第15話 消えたくないルーク。
「悪いけど」
第四世界のルークは。
剣先を向けたまま。
冷たく笑った。
「俺は」
「……」
「消えるつもりはない」
今のルークは。
何も言えなかった。
目の前にいる。
自分。
十六歳ではない。
二十代。
少し伸びた黒髪。
左頬。
大きな傷。
灰色の瞳。
でも。
一番違うのは。
目。
冷たい。
疲れている。
何かを。
全部。
諦めた人間の目。
「君が」
今のルーク。
ゆっくり。
「第四世界の僕?」
「そうだ」
「じゃあ」
「……」
「エリアは?」
第四世界のルーク。
表情。
動かない。
「いない」
その一言。
今のルークの。
胸に。
刺さる。
「死んだ?」
「生まれてない」
「……」
「第四世界では」
過去のルーク。
剣。
少し。
下げる。
「レオンとセシリアは」
「……」
「エリアが生まれる前に終わった」
セシリア。
胸。
苦しくなる。
第四世界。
初めて。
自分が。
レオンを殺した世界。
七回目のセシリアが。
話していた。
レオン自身が。
《殺してくれ》
と頼んだ。
そして。
セシリアが。
殺した。
「そのあと」
セシリア。
聞く。
「どうなったの?」
第四世界のルーク。
彼女を見る。
冷たい目。
「知りたい?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
ルーク。
少し。
笑う。
「じゃあ」
「……」
「見せてやる」
◇
世界。
変わる。
王宮。
夜。
雨。
廊下。
セシリア。
レオン。
十八歳。
今より。
少し大人。
床。
血。
レオン。
胸。
短剣。
刺さっている。
セシリアの手。
血。
染まっている。
「レオン!」
今のセシリア。
思わず。
叫ぶ。
でも。
届かない。
記憶。
だから。
第四世界のレオン。
苦しそうに。
笑う。
《ありがとう》
セシリア。
泣く。
《嫌》
《嫌よ》
《死なないで》
レオン。
手。
伸ばす。
彼女の頬。
触る。
《これで》
《君は生きられる》
《世界も》
セシリア。
首。
振る。
《あなたがいない》
《それでも》
《生きて》
そして。
レオン。
目。
閉じる。
◇
世界。
進む。
葬儀。
黒い服。
セシリア。
立つ。
表情。
ない。
一週間。
一か月。
一年。
彼女。
笑わない。
誰とも。
話さない。
ただ。
毎日。
レオンの墓。
行く。
「……」
今のセシリア。
何も。
言えない。
第四世界のルーク。
隣。
立つ。
「あれから」
「……」
「彼女は」
「……」
「生きてはいた」
声。
冷たい。
「でも」
「……」
「あれを」
セシリア。
胸。
痛む。
「生きてるって」
ルーク。
言う。
「言えるか?」
◇
場面。
変わる。
ルーク。
若い。
十七歳。
セシリア。
墓地。
座る。
《帰ろう》
ルーク。
言う。
セシリア。
首。
振る。
《まだ》
《雨降ってる》
《いい》
《風邪引く》
《いい》
《死ぬぞ》
セシリア。
少し。
笑う。
《それなら》
《……》
《それでもいい》
今のルーク。
目。
閉じる。
「僕が」
「……」
「そばにいた?」
第四世界。
「毎日」
「……」
「ずっと」
「セシリアを?」
「そう」
今のセシリア。
「なんで」
第四世界のルーク。
彼女を見る。
「分からない?」
「……」
「俺は」
一拍。
「セシリアを好きになった」
今のルーク。
顔。
固まる。
「僕が?」
「お前じゃない」
即答。
「俺だ」
「でも」
「エリアが」
「生まれてない」
「……」
「俺は」
第四世界。
「エリアを知らない」
空気。
止まる。
そうだ。
最初の世界。
ルーク。
エリア。
婚約。
愛した。
でも。
第四世界。
エリア。
生まれていない。
なら。
別の人生。
別の感情。
あっても。
おかしくない。
「セシリアは?」
今のルーク。
聞く。
第四世界。
笑う。
「一度も」
「……」
「俺を見なかった」
声。
ほんの少し。
揺れる。
「最後まで」
◇
記憶。
進む。
二十一歳。
セシリア。
病室。
細い。
身体。
レオン。
死。
三年。
心。
壊れたまま。
食べない。
眠れない。
病気。
ルーク。
手。
握る。
《お願いだから》
《……》
《生きて》
セシリア。
ゆっくり。
目。
開く。
《ルーク》
《いる》
《ずっといる》
セシリア。
少し。
笑う。
《ありがとう》
ルーク。
涙。
《だったら》
《……》
《生きてよ》
セシリア。
首。
振る。
《もう》
《……》
《疲れた》
《僕がいる》
《うん》
《僕じゃ駄目?》
沈黙。
長い。
セシリア。
優しく。
《ごめんね》
ルーク。
顔。
崩れる。
そして。
その夜。
セシリア。
死ぬ。
◇
今のセシリア。
涙。
落ちる。
「私」
声。
出ない。
第四世界のルーク。
冷たい。
「レオンを殺したあと」
「……」
「三年で死んだ」
「病気?」
「半分」
「半分?」
「生きることを」
「……」
「諦めた」
今のレオン。
顔。
青い。
「僕が」
「違う」
第四世界のルーク。
鋭く。
「お前じゃない」
今のレオン。
止まる。
「あいつが選んだ」
「……」
「第四世界のレオンが」
剣。
握る。
「セシリアに自分を殺させた」
今のレオン。
「……」
「そして」
第四世界。
声。
低くなる。
「セシリアまで壊した」
◇
今のルーク。
ようやく。
分かる。
「だから」
「……」
「消えたくない?」
第四世界。
「違う」
「じゃあ?」
「俺は」
剣。
向け直す。
「この世界を」
「……」
「消させない」
「どうして」
「セシリアが」
「……」
「ここにいるから」
今のセシリア。
「私?」
「お前じゃない」
また。
同じ。
「俺のセシリア」
「……」
「第四世界の」
「でも」
セシリア。
「死んだんでしょう?」
第四世界。
「核の中では」
「……」
「残ってる」
セシリア。
息。
止まる。
「会えるの?」
「毎日」
第四世界。
初めて。
少し。
笑う。
「ここでは」
「……」
「生きてる」
◇
世界。
再び。
変わる。
小さな家。
窓。
花。
庭。
そこ。
セシリア。
二十一歳。
元気。
料理。
している。
ルーク。
帰る。
《ただいま》
セシリア。
笑う。
《おかえり》
今のセシリア。
固まる。
「これは」
第四世界。
「核が作った」
「……」
「もう一つの可能性」
「本当の過去じゃない」
「分かってる」
「じゃあ」
「それでも」
第四世界。
彼女。
見つめる。
「俺にとっては」
「……」
「本物だ」
今のルーク。
「違う」
即答。
過去。
振り向く。
「何が違う」
「それは」
今のルーク。
声。
震える。
「君が欲しかったセシリアだ」
「だから?」
「本人じゃない」
剣。
一瞬。
揺れる。
「黙れ」
「第四世界のセシリアは」
「黙れ」
「君を選ばなかった」
「黙れ!」
剣。
振る。
今のルーク。
受ける。
金属。
音。
響く。
◇
「ルーク!」
セシリア。
叫ぶ。
でも。
二人。
同じ。
技。
同じ。
動き。
剣。
何度も。
ぶつかる。
第四世界。
強い。
今のルーク。
押される。
「分かってる!」
第四世界。
叫ぶ。
「偽物だって!」
剣。
振る。
「本当のセシリアは!」
「……」
「俺を愛さなかった!」
「分かってるなら!」
「それでも!」
剣。
ぶつかる。
「毎朝!」
「……」
「笑ってくれる!」
「……」
「名前を呼んでくれる!」
「……」
「俺を待ってくれる!」
第四世界。
涙。
「それの何が悪い!」
今のルーク。
止まる。
一瞬。
剣。
首。
寸前。
止まる。
第四世界。
息。
荒い。
「お前には」
「……」
「エリアがいた」
「……」
「今の世界にも」
「……」
「仲間がいる」
「……」
「俺には」
声。
震える。
「何もない」
◇
今のルーク。
剣。
下ろす。
「そうだね」
「……」
第四世界。
「哀れむな」
「哀れんでない」
「じゃあ何だ」
「分かる」
「分かるわけない!」
「分かるよ!」
今のルーク。
叫ぶ。
「僕だって!」
拳。
握る。
「エリアを」
「……」
「偽物でもいいから!」
「……」
「もう一回会いたいって」
声。
震える。
「何度思ったか分からない!」
第四世界。
止まる。
「カイルに」
「……」
「エリアを戻せるって言われた」
「……」
「僕も」
「……」
「一瞬」
涙。
「全部捨ててもいいって思った!」
セシリア。
胸。
痛む。
今のルーク。
続ける。
「でも」
「……」
「エリアが」
「……」
「自分で拒否した」
「……」
「戻らないって」
第四世界。
「馬鹿だ」
「うん」
「それでいいのか」
「よくない」
「じゃあ」
「でも」
今のルーク。
胸。
押さえる。
「好きだから」
「……」
「本人が選んだことを」
「……」
「最後は受け入れたい」
第四世界。
剣。
下がる。
「俺には」
「……」
「できない」
「うん」
「無理だ」
「分かる」
「毎日」
第四世界。
声。
子ども。
みたいになる。
「セシリアがいるんだ」
「……」
「朝起きたら」
「……」
「隣に」
「……」
「笑って」
「……」
「ルークって」
顔。
歪む。
「呼んでくれるんだ」
今のルーク。
何も。
言えない。
◇
そのとき。
家。
扉。
開く。
第四世界のセシリア。
出てくる。
「ルーク?」
過去のルーク。
振り向く。
顔。
一瞬。
明るくなる。
「セシリア」
彼女。
近づく。
今の。
セシリア。
レオン。
ルーク。
見る。
「お客さん?」
第四世界。
「違う」
声。
焦る。
「中へ」
「でも」
「いいから!」
セシリア。
止まる。
そして。
第四世界のルークを。
じっと見る。
「何か」
「……」
「隠してる?」
「何も」
「嘘」
第四世界。
顔。
歪む。
「お願いだから」
「……」
「今は」
「ルーク」
彼女。
手。
頬。
触れる。
「泣いてる」
第四世界。
気づく。
涙。
出ている。
「……」
「どうしたの?」
その優しい。
声。
余計。
壊れる。
「セシリア」
彼女。
「うん」
「俺を」
「……」
「好き?」
全員。
止まる。
第四世界のセシリア。
微笑む。
「もちろん」
ルーク。
嬉しそう。
でも。
その瞬間。
今のセシリア。
気づく。
ノア。
光。
赤い。
《警告》
《擬似人格》
《記憶整合性――異常》
「ルーク!」
今のセシリア。
「その子!」
第四世界。
睨む。
「黙れ」
「本当のセシリアじゃない!」
「黙れ!」
「核が」
「知ってる!」
叫ぶ。
「知ってるって言っただろ!」
第四世界のセシリア。
首。
傾げる。
「私が」
「……」
「本物じゃない?」
第四世界。
「違う!」
振り向く。
「セシリアは」
「……」
「セシリアだ」
女性。
自分の手。
見る。
「でも」
「……」
「私」
顔。
変わる。
「思い出せない」
「何を」
「昨日」
第四世界。
固まる。
「昨日?」
「私」
女性。
周囲。
見る。
「昨日」
「……」
「何してた?」
「家にいた」
「何を?」
「料理」
「何を作った?」
「……」
答え。
出ない。
女性。
胸。
押さえる。
「私」
「……」
「何歳?」
第四世界。
「二十一」
「誕生日は?」
「五月九日」
「じゃあ」
「……」
「お母様の名前は?」
第四世界。
止まる。
女性。
目。
見開く。
「分からない」
「……」
「私」
涙。
「何も」
「……」
「分からない」
◇
ノア。
《擬似人格崩壊開始》
第四世界。
「やめろ」
「ルーク」
女性。
怖がる。
「私」
「大丈夫!」
抱く。
「大丈夫だから!」
「消えるの?」
「消えない!」
「私」
「絶対!」
「本物じゃないの?」
第四世界。
「本物だ!」
「でも」
「俺が!」
涙。
「俺が本物だって言ったら!」
「……」
「本物なんだ!」
女性。
静か。
彼を見る。
そして。
泣きながら。
笑う。
「ルーク」
「何?」
「ありがとう」
「何で」
「私を」
「……」
「好きでいてくれて」
第四世界。
血の気。
引く。
「やめろ」
「嬉しかった」
「やめろ」
「でも」
女性。
手。
彼の頬。
「もう」
「やめろ!」
「休んで」
第四世界。
「嫌だ!」
「ずっと」
「……」
「一人で」
「……」
「寂しかったでしょう?」
「違う!」
「ごめんね」
「謝るな!」
女性。
身体。
光。
崩れ始める。
「セシリア!」
「ルーク」
「消えるな!」
「今度は」
「……」
「私じゃなくて」
笑う。
「あなたが生きて」
第四世界。
完全に。
泣く。
「嫌だ」
「お願い」
「嫌だ!」
「あなたは」
「……」
「まだ」
最後。
「生きてるから」
光。
消える。
家。
庭。
花。
全部。
同時に。
崩れる。
◇
第四世界。
膝。
つく。
何も。
なくなる。
白い。
空間。
一人。
「……また」
呟く。
「また」
拳。
地面。
叩く。
「俺だけ」
一回。
「残った」
二回。
「また」
血。
出る。
「置いていかれた」
今のルーク。
近づく。
何も。
言わず。
隣。
座る。
第四世界。
「来るな」
「嫌」
「慰めるな」
「慰めない」
「じゃあ何」
今のルーク。
前。
見る。
「一緒にいる」
第四世界。
「いらない」
「僕がいる」
「お前は消えない」
「うん」
「俺は消える」
「まだ」
「消えるんだろ!」
今のルーク。
強く。
「終わるんだ」
「同じだ!」
「違う」
「何が違う!」
「君は」
今のルーク。
彼を見る。
「消されるんじゃない」
「……」
「選べる」
第四世界。
止まる。
「残るか」
「……」
「終わるか」
「……」
「君が決めていい」
第四世界。
笑う。
「選べる?」
「うん」
「残ったら?」
ノア。
《第四世界保存》
《星喰い契約再構築――停止》
つまり。
全部。
止まる。
今のルーク。
嘘。
つかない。
「僕たちは」
「……」
「先に進めない」
第四世界。
「じゃあ」
「……」
「俺が残れば」
「……」
「お前たちもここに?」
「たぶん」
セシリア。
一歩。
前。
「それでも」
「……」
「無理やり消したくない」
第四世界。
彼女を見る。
「俺が」
「……」
「お前たちを道連れにしても?」
セシリア。
少し。
怖い。
でも。
「選ぶのは」
「……」
「あなた」
◇
長い。
沈黙。
第四世界。
「馬鹿だな」
今のルーク。
「よく言われる」
セシリア。
「私も」
レオン。
「僕も最近」
第四世界。
少し。
笑う。
「変な三人」
ルーク。
「君も僕だけどね」
「それが一番嫌だ」
少し。
本当に。
笑った。
そして。
立つ。
剣。
見る。
「俺は」
「……」
「ずっと」
「……」
「誰かに選んでほしかった」
セシリア。
「何を?」
「生きていいって」
「……」
「セシリアに」
「……」
「選んでほしかった」
苦笑。
「でも」
「……」
「あいつは最後まで」
「……」
「レオンだった」
レオン。
目。
伏せる。
第四世界。
「お前を責めてるわけじゃない」
「うん」
「いや」
考える。
「少し責めてる」
レオン。
「少しなら」
「かなり」
「どっち?」
第四世界。
笑う。
「でも」
「……」
「もういい」
◇
ノア。
《選択確認》
《第四世界を保存しますか》
《はい》
《いいえ》
第四世界のルーク。
文字。
見る。
そして。
今のルークへ。
「一つ」
「何?」
「エリア」
「……」
「どんな子?」
今のルーク。
驚く。
「聞きたい?」
「ああ」
今のルーク。
少し。
笑う。
「よく笑う」
「うん」
「怒るとセシリアそっくり」
セシリア。
「またそれ?」
「本当」
「他は?」
「トマト嫌い」
レオン。
「僕のせいらしい」
第四世界。
「で」
「……」
「君を」
今のルーク。
声。
柔らかい。
「すごく愛してた」
第四世界。
顔。
少し。
歪む。
「いいな」
「うん」
「羨ましい」
「うん」
「でも」
第四世界。
笑う。
「俺は」
「……」
「俺のセシリアが好きだった」
「うん」
「選んでもらえなかったけど」
「うん」
「それでも」
胸。
手。
「好きだった」
今のルーク。
「それでいいと思う」
「そうか」
「うん」
◇
第四世界。
選択。
手。
伸ばす。
《いいえ》
押す。
ノア。
《第四世界》
《保存を拒否》
《解放処理開始》
世界。
光。
なる。
第四世界のルーク。
身体。
少しずつ。
消える。
「怖い」
声。
正直。
「うん」
今のルーク。
手。
伸ばす。
「怖いよな」
第四世界。
手。
取る。
同じ。
手。
「最後まで」
「……」
「いてくれる?」
今のルーク。
「いる」
「セシリア」
今の。
セシリア。
「いるよ」
「レオン」
「いる」
第四世界。
三人。
見る。
「俺」
涙。
少し。
「生きた?」
セシリア。
即答。
「生きた」
ルーク。
「ちゃんと」
レオン。
「最後まで」
第四世界。
笑う。
「そっか」
身体。
光。
なる。
最後。
今のルーク。
見る。
「エリアに」
「……」
「もし」
「うん」
「また会えたら」
「何?」
「幸せになれって」
今のルーク。
涙。
「伝える」
「あと」
「何?」
少し。
悪戯っぽい。
「第四世界の俺の方が」
「……」
「お前より男前だったって」
今のルーク。
「それは絶対言わない」
第四世界。
笑う。
その笑顔。
初めて。
今のルークと。
同じ。
「じゃあな」
「うん」
「また」
今のルーク。
言う。
「どこかで」
第四世界。
「……ああ」
消える。
◇
《第四世界》
《解放完了》
七つ。
あった光。
第七。
第四。
二つ。
消えた。
残り。
五つ。
でも。
ノア。
突然。
強く。
震える。
《警告》
セシリア。
「また?」
《過去世界連鎖反応》
「何それ」
残り。
五つの光。
同時。
揺れる。
《第二世界》
《第三世界》
《第五世界》
《第六世界》
《第一世界》
すべて。
赤。
ルーク。
「全部?」
レオン。
「第四が消えたから?」
ノア。
《違う》
「じゃあ」
《彼らが》
「……」
《気づいた》
セシリア。
「何に?」
《自分たちが》
「……」
《過去であること》
空気。
冷える。
そして。
五つの世界。
声。
同時。
響く。
《消えたくない》
《私たちも》
《生きている》
《なぜ》
《八回目だけ》
《未来を持てる》
セシリア。
胸。
痛い。
分かる。
分かってしまう。
七回目。
受け入れた。
第四世界。
最後。
受け入れた。
でも。
残り。
全員が。
そうとは。
限らない。
そのとき。
一つ。
第一世界。
最初の世界。
光。
巨大。
なる。
中。
王宮。
家族。
大人のセシリア。
大人のレオン。
そして。
十六歳のエリア。
三人。
並んでいる。
ルーク。
息。
止まる。
「エリア……」
でも。
彼女の隣。
もう一人。
少年。
いや。
青年。
第四世界ではない。
最初の世界の。
ルーク。
そして。
全員。
こちらを見る。
最初の世界のレオン。
前へ。
一歩。
「八回目」
今のレオン。
顔。
上げる。
最初のレオン。
王冠。
被っている。
「俺たちは」
低い。
声。
「お前たちに」
「……」
「消されるために」
赤い瞳。
開く。
「生きたわけじゃない」
最初の世界のセシリア。
今のセシリアを見る。
悲しい。
でも。
強い目。
「私たちは」
「……」
「この世界を」
その隣。
エリア。
「残したい」
ルーク。
何も。
言えない。
エリア。
彼を見る。
微笑む。
「久しぶり」
今のルーク。
声。
震える。
「……エリア」
彼女。
笑う。
でも。
その笑顔。
第11話で。
別れた。
エリアとは。
違う。
このエリアは。
消えたくない。
生きたい。
そう。
はっきり。
望んでいる。
「ルーク」
彼女。
手。
伸ばす。
「私を」
「……」
「今度こそ」
涙。
「助けて」
――第15話・完――




