
「……」
「目に見える不利益を?」
ノア。
《ほぼなし》
「絶対ではない?」
《未来は》
「……」
《元来不確定》
父。
「便利な答えだな」
セシリア。
「私も思った」
父。
娘。
見る。
「お前は」
「……」
「どうしたい」
「助けたい」
即答。
父。
「分かった」
「いいの?」
「ただし」
「何?」
父。
セシリア。
額。
指。
軽く。
弾く。
「全部一人で背負うな」
「痛い」
「返事」
「……はい」
カイル。
横。
「私も承認します」
ルーク。
驚く。
「父さん」
「ヴァレンタイン家の」
カイル。
「罪でもある」
「……」
「未来を使うなら」
「……」
「未来を返すために使いたい」
ルーク。
静かに。
頷く。
◇
三世界。
いや。
五世界。
同意。
《時間源転送》
光。
流れる。
第二世界。
王都。
炎。
残る。
でも。
夜。
空。
星。
第二世界のセシリア。
見上げる。
《第二世界》
《独立時間軸生成》
《完了》
彼女。
泣く。
「ありがとう」
今のセシリア。
「生きて」
第二。
少し。
笑う。
「簡単に言う」
「難しいから」
「……」
「何?」
「毎日」
「……」
「それを選ぶんでしょう?」
第二。
黙る。
そして。
「そうね」
周囲。
生存者。
復興。
始める。
瓦礫。
運ぶ。
水。
配る。
第二セシリア。
そこへ。
歩く。
石。
投げられる。
かもしれない。
憎まれる。
でも。
進む。
「行ってきます」
今度は。
返事。
聞こえる。
生存者の。
女性。
遠く。
《早く手伝って!》
第二セシリア。
驚く。
そして。
走る。
◇
《七世界》
《処理完了》
《契約再構築率》
《84%》
《91%》
《96%》
《99%》
止まる。
「また99」
セシリア。
「もう嫌」
ルーク。
「何が足りない」
ノア。
沈黙。
《最終条件》
《八回目世界》
三人。
見る。
「私たちの世界?」
《はい》
《過去七世界》
《すべて未来を獲得》
「うん」
《しかし》
《八回目世界》
《未来未確定》
レオン。
「どういうこと?」
ノア。
《王位》
「……」
《未解決》
《国家体制》
「……」
《未解決》
《星喰い契約》
「……」
《新契約最終承認》
「……」
《未完了》
セシリア。
「つまり」
ルーク。
「僕たちの世界の」
レオン。
「これからを」
「……」
「決めないと」
ノア。
《はい》
◇
《現世界残り》
《7時間18分》
セシリア。
「七時間」
ルーク。
「国の形を決めるのに?」
レオン。
「無茶だ」
父。
後ろ。
「当たり前だ」
全員。
振り向く。
エドワード公爵。
腕。
組んでいる。
「国の制度を」
「……」
「十三歳三人が」
「……」
「七時間で決めるな」
セシリア。
「でも」
父。
「決める必要があるのは」
「……」
「完成形ではない」
レオン。
「じゃあ?」
「方向」
父。
言う。
「この国を」
「……」
「誰か一人の意思で支配するのか」
「……」
「それとも」
「……」
「複数の人間で」
「……」
「未来を選ぶ国にするのか」
セシリア。
胸。
鳴る。
王。
一人。
星喰い。
一人。
アルディオン。
一人。
全部。
一人が。
決めた。
だから。
壊れた。
「なら」
レオン。
王冠。
思い出す。
「僕は」
「……」
「王にならない」
父。
「即廃止は現実的ではない」
レオン。
「じゃあ」
「王は」
父。
「象徴」
「……」
「あるいは」
「……」
「権限を制限する」
ルーク。
「議会?」
父。
「それに近い」
セシリア。
「みんなで決める?」
父。
「少なくとも」
娘を見る。
「一人で決めるよりはな」
◇
セシリア。
笑う。
「それ」
「……」
「いい」
レオン。
「僕も」
ルーク。
「僕は王国民じゃ」
セシリア。
「ヴァレンタインも建国者」
ルーク。
「逃げられない?」
「逃がさない」
「怖い」
◇
その瞬間。
ノア。
《国家未来方向》
《単独支配――拒否》
《共同意思決定――選択》
《新契約との適合》
《一致》
セシリア。
「進んだ?」
《契約再構築率》
《99.4%》
「少し!」
「あと0.6!」
レオン。
「何」
ノア。
《最後の承認》
《王》
《月》
《剣》
三人。
手。
重ねる。
《新契約》
文字。
再び。
表示。
《誰も誰かの所有物にならない》
《誰か一人のために他の誰かを犠牲にしない》
《失うことを恐れても、相手の未来を奪わない》
そして。
空白。
一行。
《最後の一文を定義せよ》
セシリア。
「最後?」
ルーク。
「まだ考えるの?」
レオン。
三人。
黙る。
これまで。
七つの世界。
見た。
愛。
喪失。
後悔。
罪。
永遠。
未来。
全部。
一つ。
足りないもの。
セシリア。
思う。
七回目。
《生きて》
エリア。
《生きて》
第五世界。
《ちゃんと生きて》
始祖セレナ。
《今度はあなたたちの番》
「分かった」
セシリア。
二人を見る。
「何?」
「最後」
手。
握る。
「生きること」
レオン。
「それだけ?」
「ううん」
セシリア。
笑う。
「誰かに決められた人生じゃなく」
ルーク。
目。
少し。
柔らかくなる。
三人。
一緒に。
言う。
「自分の未来は、自分で選ぶ」
◇
《登録》
《新契約》
《完成》
《再構築率――100%》
光。
世界。
覆う。
ノア。
強く。
輝く。
《星喰い契約》
《終了》
セシリア。
「終わった?」
ノア。
《旧契約――消滅》
レオン。
「じゃあ」
《死亡条件》
《解除》
ルーク。
「本当に?」
《はい》
三人。
しばらく。
動かない。
セシリア。
レオン。
見る。
頭上。
何も。
ない。
赤い文字。
ない。
死亡まで。
何日。
何時間。
ない。
「……消えた」
レオン。
「何が?」
「全部」
涙。
出る。
「本当に」
「……」
「死ぬ未来が」
笑う。
「消えた」
◇
その瞬間。
ノア。
小さく。
揺れる。
《警告》
三人。
顔。
引きつる。
「まだあるの!?」
ノア。
《契約終了に伴い》
《時間巻戻し機能》
一拍。
《消滅》
セシリア。
「……」
レオン。
「それは」
ルーク。
「つまり」
ノア。
《以後》
《死亡時の再試行》
《不可》
静寂。
八回目。
最後。
本当に。
最後。
もう。
失敗しても。
戻れない。
セシリア。
少し。
怖くなる。
今までは。
どこか。
やり直し。
あった。
でも。
これから。
一度だけ。
人生。
一回。
普通の。
人間と。
同じ。
レオン。
手。
握る。
「怖い?」
セシリア。
「少し」
「僕も」
ルーク。
「僕も」
セシリア。
笑う。
「じゃあ」
「……」
「普通だね」
三人。
笑う。
◇
しかし。
契約室。
天井。
急に。
揺れる。
カイル。
「全員出ろ!」
「何!」
「核が!」
黒い結晶。
崩れ始める。
ノア。
《契約核》
《役割終了》
《崩壊》
父。
「急げ!」
全員。
扉。
走る。
カイル。
ルーク。
背中。
押す。
「先に行け!」
「父さんも!」
「行く!」
崩れる。
石。
落ちる。
ノア。
セシリアの。
肩。
光。
追う。
出口。
あと。
少し。
そのとき。
巨大な。
石柱。
落ちる。
「セシリア!」
レオン。
突き飛ばす。
「レオン!」
柱。
彼。
方向。
落ちる。
でも。
カイル。
間。
飛び込む。
ルーク。
「父さん!」
轟音。
埃。
視界。
消える。
◇
「カイル!」
セシリア。
咳。
「ルーク!」
「ここ!」
ルーク。
瓦礫。
掘る。
「父さん!」
血。
指。
出る。
それでも。
掘る。
レオン。
手伝う。
父。
兵。
全員。
石。
どかす。
そして。
カイル。
見つかる。
身体。
半分。
瓦礫。
下。
「父さん!」
ルーク。
顔。
真っ白。
「動かないで!」
カイル。
目。
開く。
「……うるさい」
ルーク。
「生きてる!」
「勝手に殺すな」
「今それ言えるなら大丈夫」
でも。
血。
多い。
ノア。
光。
カイル。
照らす。
《生命状態》
《危険》
《治療可能》
「可能!」
セシリア。
「運ぶ!」
カイル。
「待て」
「何」
彼。
ルーク。
見る。
「ルーク」
「何!」
「私は」
息。
苦しい。
「お前に」
「……」
「言ってなかった」
ルーク。
「今はいい!」
「よくない」
「あとで言え!」
「だから」
カイル。
少し。
笑う。
「あとで言う」
ルーク。
止まる。
カイル。
「生きるから」
目。
見開く。
「……」
カイル。
息子。
見る。
「今度は」
「……」
「逃げない」
ルーク。
泣き。
笑う。
「絶対だよ」
「ああ」
◇
契約室。
脱出。
背後。
黒い扉。
閉じる。
崩落。
終わる。
セシリア。
床。
座る。
息。
荒い。
「終わった」
レオン。
隣。
「たぶん」
ルーク。
「“たぶん”やめて」
ノア。
小さく。
浮く。
《終了確認》
《星喰い旧契約――消滅》
《七過去世界――処理完了》
《八回目世界――未来生成開始》
セシリア。
「未来」
ノア。
《はい》
《以後》
《予測不能》
「見えない?」
《未来は》
一拍。
《未確定》
セシリア。
笑う。
それが。
一番。
欲しかった。
未来。
分からない。
誰が。
いつ死ぬ。
何が起きる。
何も。
見えない。
怖い。
でも。
「最高」
レオン。
「何が?」
「分からないこと」
ルーク。
「変な人」
セシリア。
「あなたに言われたくない」
◇
その夜。
王宮。
カイル。
治療。
命。
助かった。
王妃。
回復。
父。
生きている。
リナ。
エリオット。
無事。
レオン。
無事。
ルーク。
無事。
セシリア。
無事。
七回。
できなかった。
誰も。
殺さない。
それが。
やっと。
できた。
◇
夜。
バルコニー。
セシリア。
一人。
空。
見る。
星。
普通。
ただ。
光っている。
「セシリア」
レオン。
来る。
「寝ないの?」
「レオンも」
「眠れない」
隣。
立つ。
しばらく。
沈黙。
「ねえ」
レオン。
「何?」
「第五世界の僕に」
「……」
「何か言われた」
「何を?」
レオン。
顔。
赤くなる。
「いや」
「何」
「……」
「別に」
「気になる」
「大したことじゃない」
「言って」
「嫌」
「言って」
「……」
セシリア。
じっと。
見る。
レオン。
観念。
息。
吐く。
「好きなら」
「……」
「ちゃんと言えって」
セシリア。
止まる。
「誰を?」
「……」
レオン。
「分かってるでしょう」
「分からない」
「絶対分かってる」
「言わないと分からない」
レオン。
顔。
さらに。
赤い。
「セシリア」
「何?」
「僕は」
声。
震える。
「君が」
その瞬間。
鐘。
鳴る。
ゴーン。
二人。
「……」
レオン。
空。
見る。
セシリア。
笑い。
堪える。
「続きは?」
「鐘が」
「関係ない」
「雰囲気が」
「続き」
レオン。
深く。
息。
吸う。
そして。
セシリアを見る。
「僕は」
もう一度。
「君が好きだ」
セシリア。
胸。
大きく。
鳴る。
「十三歳で」
「……」
「まだ」
「……」
「これが」
「……」
「どれくらい続くか」
「……」
「分からない」
正直。
「でも」
「……」
「今は」
レオン。
笑う。
「君が好き」
セシリア。
しばらく。
答えない。
レオン。
不安。
顔。
「何か言って」
「考えてる」
「長い」
「大事だから」
「……」
セシリア。
過去。
七回。
愛した。
でも。
今のレオンは。
今のレオン。
過去の代わり。
じゃない。
だから。
「私も」
「……」
「今のあなたが」
レオン。
息。
止める。
「好き」
レオン。
「……」
「何その顔」
「いや」
「嬉しくない?」
「嬉しい」
「なら」
「嬉しすぎて」
「……」
「何言えばいいか」
セシリア。
笑う。
「普通でいい」
「普通って難しい」
「これから覚えよう」
「うん」
二人。
手。
握る。
未来。
見えない。
だから。
約束。
できる。
「明日」
セシリア。
「何する?」
レオン。
少し。
考える。
「朝ごはん」
「そのあと?」
「国の会議」
セシリア。
「サボらない?」
レオン。
「第一世界の僕みたいになるからダメ」
「残念」
「そのあと」
「うん」
レオン。
「一緒に」
「……」
「未来を考えよう」
セシリア。
笑う。
「うん」
◇
でも。
その頃。
王宮。
地下。
完全に。
崩れたはずの。
契約室。
闇。
何も。
ない。
はず。
だった。
そこ。
小さな。
光。
一つ。
残っている。
ノアではない。
七世界でもない。
赤い。
小さな。
文字。
《最終記録》
《八回目》
《結末未確定》
そして。
その下。
《処刑の日まで》
《あと10年》
誰も。
見ていない。
文字。
一度。
明滅。
《本来の歴史との再接続》
《開始》
――第19話・完――




