第16話 消えたくないエリア。
「ルーク」
第一世界のエリアが。
手を伸ばしている。
「私を」
声が震える。
「今度こそ」
涙が頬を伝う。
「助けて」
今のルークは。
動けなかった。
目の前にいる。
十六歳のエリア。
最初の世界。
自分が愛した少女。
自分が。
最後に。
この手で殺した少女。
「エリア……」
名前を呼ぶだけで。
喉が痛い。
第11話。
魂として現れたエリアは。
自分で蘇生を拒否した。
《私のために誰かが死ぬのは嫌》
《生きて》
そう言って。
消えた。
でも。
目の前のエリアは。
違う。
「助けて」
生きたい。
そう言っている。
同じエリア。
でも。
違う選択。
ルークの手が。
わずかに上がる。
「ルーク」
セシリアが呼ぶ。
その声で。
止まる。
「……」
「決めるのは」
セシリアは。
静かに言った。
「あなたじゃない」
ルーク。
彼女を見る。
「何?」
「エリア自身」
「でも」
「助けたいなら」
セシリア。
第一世界を見る。
「まず話を聞こう」
◇
第一世界。
光。
大きくなる。
景色。
飲み込まれる。
三人。
セシリア。
レオン。
ルーク。
次の瞬間。
立っていた。
王宮の庭。
暖かい。
春。
花。
咲いている。
鳥。
鳴いている。
遠く。
街。
人。
歩く。
子ども。
笑っている。
「これ……」
今のレオン。
周囲を見る。
「本当に」
今のセシリア。
胸。
痛む。
「世界だ」
記録。
だけじゃない。
人々がいる。
生活している。
呼吸している。
最初の世界。
星喰いが保存した。
失われた可能性。
正面。
四人。
待っている。
大人のレオン。
大人のセシリア。
エリア。
そして。
青年になったルーク。
◇
最初の世界のセシリア。
二十代後半。
銀色の髪。
長い。
王妃のドレス。
今の十三歳のセシリアを。
じっと見る。
「不思議」
「何が?」
「私が」
少し笑う。
「こんなに小さい」
今のセシリア。
「失礼ね」
大人のセシリア。
「私なんだけど」
「でも私は私」
「そうね」
二人。
少し。
笑う。
でも。
空気。
重い。
大人のレオン。
今のレオンを見る。
王冠。
身につけている。
「王位を捨てたらしいな」
十三歳のレオン。
「うん」
「簡単に言うな」
「簡単じゃなかった」
「国はどうする」
「これから考える」
大人のレオン。
眉間。
押さえる。
「十三歳とは思えない無責任さだ」
今のセシリア。
「私も少しそう思った」
今のレオン。
「味方してよ」
一瞬。
大人のセシリアが。
笑う。
その笑い声。
今のレオン。
止まる。
何か。
懐かしい。
知らないのに。
懐かしい。
◇
エリア。
ずっと。
ルークを見ている。
今のルークも。
同じ。
青年のルークが。
エリアの前。
立つ。
守るように。
「近づくな」
今のルーク。
「僕に?」
「そうだ」
「僕もルークだけど」
「だから余計に」
「何で?」
青年ルーク。
冷たい。
「お前は」
「……」
「エリアを一度」
「……」
「見捨てた」
今のルーク。
息。
止まる。
「違う!」
エリア。
青年の腕。
掴む。
「それは違う」
「でも」
「私が頼んだの」
「エリア」
「私が」
強く。
「殺してって言った」
青年ルーク。
黙る。
今のルーク。
胸。
痛む。
この世界。
まだ。
そこまで。
進んでいない?
いや。
この世界のエリア。
目。
赤くない。
星喰いの暴走前。
保存された地点が。
違う?
「今」
セシリア。
聞く。
「この世界はいつなの?」
大人のセシリア。
少し。
考える。
「あなたたちの時間で言えば」
「……」
「最初の世界が滅びる」
「……」
「三日前」
全員。
止まる。
「三日前?」
「ええ」
大人のレオン。
「君が死ぬ前」
今のセシリア。
「じゃあ」
「……」
「まだ」
大人のセシリア。
「私は生きている」
そして。
エリアも。
まだ。
星喰いに。
完全に飲まれていない。
この世界は。
滅びる直前の。
幸せ。
最後の三日間。
そこで。
止まっている。
◇
ノア。
小さな光。
現れる。
《第一世界》
《固定時間――滅亡3日前》
「固定?」
セシリア。
《はい》
「どういう意味?」
《第一世界は》
「……」
《同じ三日間を》
「……」
《繰り返している》
エリア。
顔。
伏せる。
ルーク。
「ずっと?」
ノア。
《はい》
「何回?」
《計測不能》
空気。
凍る。
大人のセシリア。
苦笑。
「朝になる」
「……」
「三日過ごす」
「……」
「そして」
大人のレオン。
続ける。
「また同じ朝に戻る」
「記憶は?」
「残る」
「全部?」
「全部」
今のルーク。
エリアを見る。
「じゃあ」
「……」
「君は」
エリア。
微笑む。
「何千回」
「……」
「何万回」
「……」
「同じ三日を生きたか」
首。
振る。
「もう分からない」
◇
今のセシリア。
胸。
締めつけられる。
消えたくない。
当たり前。
でも。
これは。
生きている?
同じ三日。
永遠。
進めない。
死ねない。
「だから」
エリア。
今のルークを見る。
「助けてほしい」
ルーク。
「何をすればいい」
即答。
セシリア。
「ルーク」
「話は聞いた」
「まだ」
「でも!」
ルーク。
振り向く。
「何万回だぞ!」
声。
震える。
「何万回も!」
「……」
「同じ三日を!」
エリア。
静かに。
「ルーク」
「もう」
今のルーク。
涙。
「十分だろ」
エリア。
「だから」
「……」
「助けて」
今のルーク。
近づく。
「どうしたい?」
セシリア。
その言葉を聞いて。
少し。
安心。
「消えたくない」
エリア。
答える。
「うん」
「でも」
「……」
「このままも嫌」
「じゃあ」
「未来がほしい」
その言葉。
全員。
黙る。
「四日目が」
エリア。
涙。
「ほしい」
◇
大人のレオン。
王冠。
外す。
手。
見る。
「私たちは」
「……」
「本物の未来を失った」
大人のセシリア。
「でも」
「……」
「ここに残った」
青年ルーク。
「最初は」
「……」
「それだけでよかった」
エリア。
「みんな一緒だったから」
でも。
一日。
二日。
三日。
戻る。
また。
一日。
二日。
三日。
何度も。
何度も。
死ぬはずの日。
来ない。
先。
ない。
子ども。
成長しない。
花。
枯れない。
新しい命。
生まれない。
「永遠」
セシリア。
呟く。
アルディオン。
求めたもの。
愛する人を。
失わない。
永遠。
でも。
「地獄だ」
レオン。
言う。
大人のレオン。
「ああ」
「失わないけど」
「……」
「増えもしない」
「そうだ」
大人のレオン。
王冠を見る。
「アルディオンが」
「……」
「欲しがったものを」
握る。
「私たちは」
「……」
「体験してしまった」
王冠。
地面。
置く。
「永遠は」
「……」
「生きることじゃない」
◇
セシリア。
ノアを見る。
「この世界を」
「……」
「核から切り離せない?」
ノア。
《不明》
「できる可能性は?」
《計算》
光。
明滅。
《第一世界保持エネルギー》
《星喰い核依存――100%》
「今のままじゃ」
ルーク。
「核を壊したら消える」
《はい》
「でも」
セシリア。
考える。
「依存先を変えれば?」
全員。
見る。
「何?」
レオン。
「星喰いの核じゃなく」
セシリア。
「この世界自身で」
「……」
「動けるようにする」
カイル。
ここには。
いない。
でも。
ノア。
契約そのもの。
「ノア」
《はい》
「世界って」
「……」
「何で存在してるの?」
《時間》
《記憶》
《生命》
《選択》
セシリア。
最後。
「選択?」
《はい》
ノア。
《未来とは》
「……」
《未確定の選択》
その言葉。
セシリア。
目。
見開く。
「じゃあ」
「……」
「この世界に足りないのは」
レオン。
気づく。
「未確定」
ルーク。
「全部決まってるから」
エリア。
「未来がない」
そう。
この世界。
三日。
全部。
固定。
誰が。
何をする。
全部。
決まっている。
「じゃあ」
セシリア。
「決められた三日から」
「……」
「一つでも」
大人のセシリア。
目。
開く。
「違うことをしたら?」
ノア。
《計算不能》
ルーク。
「それって」
セシリア。
笑う。
「可能性あるってこと」
◇
「何を変える」
大人のレオン。
今のセシリア。
「何でもいい?」
ノア。
《固定点》
文字。
現れる。
《第一日》
《朝食》
《正午――王国会議》
《夕刻――エリアとルーク庭園》
《第二日》
《王妃襲撃計画開始》
《第三日》
《セシリア暗殺》
「待って」
大人のセシリア。
顔。
青ざめる。
《第三日》
《セシリア暗殺》
今のセシリア。
彼女を見る。
「知らなかった?」
「……」
「私は」
大人のセシリア。
「三日目の夜を」
「……」
「覚えてない」
大人のレオン。
顔。
変わる。
「なぜ」
ノア。
《世界固定地点》
《暗殺直前》
つまり。
この世界。
セシリアが。
死ぬ直前。
巻き戻る。
大人のレオン。
毎回。
妻を。
失う直前まで。
行く。
そして。
戻る。
「だから」
彼。
苦笑。
「毎回」
「……」
「嫌な予感がするのか」
大人のセシリア。
手。
握る。
「あなた」
「大丈夫」
でも。
顔。
大丈夫ではない。
◇
今のセシリア。
「第三日まで」
「……」
「待たない」
全員。
見る。
「今日」
「……」
「変える」
エリア。
「何を?」
セシリア。
周囲。
見る。
第一日。
朝。
いつもなら。
家族。
朝食。
そのあと。
王国会議。
「会議」
大人のレオン。
「何?」
「行かないで」
「王として」
「今日は」
今のセシリア。
笑う。
「王様やめて」
大人のレオン。
「お前もか」
今のレオン。
「僕も言われた」
「血か?」
「たぶん」
二人。
少し。
笑う。
「でも」
大人のレオン。
「会議を欠席すれば」
「……」
「政治が」
大人のセシリア。
「何万回やったの?」
「……」
「会議」
レオン。
「覚えてない」
「じゃあ一回くらい」
大人のセシリア。
笑う。
「サボりましょう」
大人のレオン。
妻を見る。
長い。
沈黙。
そして。
「分かった」
◇
その瞬間。
世界。
揺れる。
ノア。
《固定行動からの逸脱》
《第一世界》
《再計算》
全員。
息。
止める。
《失敗》
「え?」
《固定力――強制修正》
大人のレオンの身体。
勝手に。
歩き始める。
「何!」
「足が!」
会議室。
方向。
「レオン!」
大人のセシリア。
腕。
掴む。
でも。
引きずられる。
「身体が」
「決められた動きに」
ノア。
《世界自身が》
「……」
《修正》
今のセシリア。
「じゃあ」
「……」
「意思だけじゃ変えられない」
◇
今のレオン。
大人の自分。
前。
立つ。
「止まって」
「無理だ!」
大人。
進む。
十三歳。
両手。
押す。
「僕が邪魔する!」
「お前」
「自分では止まれなくても」
「……」
「僕はこの世界の予定に入ってない!」
ノア。
《外部存在》
《修正対象外》
ルーク。
「それだ!」
今の三人。
この世界には。
本来。
いない。
だから。
予定を。
壊せる。
今のセシリア。
走る。
会議室。
扉。
前。
鍵。
かける。
「セシリア!」
大人のレオン。
「これで入れない!」
「幼稚すぎる!」
「方法選んでる暇ない!」
大人のレオン。
扉。
開けようとする。
開かない。
身体。
震える。
進みたい。
でも。
進めない。
世界。
揺れる。
《固定行動実行不能》
《再計算》
「来い」
ルーク。
今のレオン。
大人のレオン。
二人。
掴む。
逆方向。
引っ張る。
「何をする!」
「サボる!」
大人のレオン。
「王を何だと!」
今のレオン。
「未来の僕!」
「それが一番腹立つ!」
◇
そして。
予定では。
絶対に。
行かなかった場所。
四人。
いや。
七人。
王宮。
裏庭。
小さな池。
大人のセシリア。
エリア。
青年ルーク。
今の三人。
大人のレオン。
みんな。
並ぶ。
大人のレオン。
深い。
ため息。
「建国以来」
「……」
「会議を池でサボった王は」
「……」
「私が最初だろうな」
今のレオン。
「誇っていいと思う」
「思わない」
エリア。
笑う。
本当に。
笑う。
「お父様」
「何だ」
「楽しそう」
大人のレオン。
止まる。
「そう見えるか?」
「はい」
「……」
大人のセシリア。
夫を見る。
「私も」
「……」
「少し」
笑う。
「そう思う」
◇
ノア。
突然。
強く。
光る。
《第一世界》
《固定率》
《100%》
数字。
揺れる。
《99.9%》
「下がった!」
ルーク。
《99.4%》
《98.1%》
エリア。
「これ」
「……」
「変わってる?」
セシリア。
「うん!」
《95%》
《89%》
世界。
空。
色。
変わる。
今まで。
毎回。
同じ。
雲。
同じ。
風。
でも。
今。
雨。
一滴。
大人のセシリア。
手。
出す。
「雨?」
エリア。
「今日」
「……」
「雨の予定じゃない」
ノア。
《未確定事象発生》
《第一世界》
《未来生成》
全員。
息。
止まる。
「未来」
エリア。
涙。
出る。
「本当に?」
ノア。
《はい》
◇
しかし。
次の瞬間。
地面。
大きく。
揺れる。
《警告》
《核からの切離し開始》
《第一世界エネルギー不足》
「何!」
空。
亀裂。
入る。
建物。
薄く。
なる。
「消える?」
エリア。
セシリア。
「ノア!」
《未来生成には》
「……」
《独立した時間源が必要》
ルーク。
「どこから持ってくる!」
ノア。
《現世界》
全員。
止まる。
「今の世界?」
《はい》
セシリア。
嫌な予感。
「代価は?」
《時間》
「何年」
ノア。
《第一世界を完全独立させるため》
計算。
《現世界から》
《約300年》
「……」
全員。
固まる。
レオン。
「無理だ」
300年。
今の世界。
奪えば。
何が起きる?
《現世界寿命短縮》
「やっぱり」
セシリア。
拳。
握る。
また。
どちらか。
選べ。
過去か。
現在か。
でも。
今回は。
止まらない。
「他は?」
《なし》
「本当に?」
《現計算上》
「現計算」
セシリア。
考える。
過去七世界。
全部。
核。
時間。
保存。
時間。
そのもの。
「待って」
「何?」
ルーク。
「過去の世界」
「……」
「七つある」
「うん」
「第四」
解放。
第七。
解放。
二つ。
終わった。
でも。
その世界が。
使っていた。
時間。
エネルギー。
どこへ?
ノア。
沈黙。
「ノア」
《確認》
一拍。
《解放済み世界の時間源》
《核内残留》
セシリア。
「どれくらい?」
《第七世界――164年相当》
《第四世界――151年相当》
合計。
315年。
全員。
止まる。
ルーク。
「足りる」
セシリア。
「第一世界を」
「……」
「独立させられる」
大人のレオン。
「しかし」
「何?」
「その力は」
「……」
「彼らが生きた時間では?」
今のセシリア。
止まる。
それを。
使う。
ということ。
七回目。
第四世界。
消すのではなく。
解放。
した。
彼らの。
残した時間。
「勝手に」
セシリア。
首。
振る。
「使いたくない」
ルーク。
「でも」
「聞く」
「誰に?」
ノア。
見る。
「七回目と」
「……」
「第四世界のルークに」
ノア。
《解放済み》
「完全には?」
《記憶保存》
セシリア。
「なら」
「……」
「聞いて」
◇
光。
二つ。
現れる。
薄い。
姿。
七回目のセシリア。
第四世界のルーク。
「また?」
第四ルーク。
「もう休ませてくれよ」
今のルーク。
「ごめん」
七回目。
「何?」
今のセシリア。
事情。
話す。
第一世界。
未来。
作れる。
でも。
時間。
必要。
解放された。
二世界。
残った時間。
使えば。
独立。
できる。
「勝手に」
セシリア。
「使いたくない」
七回目。
少し。
驚く。
そして。
笑う。
「何で笑うの」
「八回目の私は」
「……」
「本当に面倒ね」
「あなたでしょう!」
「だから」
七回目。
第一世界。
見る。
大人のセシリア。
エリア。
家族。
そして。
「使って」
今のセシリア。
「本当に?」
「ええ」
「でも」
「私の世界の時間が」
七回目。
笑う。
「誰かの未来になるなら」
「……」
「それ以上」
「……」
「何に使うの?」
涙。
出る。
第四世界のルーク。
「僕も」
今のルーク。
「いいの?」
「条件」
「何?」
第四。
エリア。
見る。
「幸せにしろ」
青年ルーク。
一歩。
「俺がする」
第四世界。
彼を見る。
そして。
笑う。
「頼んだ」
◇
ノア。
《同意確認》
《第七世界――同意》
《第四世界――同意》
《時間源転送》
二つの光。
第一世界へ。
流れる。
空。
亀裂。
閉じる。
雨。
強くなる。
でも。
誰も。
逃げない。
みんな。
雨。
浴びる。
エリア。
両手。
広げる。
「雨……」
「冷たい?」
ルーク。
「冷たい!」
笑う。
「こんなに」
「……」
「嬉しい雨」
「……」
「初めて」
ノア。
《第一世界固定解除》
《独立時間軸生成》
《完了》
そして。
《第一世界》
《存続》
エリア。
泣き。
笑う。
大人のセシリア。
大人のレオン。
抱き合う。
青年ルーク。
エリア。
手。
握る。
今のルーク。
その姿。
見る。
胸。
痛い。
でも。
前ほど。
苦しくない。
◇
「ルーク」
エリア。
今のルークを呼ぶ。
「うん」
「ありがとう」
「僕」
「……」
「何もしてない」
「来てくれた」
「……」
「それだけで」
エリア。
笑う。
「十分」
今のルーク。
涙。
落ちる。
「僕が」
「何?」
「知ってるエリアは」
「……」
「戻らないって」
「うん」
「君は」
「……」
「生きたいって」
「うん」
「同じなのに」
「違う?」
「うん」
エリア。
「それでいいんじゃない?」
今のルーク。
見る。
「人は」
エリア。
「同じ人でも」
「……」
「違う選択をするよ」
「……」
「違う日を生きたら」
「……」
「違う未来になる」
ルーク。
「だから」
「……」
「君は君?」
「うん」
「第11話の」
「……」
「エリアも?」
「その子も」
「……」
「その子」
エリア。
少し。
嫉妬。
「愛してた?」
ルーク。
止まる。
そして。
笑う。
「愛してる」
エリア。
少し。
寂しい。
でも。
笑う。
「そっか」
「ごめん」
「謝らないで」
今のルーク。
「君のことも」
「……」
「大切」
エリア。
「それでいい」
◇
大人のレオン。
今のレオン。
向き合う。
「十三歳」
「何?」
「セシリアを」
「……」
「泣かせるな」
今のレオン。
「努力する」
「努力では足りん」
「重いな未来の僕」
「あと」
「何」
大人。
真剣。
「トマトは」
「……」
「食べろ」
今のレオン。
顔。
嫌そう。
「それは嫌」
エリア。
「お父様!」
大人。
「ほら」
今のセシリア。
笑う。
「やっぱり嫌いなんだ」
「そこ重要?」
◇
大人のセシリア。
今のセシリア。
抱きしめる。
「ありがとう」
「ううん」
「あなたが来なかったら」
「……」
「私たちは」
「……」
「永遠を生きてるつもりで」
「……」
「ずっと止まってた」
今のセシリア。
「これから」
「ええ」
「怖い?」
大人。
笑う。
「すごく」
明日。
未知。
老いる。
病気。
死。
全部。
戻ってくる。
でも。
「楽しみ」
大人のセシリア。
言う。
「四日目が」
今のセシリア。
笑う。
「きっと」
「……」
「普通の日だよ」
「それが」
「……」
「一番いい」
◇
ノア。
《第一世界接続終了》
景色。
薄くなる。
エリア。
手。
振る。
「ルーク!」
「うん!」
「幸せになって!」
「君も!」
「お母様!」
「何!」
「今度は」
笑う。
「自分の人生も生きて!」
セシリア。
胸。
熱い。
「分かった!」
「お父様!」
レオン。
「何?」
「トマト!」
「嫌!」
最後。
全員。
笑う。
そして。
第一世界。
遠くなる。
消えない。
別れる。
だけ。
◇
気づくと。
星喰いの内部。
白い空間。
戻っていた。
七つ。
世界。
残り。
第一。
独立。
第四。
解放。
第七。
解放。
残り。
第二。
第三。
第五。
第六。
四つ。
《契約再構築率》
《74%》
動く。
《79%》
《84%》
「上がった」
セシリア。
「第一世界を消さなくても」
ノア。
《はい》
《過去世界》
《必ずしも消去不要》
ルーク。
「じゃあ」
「……」
「残りも」
セシリア。
「本人たちが」
「……」
「選べる」
ノア。
《はい》
レオン。
「これなら」
少し。
笑う。
「誰も犠牲にしなくていい」
しかし。
ノア。
光。
突然。
赤く。
変わる。
《警告》
三人。
「……」
また。
セシリア。
「今度は何」
《現世界》
「今の世界?」
《重大異常》
《時間停止解除》
セシリア。
顔。
変わる。
アルディオンを。
分離したあと。
停止していた。
残り時間。
再び。
動く?
《現世界死亡カウント再開》
文字。
浮かぶ。
《残り》
《23時間59分》
「……一日?」
ルーク。
「三日じゃ」
ノア。
《時間源移動により》
《現世界と過去世界の同期崩壊》
「何それ!」
《核崩壊加速》
そして。
《残る四世界》
《24時間以内に処理不能の場合》
《全時間軸》
《崩壊》
レオン。
顔。
青ざめる。
「全部?」
ノア。
《はい》
第一世界。
せっかく。
未来。
作った。
それも。
今の世界も。
全部。
消える。
セシリア。
拳。
握る。
「あと四つ」
ルーク。
「一世界六時間」
「できる」
レオン。
「本当に?」
「できる」
いつもの。
根拠。
ない。
でも。
今回は。
二人とも。
反論しなかった。
その瞬間。
四つの光。
一つ。
前へ。
《第二世界》
景色。
開く。
王宮ではない。
戦場。
炎。
死体。
叫び声。
そして。
中央。
一人。
立つ。
銀髪。
セシリア。
でも。
その手。
剣。
血。
足元。
倒れている。
レオン。
「……」
今のセシリア。
息。
止まる。
第二世界のセシリア。
こちらを見る。
瞳。
冷たい。
そして。
言った。
「遅かったわね」
剣。
レオンの胸から。
引き抜く。
血。
飛ぶ。
「私は」
笑う。
「この世界を」
「……」
「絶対に残さない」
今のセシリア。
「え?」
第二世界のセシリア。
血まみれの剣。
自分の首元へ。
向ける。
「私たちごと」
「……」
「全部」
涙。
一筋。
「消して」
――第16話・完――




