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10/20

第10話 王冠を捨てた王子。

《王位継承完了まで》


《59分58秒》


《星喰い進行率 99%》


あと一時間。


たった。


一時間。


その時間が過ぎれば。


レオンは王になる。


そして。


星喰いが完成する。


「急いで!」


セシリアは。


馬車が完全に止まる前に。


扉へ手をかけた。


「待て!」


父の声。


「危険だ!」


「待ってたら間に合わない!」


北の離宮から。


王都までは。


通常なら二時間。


だが。


馬を何度も替え。


休まず走らせ。


一時間ほどで。


王宮近くまで戻ってきた。


それでも。


《王位継承完了まで》


《18分42秒》


もう。


時間がない。


「セシリア!」


ルークも。


馬から飛び降りる。


「僕も行く!」


「王妃様は?」


「公爵閣下の兵が医師を呼んだ!」


「助かる?」


ルークの表情が。


一瞬。


曇る。


「分からない」


セシリア。


唇を噛む。


王妃エレノア。


《死亡まで、あと1時間41分》


まだ。


死の表示は。


消えていない。


助けたい。


でも。


今は。


レオン。


彼を王にしてはいけない。


「行こう」


二人は。


王宮へ走った。


◇


王宮。


異様だった。


国王崩御。


王位継承。


通常なら。


何日も。


いや。


何週間もかけて。


葬儀。


議会。


即位準備。


すべてを行う。


なのに。


今回は違う。


宮殿中。


鐘。


鳴り続け。


廊下には。


儀礼服を着た騎士。


神官。


大臣。


全員。


何かに操られているように。


同じ方向へ。


歩いている。


玉座の間。


「おかしい」


ルーク。


立ち止まる。


「何が?」


「こんなに早く即位するはずない」


「私もそう思う」


「誰かが」


ルーク。


周囲。


見回す。


「王国法を」


「……」


「強制的に動かしてる」


セシリア。


「カイル?」


「たぶん」


その瞬間。


前。


騎士。


数人。


道。


塞ぐ。


「ここから先は」


「……」


「王族以外立入禁止です」


セシリア。


「私はアルフォード公爵令嬢よ」


「お通しできません」


「王太子殿下に用があります」


「お通しできません」


同じ。


声。


同じ。


表情。


「操られてる」


ルーク。


小声。


セシリア。


騎士の目。


見る。


焦点。


合ってない。


「どうする?」


ルーク。


剣。


抜く。


「強行突破」


「殺さないでよ」


「分かってる」


騎士。


動く。


ルーク。


一歩。


前。


だが。


その前に。


セシリアが。


手。


上げる。


「待って」


「何?」


「私がやる」


「何を」


セシリア。


騎士。


見る。


大きく。


息。


吸う。


「アルフォード公爵家の名において命じます!」


王宮。


廊下。


声。


響く。


「そこを退きなさい!」


騎士。


一瞬。


止まる。


「……」


ルーク。


「効いた?」


「分からない」


騎士。


ゆっくり。


頭。


押さえる。


「アル……フォード」


もう一人。


「公爵家……」


セシリア。


さらに。


「あなたたちは王国の騎士です!」


「……」


「誰かの人形じゃない!」


騎士。


目。


少し。


戻る。


「殿下を守りなさい!」


その瞬間。


黒い煙のようなもの。


騎士の身体から。


抜ける。


全員。


膝。


つく。


ルーク。


目。


見開く。


「今の」


セシリア。


「何?」


「アルフォードの力だ」


「え?」


「王家の暴走を鎮める血」


ルーク。


セシリアを見る。


「君にもある」


自分。


知らない。


力。


でも。


今は。


そんなこと。


考えてる暇。


ない。


《王位継承完了まで》


《12分08秒》


「走るよ!」


◇


玉座の間。


巨大な扉。


閉まっている。


中。


祈りの声。


神官たち。


そして。


聞こえる。


「レオン・アストレア殿下」


「……」


「王冠をお受けください」


セシリア。


扉。


叩く。


「レオン!」


反応なし。


「レオン!」


ルーク。


「下がって!」


剣。


振る。


だが。


扉。


黒い光。


弾く。


「くそ!」


「開かない?」


「結界だ!」


「じゃあ」


セシリア。


扉。


触れる。


その瞬間。


黒い光。


腕。


走る。


「っ!」


「セシリア!」


痛い。


でも。


手。


離さない。


「レオン!」


呼ぶ。


「聞こえるでしょう!」


◇


玉座の間。


レオン。


王冠。


目の前。


カイル。


微笑む。


「殿下」


「……」


「これを被れば」


「……」


「すべてが終わります」


「何が」


「不安も」


「……」


「恐怖も」


「……」


「喪失も」


カイル。


王冠。


持つ。


「王となれば」


「……」


「この国すべてがあなたのもの」


レオン。


「いらない」


「では」


カイル。


少し。


笑う。


「セシリア様は?」


レオン。


目。


動く。


「彼女も」


「……」


「あなたのものになります」


「セシリアは物じゃない」


「もちろん」


「……」


「ですが」


カイル。


近づく。


「誰にも奪われなくなる」


黒い影。


王冠。


這う。


「死にも」


「……」


「時間にも」


「……」


「運命にも」


レオン。


息。


荒くなる。


セシリア。


死ぬ。


何度も。


夢。


見る。


処刑台。


血。


棺。


消えていく。


「王になれば」


カイル。


耳元。


「彼女を永遠に生かせます」


レオン。


「……本当?」


「はい」


「絶対?」


「絶対です」


カイル。


笑う。


「あなたが」


「……」


「世界そのものになれば」


王冠。


レオンの頭へ。


近づく。


その瞬間。


遠く。


「レオン!」


声。


レオン。


目。


見開く。


「セシリア?」


カイル。


表情。


初めて。


歪む。


「聞くな」


「今」


「幻です」


「……」


「彼女はここにはいない」


「レオン!」


また。


声。


レオン。


王冠から。


一歩。


離れる。


「いる」


カイル。


「いません」


「いる!」


◇


扉。


黒い結界。


セシリア。


両手。


押し当てる。


痛み。


皮膚。


焼ける。


「セシリアやめろ!」


ルーク。


腕。


掴む。


「手が!」


「離さない!」


「火傷する!」


「どうでもいい!」


「よくない!」


「あと何分!」


《王位継承完了まで》


《8分11秒》


「八分!」


セシリア。


叫ぶ。


「レオン!」


黒い結界。


さらに。


強く。


手。


血。


滲む。


「お願い!」


「……」


「聞こえてるなら!」


光。


揺れる。


「王冠を被らないで!」


◇


レオン。


王冠。


見る。


カイル。


見る。


「セシリアが」


「……」


「被るなって言ってる」


「殿下」


「僕は」


「王になるべきです」


カイル。


強く。


「それがあなたの運命」


レオン。


「運命」


「はい」


「運命って」


レオン。


ゆっくり。


王冠を見る。


「絶対?」


カイル。


「当然です」


レオン。


少し。


笑う。


「セシリアは」


「……」


「未来を変えたよ」


カイル。


顔。


止まる。


「矢も」


「……」


「毒も」


「……」


「僕の呪いも」


レオン。


青い目。


「何度も」


「……」


「変えた」


カイル。


「それは一時的な」


「だったら」


レオン。


王冠。


手に取る。


カイル。


笑み。


戻る。


しかし。


次の瞬間。


レオン。


王冠。


床へ。


叩きつけた。


ガァン!


玉座の間。


音。


響く。


「僕は」


カイル。


目。


見開く。


「王にならない」


◇


《王位継承完了まで》


《6分43秒》


突然。


数字。


止まる。


セシリア。


「……?」


一秒。


二秒。


減らない。


《6分43秒》


固定。


ルーク。


「何が?」


「止まった」


「何が!」


「カウントが!」


その瞬間。


扉。


黒い結界。


ヒビ。


入る。


「レオン!」


セシリア。


力。


込める。


バキン!


結界。


砕ける。


扉。


開く。


◇


「レオン!」


玉座の間。


セシリア。


走る。


中央。


レオン。


床。


王冠。


そして。


カイル。


「セシリア」


レオン。


顔。


見た瞬間。


安心したように。


笑う。


「来た」


セシリア。


駆け寄る。


「馬鹿!」


「え?」


「何で!」


胸。


叩く。


「何で一人で!」


「痛い」


「死ぬかと思った!」


「まだ死んでない」


「そういう問題じゃない!」


レオン。


少し。


笑う。


「ごめん」


セシリア。


手。


見る。


レオン。


気づく。


「手」


「平気」


「血が」


「平気!」


レオン。


その手。


優しく。


握る。


「平気じゃない」


セシリア。


胸。


鳴る。


でも。


すぐ。


カイル。


見る。


「あなたが」


カイル。


笑顔。


消えている。


「カイル・ヴァレンタイン」


ルーク。


入ってくる。


父。


見た瞬間。


固まる。


「……ルーク」


「父さん」


「大きくなったな」


「やめろ」


「会いたかった」


「僕は」


ルーク。


剣。


向ける。


「会いたくなかった」


カイル。


寂しそうに。


笑う。


「そうか」


「母さんを」


ルーク。


「何するつもりだ」


「戻す」


即答。


「誰かの身体を奪って?」


「エレノアは死ぬ運命だ」


「だから使っていい?」


「違う」


「何が違う!」


ルーク。


剣。


震える。


「母さんがそんなこと望むと思うか!」


カイル。


初めて。


声。


低くなる。


「お前に何が分かる」


「分かるよ!」


「分からない!」


カイル。


叫ぶ。


「私は!」


一瞬。


静寂。


「愛する人を」


声。


震える。


「目の前で失った」


セシリア。


胸。


痛む。


それは。


レオンも。


同じ。


最初の世界。


セシリアを。


失った。


そして。


王国を。


壊した。


「だから」


セシリア。


静かに。


「星喰いを作ったの?」


カイル。


彼女を見る。


「……」


「愛する人を失った悲しみを」


「……」


「他の人に何度も味わわせて?」


カイル。


「必要だった」


「何が?」


「時間を」


「……」


「巻き戻せるほどの感情が」


セシリア。


息。


止まる。


やっぱり。


七回。


全部。


利用された。


「私たちを」


「……」


「何度も殺したのは」


「契約を育てるためだ」


カイル。


淡々。


「王家とアルフォード」


「……」


「二つの血」


「……」


「愛」


「……」


「喪失」


「……」


「絶望」


レオン。


セシリア。


握る手。


強くなる。


カイル。


「七回」


「……」


「十分に蓄積した」


「じゃあ今回」


セシリア。


「八回目は?」


カイル。


少し。


笑う。


「完成」


その瞬間。


床。


王冠。


黒い光。


放つ。


《警告》


セシリア。


視界。


文字。


《星喰い最終契約開始》


「……!」


《条件》


《王家の継承者》


《アルフォードの血》


《双方による自発的選択》


セシリア。


読む。


「自発的……選択?」


カイル。


「そう」


「だから」


セシリア。


気づく。


「今回は」


「……」


「無理やりじゃダメだった?」


カイル。


微笑む。


「正解だ」


七回。


死。


恐怖。


強制。


でも。


八回目。


二人が。


自分から。


互いを選ぶ。


それで。


完成。


「だから」


セシリア。


「私をレオンのところへ行かせた?」


「バルディスに止めさせたのも」


「……」


「逆に私が行くと分かって?」


カイル。


「君は」


「……」


「止められるほど進むからね」


セシリア。


腹。


立つ。


全部。


読まれていた。


「じゃあ」


レオン。


初めて。


カイルを見る。


「僕が王冠を捨てたのも?」


カイル。


笑う。


「想定外だった」


レオン。


「……」


「だから」


カイル。


王冠。


見る。


「少々困っている」


ルーク。


「だったら終わりだ」


「いいや」


カイル。


首。


振る。


「王冠は」


「……」


「王を選ぶ」


その瞬間。


王冠。


宙。


浮く。


「何!」


黒い光。


玉座の間。


走る。


レオンへ。


セシリア。


「レオン!」


しかし。


王冠。


レオンの頭上。


通り過ぎる。


ルーク。


「……え?」


王冠。


止まる。


ルークの。


前。


全員。


固まる。


カイルだけ。


笑わない。


「まさか」


ルーク。


後ずさる。


王冠。


追う。


「何で」


セシリア。


王妃。


言葉。


思い出す。


《あなたの母はアストレア王家の女性だった》


ルーク。


王家の血。


「ルークも」


「……」


「継承者?」


王冠。


光。


強くなる。


《王位継承候補を再検索》


文字。


セシリア。


見える。


《第一候補》


《レオン・アストレア》


《継承拒否》


《第二候補》


ゆっくり。


名前。


現れる。


《ルーク・ヴァレンタイン》


ルーク。


「冗談だろ……」


《王家血統――適合》


《継承資格――あり》


カイル。


顔。


初めて。


完全に。


崩れる。


「違う」


小さく。


「それは違う」


ルーク。


父を見る。


「何が?」


カイル。


王冠。


掴もうとする。


「お前は王になってはいけない!」


「何で」


「ルーク!」


カイル。


初めて。


本気で。


焦る。


「逃げろ!」


遅い。


王冠。


光。


爆発。


ルークの。


頭上。


浮かぶ。


そして。


セシリアの視界。


《王位継承開始》


《新王候補――ルーク・ヴァレンタイン》


《継承完了まで》


《9分59秒》


「また……」


セシリア。


青ざめる。


しかし。


次の表示。


もっと。


恐ろしい。


《星喰い契約対象を変更》


《王家側契約者――》


《ルーク・ヴァレンタイン》


ルーク。


身体。


固まる。


「僕が……?」


レオン。


「待って」


セシリア。


「アルフォード側は?」


文字。


浮かぶ。


《アルフォード側契約者――》


全員。


息。


止める。


《セシリア・アルフォード》


「……私?」


ルーク。


セシリア。


目。


合う。


カイル。


「駄目だ」


声。


震える。


「それだけは」


ルーク。


「父さん?」


「お前が」


カイル。


顔。


青ざめる。


「セシリアと契約したら」


「……」


「未来が」


言葉。


止める。


セシリア。


「どうなるの?」


カイル。


答えない。


「言って!」


「……」


「どうなるの!」


カイル。


拳。


握る。


そして。


吐き出すように。


「エリアが」


ルーク。


息。


止まる。


「……何?」


カイル。


ルークを見る。


「生まれなくなる」


世界。


止まった。


「嘘だ」


「本当だ」


「何で」


「エリアは」


カイル。


苦しそう。


「レオンとセシリアの娘だ」


「……」


「お前が王になり」


「……」


「セシリアと契約すれば」


「……」


「レオンとの未来が消える」


ルーク。


顔。


真っ白。


エリア。


愛した人。


最初の世界。


自分の婚約者。


その存在。


そのものが。


消える。


《継承完了まで》


《8分41秒》


セシリア。


ルークを見る。


ルーク。


動けない。


王冠。


少しずつ。


下降。


「ルーク!」


反応。


ない。


「ルーク!」


「僕が」


声。


掠れる。


「王になれば」


「……」


「エリアが」


「消える」


セシリア。


胸。


痛む。


「でも」


ルーク。


「王にならなければ」


セシリア。


レオンを見る。


《星喰い進行率 99%》


レオンが。


再び。


王位候補に戻る。


そして。


星喰い。


完成。


つまり。


選択。


ルークが王になる。


エリアが。


生まれない未来。


それとも。


レオンが王になり。


星喰いが完成。


王国が。


滅ぶ未来。


カイル。


小さく。


笑った。


「これが」


全員。


見る。


「運命だ」


セシリア。


その言葉。


聞いた瞬間。


何か。


切れた。


「うるさい」


カイル。


「……?」


「さっきから」


セシリア。


一歩。


前。


「運命」


「……」


「契約」


「……」


「血」


「……」


「そんなものばっかり」


王冠。


ルーク。


近づく。


《7分52秒》


「私は」


セシリア。


強く。


言う。


「もう選ばされない」


ルーク。


顔。


上げる。


「セシリア?」


「レオンも」


見る。


「王にならない」


次。


ルーク。


「あなたも」


「……」


「王にならない」


カイル。


「そんなことはできない」


「じゃあ」


セシリア。


笑う。


「王様がいなければいい」


全員。


「……」


父。


ちょうど。


玉座の間。


入ってくる。


「セシリア!」


「お父様!」


「何をしている!」


セシリア。


父を見る。


そして。


言った。


「この国」


「……」


「王様がいないと駄目?」


父。


「……は?」


「だから!」


セシリア。


王冠。


指。


「王制をやめたらどうなるの!」


玉座の間。


完全な。


沈黙。


ルーク。


口。


開いたまま。


レオン。


呆然。


カイル。


初めて。


理解できない顔。


父。


しばらく。


娘を見る。


「お前は」


「……」


「十三歳で何を言い出している?」


「だって!」


セシリア。


叫ぶ。


「王冠があるから!」


「……」


「王様を選ぶんでしょう!」


「……」


「だったら!」


王冠。


睨む。


「王冠そのものを」


一歩。


「なくせばいい!」


《継承完了まで》


《6分59秒》


その瞬間。


文字。


一瞬。


揺れた。


《想定外選択》


セシリア。


目。


見開く。


《王位制度破棄》


《未登録分岐》


「……ある」


小さく。


笑う。


「道が」


カイル。


初めて。


叫んだ。


「やめろ!」


セシリア。


彼を見る。


《運命分岐》


《生存可能性――上昇》


「やっぱり」


カイル。


「セシリア!」


「あなた」


セシリア。


笑う。


「それを一番怖がってる」


七回。


誰かを。


殺す。


犠牲。


選ばされた。


でも。


八回目。


選択肢にない道。


「レオン」


「うん」


「王様」


「……」


「やめよう」


レオン。


一瞬。


呆然。


そして。


笑った。


「うん」


「そんな簡単に!?」


父。


叫ぶ。


レオン。


セシリアを見る。


「セシリアがそう言うなら」


「そこは自分で考えて!」


「じゃあ」


レオン。


少し。


考える。


王冠。


見る。


そして。


はっきり。


「僕は王にならない」


ルーク。


続く。


「僕も」


王冠。


黒い光。


暴れる。


《継承候補――不在》


《王位継承不能》


《契約エラー》


カイル。


「やめろ!」


《星喰い契約――》


文字。


崩れる。


《再計算》


《再計算》


《再計算》


そして。


《実行不能》


黒い光。


一気に。


消えた。


王冠。


床。


落ちる。


カァン。


静寂。


セシリア。


レオン。


ルーク。


互い。


見る。


《レオン・アストレア》


《死亡予定――》


文字。


変わる。


《未確定》


初めて。


死亡までの。


数字。


消えた。


セシリア。


息。


止まる。


「……消えた」


「何が?」


レオン。


「あなたが死ぬ時間」


レオン。


目。


見開く。


セシリア。


涙。


出る。


笑う。


「消えたよ」


レオン。


ゆっくり。


笑う。


その瞬間。


カイル。


低く。


笑った。


「なるほど」


全員。


振り向く。


「何が面白い」


ルーク。


カイル。


笑み。


戻っている。


「王を消す」


「……」


「そこだけは」


「……」


「七回とも誰も選ばなかった」


セシリア。


嫌な予感。


「でも」


カイル。


続ける。


「君たちは」


「……」


「一つ忘れている」


父。


剣。


抜く。


「何をだ」


カイル。


床。


落ちた王冠。


見る。


「王冠は」


「……」


「星喰いを完成させる鍵ではない」


セシリア。


「さっきと違うじゃない」


「正確には」


カイル。


笑う。


「最後の鍵の一つ」


「……」


「もう一つある」


ルーク。


「何」


カイル。


セシリアを見る。


「王家とアルフォード家」


「……」


「二つの血から生まれた」


セシリア。


胸。


嫌な痛み。


「子ども」


「……」


「何?」


カイル。


優しく。


言う。


「エリアだよ」


ルーク。


凍る。


レオン。


「誰?」


セシリア。


答えられない。


カイル。


手。


上げる。


その手。


小さな。


青い光。


「エリアは」


「……」


「消えていない」


ルーク。


一歩。


「どういう意味だ」


「最初の世界が消えたとき」


カイル。


光。


見る。


「彼女の魂だけ」


「……」


「契約の中に残った」


セシリア。


震える。


「エリアが」


「生きてる?」


「魂だけ」


「……」


「ずっと」


ルーク。


剣。


落としそうになる。


「エリア……」


カイル。


笑う。


「取り戻したくないか?」


ルーク。


息。


止まる。


「私なら」


カイル。


「戻せる」


セシリア。


「代わりに何をするの」


カイル。


視線。


セシリア。


レオン。


ルーク。


順番。


見る。


「簡単だ」


青い光。


握る。


「次の十二日間で」


「……」


「三人のうち」


笑う。


「一人を選べ」


「何を」


「生かす人間を」


空気。


凍る。


「残り二人は」


「……」


「エリアを戻すための代価になる」


ルーク。


顔。


真っ白。


セシリア。


「ふざけないで」


カイル。


「十二日後」


「……」


「契約は完全に崩壊する」


「……」


「そのとき」


「……」


「エリアも永遠に消える」


ルーク。


拳。


震える。


「嘘だ」


「なら」


カイル。


青い光。


解放する。


光。


空中。


形。


作る。


小さな。


少女。


銀色の髪。


青い瞳。


十六歳ほど。


ルーク。


息。


止まる。


セシリア。


涙。


溢れる。


少女。


目。


閉じている。


でも。


確かに。


いる。


「エリア……」


ルーク。


名前。


呼ぶ。


少女の。


まぶた。


ほんの少し。


動く。


そして。


唇。


「……ルーク」


ルーク。


完全に。


動けなくなる。


カイル。


笑う。


「さあ」


「……」


「八回目の続きを始めよう」


セシリアの視界。


再び。


文字。


《新規死亡条件》


《期限――12日》


《選択対象》


《セシリア・アルフォード》


《レオン・アストレア》


《ルーク・ヴァレンタイン》


そして。


最後。


《三人のうち》


《生き残れるのは一人》


セシリアは。


文字を。


睨みつけた。


そして。


静かに言った。


「……嫌よ」


カイル。


「何?」


「三人のうち一人?」


拳。


握る。


「そんな選択」


レオンの手。


握る。


もう片方。


ルークの腕。


掴む。


「しない」


カイル。


笑う。


「ならエリアは消える」


セシリア。


涙。


拭く。


「エリアも助ける」


「不可能だ」


「レオンも」


「……」


「ルークも」


「……」


「私も」


カイル。


「だから不可能だ」


セシリア。


まっすぐ。


灰色の瞳を見る。


「七回も同じことして」


一歩。


「まだ分からないの?」


カイル。


笑み。


少し。


消える。


「私」


セシリア。


言う。


「決められた選択肢を選ぶの」


「……」


「大嫌いなの」


その瞬間。


視界。


小さな文字。


浮かぶ。


《第八分岐》


《未観測領域へ移行》


そして。


《物語の結末》


《変更可能》


セシリアは。


初めて。


確信した。


運命は。


壊せる。


――第10話・完――

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