第10話 王冠を捨てた王子。
《王位継承完了まで》
《59分58秒》
《星喰い進行率 99%》
あと一時間。
たった。
一時間。
その時間が過ぎれば。
レオンは王になる。
そして。
星喰いが完成する。
「急いで!」
セシリアは。
馬車が完全に止まる前に。
扉へ手をかけた。
「待て!」
父の声。
「危険だ!」
「待ってたら間に合わない!」
北の離宮から。
王都までは。
通常なら二時間。
だが。
馬を何度も替え。
休まず走らせ。
一時間ほどで。
王宮近くまで戻ってきた。
それでも。
《王位継承完了まで》
《18分42秒》
もう。
時間がない。
「セシリア!」
ルークも。
馬から飛び降りる。
「僕も行く!」
「王妃様は?」
「公爵閣下の兵が医師を呼んだ!」
「助かる?」
ルークの表情が。
一瞬。
曇る。
「分からない」
セシリア。
唇を噛む。
王妃エレノア。
《死亡まで、あと1時間41分》
まだ。
死の表示は。
消えていない。
助けたい。
でも。
今は。
レオン。
彼を王にしてはいけない。
「行こう」
二人は。
王宮へ走った。
◇
王宮。
異様だった。
国王崩御。
王位継承。
通常なら。
何日も。
いや。
何週間もかけて。
葬儀。
議会。
即位準備。
すべてを行う。
なのに。
今回は違う。
宮殿中。
鐘。
鳴り続け。
廊下には。
儀礼服を着た騎士。
神官。
大臣。
全員。
何かに操られているように。
同じ方向へ。
歩いている。
玉座の間。
「おかしい」
ルーク。
立ち止まる。
「何が?」
「こんなに早く即位するはずない」
「私もそう思う」
「誰かが」
ルーク。
周囲。
見回す。
「王国法を」
「……」
「強制的に動かしてる」
セシリア。
「カイル?」
「たぶん」
その瞬間。
前。
騎士。
数人。
道。
塞ぐ。
「ここから先は」
「……」
「王族以外立入禁止です」
セシリア。
「私はアルフォード公爵令嬢よ」
「お通しできません」
「王太子殿下に用があります」
「お通しできません」
同じ。
声。
同じ。
表情。
「操られてる」
ルーク。
小声。
セシリア。
騎士の目。
見る。
焦点。
合ってない。
「どうする?」
ルーク。
剣。
抜く。
「強行突破」
「殺さないでよ」
「分かってる」
騎士。
動く。
ルーク。
一歩。
前。
だが。
その前に。
セシリアが。
手。
上げる。
「待って」
「何?」
「私がやる」
「何を」
セシリア。
騎士。
見る。
大きく。
息。
吸う。
「アルフォード公爵家の名において命じます!」
王宮。
廊下。
声。
響く。
「そこを退きなさい!」
騎士。
一瞬。
止まる。
「……」
ルーク。
「効いた?」
「分からない」
騎士。
ゆっくり。
頭。
押さえる。
「アル……フォード」
もう一人。
「公爵家……」
セシリア。
さらに。
「あなたたちは王国の騎士です!」
「……」
「誰かの人形じゃない!」
騎士。
目。
少し。
戻る。
「殿下を守りなさい!」
その瞬間。
黒い煙のようなもの。
騎士の身体から。
抜ける。
全員。
膝。
つく。
ルーク。
目。
見開く。
「今の」
セシリア。
「何?」
「アルフォードの力だ」
「え?」
「王家の暴走を鎮める血」
ルーク。
セシリアを見る。
「君にもある」
自分。
知らない。
力。
でも。
今は。
そんなこと。
考えてる暇。
ない。
《王位継承完了まで》
《12分08秒》
「走るよ!」
◇
玉座の間。
巨大な扉。
閉まっている。
中。
祈りの声。
神官たち。
そして。
聞こえる。
「レオン・アストレア殿下」
「……」
「王冠をお受けください」
セシリア。
扉。
叩く。
「レオン!」
反応なし。
「レオン!」
ルーク。
「下がって!」
剣。
振る。
だが。
扉。
黒い光。
弾く。
「くそ!」
「開かない?」
「結界だ!」
「じゃあ」
セシリア。
扉。
触れる。
その瞬間。
黒い光。
腕。
走る。
「っ!」
「セシリア!」
痛い。
でも。
手。
離さない。
「レオン!」
呼ぶ。
「聞こえるでしょう!」
◇
玉座の間。
レオン。
王冠。
目の前。
カイル。
微笑む。
「殿下」
「……」
「これを被れば」
「……」
「すべてが終わります」
「何が」
「不安も」
「……」
「恐怖も」
「……」
「喪失も」
カイル。
王冠。
持つ。
「王となれば」
「……」
「この国すべてがあなたのもの」
レオン。
「いらない」
「では」
カイル。
少し。
笑う。
「セシリア様は?」
レオン。
目。
動く。
「彼女も」
「……」
「あなたのものになります」
「セシリアは物じゃない」
「もちろん」
「……」
「ですが」
カイル。
近づく。
「誰にも奪われなくなる」
黒い影。
王冠。
這う。
「死にも」
「……」
「時間にも」
「……」
「運命にも」
レオン。
息。
荒くなる。
セシリア。
死ぬ。
何度も。
夢。
見る。
処刑台。
血。
棺。
消えていく。
「王になれば」
カイル。
耳元。
「彼女を永遠に生かせます」
レオン。
「……本当?」
「はい」
「絶対?」
「絶対です」
カイル。
笑う。
「あなたが」
「……」
「世界そのものになれば」
王冠。
レオンの頭へ。
近づく。
その瞬間。
遠く。
「レオン!」
声。
レオン。
目。
見開く。
「セシリア?」
カイル。
表情。
初めて。
歪む。
「聞くな」
「今」
「幻です」
「……」
「彼女はここにはいない」
「レオン!」
また。
声。
レオン。
王冠から。
一歩。
離れる。
「いる」
カイル。
「いません」
「いる!」
◇
扉。
黒い結界。
セシリア。
両手。
押し当てる。
痛み。
皮膚。
焼ける。
「セシリアやめろ!」
ルーク。
腕。
掴む。
「手が!」
「離さない!」
「火傷する!」
「どうでもいい!」
「よくない!」
「あと何分!」
《王位継承完了まで》
《8分11秒》
「八分!」
セシリア。
叫ぶ。
「レオン!」
黒い結界。
さらに。
強く。
手。
血。
滲む。
「お願い!」
「……」
「聞こえてるなら!」
光。
揺れる。
「王冠を被らないで!」
◇
レオン。
王冠。
見る。
カイル。
見る。
「セシリアが」
「……」
「被るなって言ってる」
「殿下」
「僕は」
「王になるべきです」
カイル。
強く。
「それがあなたの運命」
レオン。
「運命」
「はい」
「運命って」
レオン。
ゆっくり。
王冠を見る。
「絶対?」
カイル。
「当然です」
レオン。
少し。
笑う。
「セシリアは」
「……」
「未来を変えたよ」
カイル。
顔。
止まる。
「矢も」
「……」
「毒も」
「……」
「僕の呪いも」
レオン。
青い目。
「何度も」
「……」
「変えた」
カイル。
「それは一時的な」
「だったら」
レオン。
王冠。
手に取る。
カイル。
笑み。
戻る。
しかし。
次の瞬間。
レオン。
王冠。
床へ。
叩きつけた。
ガァン!
玉座の間。
音。
響く。
「僕は」
カイル。
目。
見開く。
「王にならない」
◇
《王位継承完了まで》
《6分43秒》
突然。
数字。
止まる。
セシリア。
「……?」
一秒。
二秒。
減らない。
《6分43秒》
固定。
ルーク。
「何が?」
「止まった」
「何が!」
「カウントが!」
その瞬間。
扉。
黒い結界。
ヒビ。
入る。
「レオン!」
セシリア。
力。
込める。
バキン!
結界。
砕ける。
扉。
開く。
◇
「レオン!」
玉座の間。
セシリア。
走る。
中央。
レオン。
床。
王冠。
そして。
カイル。
「セシリア」
レオン。
顔。
見た瞬間。
安心したように。
笑う。
「来た」
セシリア。
駆け寄る。
「馬鹿!」
「え?」
「何で!」
胸。
叩く。
「何で一人で!」
「痛い」
「死ぬかと思った!」
「まだ死んでない」
「そういう問題じゃない!」
レオン。
少し。
笑う。
「ごめん」
セシリア。
手。
見る。
レオン。
気づく。
「手」
「平気」
「血が」
「平気!」
レオン。
その手。
優しく。
握る。
「平気じゃない」
セシリア。
胸。
鳴る。
でも。
すぐ。
カイル。
見る。
「あなたが」
カイル。
笑顔。
消えている。
「カイル・ヴァレンタイン」
ルーク。
入ってくる。
父。
見た瞬間。
固まる。
「……ルーク」
「父さん」
「大きくなったな」
「やめろ」
「会いたかった」
「僕は」
ルーク。
剣。
向ける。
「会いたくなかった」
カイル。
寂しそうに。
笑う。
「そうか」
「母さんを」
ルーク。
「何するつもりだ」
「戻す」
即答。
「誰かの身体を奪って?」
「エレノアは死ぬ運命だ」
「だから使っていい?」
「違う」
「何が違う!」
ルーク。
剣。
震える。
「母さんがそんなこと望むと思うか!」
カイル。
初めて。
声。
低くなる。
「お前に何が分かる」
「分かるよ!」
「分からない!」
カイル。
叫ぶ。
「私は!」
一瞬。
静寂。
「愛する人を」
声。
震える。
「目の前で失った」
セシリア。
胸。
痛む。
それは。
レオンも。
同じ。
最初の世界。
セシリアを。
失った。
そして。
王国を。
壊した。
「だから」
セシリア。
静かに。
「星喰いを作ったの?」
カイル。
彼女を見る。
「……」
「愛する人を失った悲しみを」
「……」
「他の人に何度も味わわせて?」
カイル。
「必要だった」
「何が?」
「時間を」
「……」
「巻き戻せるほどの感情が」
セシリア。
息。
止まる。
やっぱり。
七回。
全部。
利用された。
「私たちを」
「……」
「何度も殺したのは」
「契約を育てるためだ」
カイル。
淡々。
「王家とアルフォード」
「……」
「二つの血」
「……」
「愛」
「……」
「喪失」
「……」
「絶望」
レオン。
セシリア。
握る手。
強くなる。
カイル。
「七回」
「……」
「十分に蓄積した」
「じゃあ今回」
セシリア。
「八回目は?」
カイル。
少し。
笑う。
「完成」
その瞬間。
床。
王冠。
黒い光。
放つ。
《警告》
セシリア。
視界。
文字。
《星喰い最終契約開始》
「……!」
《条件》
《王家の継承者》
《アルフォードの血》
《双方による自発的選択》
セシリア。
読む。
「自発的……選択?」
カイル。
「そう」
「だから」
セシリア。
気づく。
「今回は」
「……」
「無理やりじゃダメだった?」
カイル。
微笑む。
「正解だ」
七回。
死。
恐怖。
強制。
でも。
八回目。
二人が。
自分から。
互いを選ぶ。
それで。
完成。
「だから」
セシリア。
「私をレオンのところへ行かせた?」
「バルディスに止めさせたのも」
「……」
「逆に私が行くと分かって?」
カイル。
「君は」
「……」
「止められるほど進むからね」
セシリア。
腹。
立つ。
全部。
読まれていた。
「じゃあ」
レオン。
初めて。
カイルを見る。
「僕が王冠を捨てたのも?」
カイル。
笑う。
「想定外だった」
レオン。
「……」
「だから」
カイル。
王冠。
見る。
「少々困っている」
ルーク。
「だったら終わりだ」
「いいや」
カイル。
首。
振る。
「王冠は」
「……」
「王を選ぶ」
その瞬間。
王冠。
宙。
浮く。
「何!」
黒い光。
玉座の間。
走る。
レオンへ。
セシリア。
「レオン!」
しかし。
王冠。
レオンの頭上。
通り過ぎる。
ルーク。
「……え?」
王冠。
止まる。
ルークの。
前。
全員。
固まる。
カイルだけ。
笑わない。
「まさか」
ルーク。
後ずさる。
王冠。
追う。
「何で」
セシリア。
王妃。
言葉。
思い出す。
《あなたの母はアストレア王家の女性だった》
ルーク。
王家の血。
「ルークも」
「……」
「継承者?」
王冠。
光。
強くなる。
《王位継承候補を再検索》
文字。
セシリア。
見える。
《第一候補》
《レオン・アストレア》
《継承拒否》
《第二候補》
ゆっくり。
名前。
現れる。
《ルーク・ヴァレンタイン》
ルーク。
「冗談だろ……」
《王家血統――適合》
《継承資格――あり》
カイル。
顔。
初めて。
完全に。
崩れる。
「違う」
小さく。
「それは違う」
ルーク。
父を見る。
「何が?」
カイル。
王冠。
掴もうとする。
「お前は王になってはいけない!」
「何で」
「ルーク!」
カイル。
初めて。
本気で。
焦る。
「逃げろ!」
遅い。
王冠。
光。
爆発。
ルークの。
頭上。
浮かぶ。
そして。
セシリアの視界。
《王位継承開始》
《新王候補――ルーク・ヴァレンタイン》
《継承完了まで》
《9分59秒》
「また……」
セシリア。
青ざめる。
しかし。
次の表示。
もっと。
恐ろしい。
《星喰い契約対象を変更》
《王家側契約者――》
《ルーク・ヴァレンタイン》
ルーク。
身体。
固まる。
「僕が……?」
レオン。
「待って」
セシリア。
「アルフォード側は?」
文字。
浮かぶ。
《アルフォード側契約者――》
全員。
息。
止める。
《セシリア・アルフォード》
「……私?」
ルーク。
セシリア。
目。
合う。
カイル。
「駄目だ」
声。
震える。
「それだけは」
ルーク。
「父さん?」
「お前が」
カイル。
顔。
青ざめる。
「セシリアと契約したら」
「……」
「未来が」
言葉。
止める。
セシリア。
「どうなるの?」
カイル。
答えない。
「言って!」
「……」
「どうなるの!」
カイル。
拳。
握る。
そして。
吐き出すように。
「エリアが」
ルーク。
息。
止まる。
「……何?」
カイル。
ルークを見る。
「生まれなくなる」
世界。
止まった。
「嘘だ」
「本当だ」
「何で」
「エリアは」
カイル。
苦しそう。
「レオンとセシリアの娘だ」
「……」
「お前が王になり」
「……」
「セシリアと契約すれば」
「……」
「レオンとの未来が消える」
ルーク。
顔。
真っ白。
エリア。
愛した人。
最初の世界。
自分の婚約者。
その存在。
そのものが。
消える。
《継承完了まで》
《8分41秒》
セシリア。
ルークを見る。
ルーク。
動けない。
王冠。
少しずつ。
下降。
「ルーク!」
反応。
ない。
「ルーク!」
「僕が」
声。
掠れる。
「王になれば」
「……」
「エリアが」
「消える」
セシリア。
胸。
痛む。
「でも」
ルーク。
「王にならなければ」
セシリア。
レオンを見る。
《星喰い進行率 99%》
レオンが。
再び。
王位候補に戻る。
そして。
星喰い。
完成。
つまり。
選択。
ルークが王になる。
エリアが。
生まれない未来。
それとも。
レオンが王になり。
星喰いが完成。
王国が。
滅ぶ未来。
カイル。
小さく。
笑った。
「これが」
全員。
見る。
「運命だ」
セシリア。
その言葉。
聞いた瞬間。
何か。
切れた。
「うるさい」
カイル。
「……?」
「さっきから」
セシリア。
一歩。
前。
「運命」
「……」
「契約」
「……」
「血」
「……」
「そんなものばっかり」
王冠。
ルーク。
近づく。
《7分52秒》
「私は」
セシリア。
強く。
言う。
「もう選ばされない」
ルーク。
顔。
上げる。
「セシリア?」
「レオンも」
見る。
「王にならない」
次。
ルーク。
「あなたも」
「……」
「王にならない」
カイル。
「そんなことはできない」
「じゃあ」
セシリア。
笑う。
「王様がいなければいい」
全員。
「……」
父。
ちょうど。
玉座の間。
入ってくる。
「セシリア!」
「お父様!」
「何をしている!」
セシリア。
父を見る。
そして。
言った。
「この国」
「……」
「王様がいないと駄目?」
父。
「……は?」
「だから!」
セシリア。
王冠。
指。
「王制をやめたらどうなるの!」
玉座の間。
完全な。
沈黙。
ルーク。
口。
開いたまま。
レオン。
呆然。
カイル。
初めて。
理解できない顔。
父。
しばらく。
娘を見る。
「お前は」
「……」
「十三歳で何を言い出している?」
「だって!」
セシリア。
叫ぶ。
「王冠があるから!」
「……」
「王様を選ぶんでしょう!」
「……」
「だったら!」
王冠。
睨む。
「王冠そのものを」
一歩。
「なくせばいい!」
《継承完了まで》
《6分59秒》
その瞬間。
文字。
一瞬。
揺れた。
《想定外選択》
セシリア。
目。
見開く。
《王位制度破棄》
《未登録分岐》
「……ある」
小さく。
笑う。
「道が」
カイル。
初めて。
叫んだ。
「やめろ!」
セシリア。
彼を見る。
《運命分岐》
《生存可能性――上昇》
「やっぱり」
カイル。
「セシリア!」
「あなた」
セシリア。
笑う。
「それを一番怖がってる」
七回。
誰かを。
殺す。
犠牲。
選ばされた。
でも。
八回目。
選択肢にない道。
「レオン」
「うん」
「王様」
「……」
「やめよう」
レオン。
一瞬。
呆然。
そして。
笑った。
「うん」
「そんな簡単に!?」
父。
叫ぶ。
レオン。
セシリアを見る。
「セシリアがそう言うなら」
「そこは自分で考えて!」
「じゃあ」
レオン。
少し。
考える。
王冠。
見る。
そして。
はっきり。
「僕は王にならない」
ルーク。
続く。
「僕も」
王冠。
黒い光。
暴れる。
《継承候補――不在》
《王位継承不能》
《契約エラー》
カイル。
「やめろ!」
《星喰い契約――》
文字。
崩れる。
《再計算》
《再計算》
《再計算》
そして。
《実行不能》
黒い光。
一気に。
消えた。
王冠。
床。
落ちる。
カァン。
静寂。
セシリア。
レオン。
ルーク。
互い。
見る。
《レオン・アストレア》
《死亡予定――》
文字。
変わる。
《未確定》
初めて。
死亡までの。
数字。
消えた。
セシリア。
息。
止まる。
「……消えた」
「何が?」
レオン。
「あなたが死ぬ時間」
レオン。
目。
見開く。
セシリア。
涙。
出る。
笑う。
「消えたよ」
レオン。
ゆっくり。
笑う。
その瞬間。
カイル。
低く。
笑った。
「なるほど」
全員。
振り向く。
「何が面白い」
ルーク。
カイル。
笑み。
戻っている。
「王を消す」
「……」
「そこだけは」
「……」
「七回とも誰も選ばなかった」
セシリア。
嫌な予感。
「でも」
カイル。
続ける。
「君たちは」
「……」
「一つ忘れている」
父。
剣。
抜く。
「何をだ」
カイル。
床。
落ちた王冠。
見る。
「王冠は」
「……」
「星喰いを完成させる鍵ではない」
セシリア。
「さっきと違うじゃない」
「正確には」
カイル。
笑う。
「最後の鍵の一つ」
「……」
「もう一つある」
ルーク。
「何」
カイル。
セシリアを見る。
「王家とアルフォード家」
「……」
「二つの血から生まれた」
セシリア。
胸。
嫌な痛み。
「子ども」
「……」
「何?」
カイル。
優しく。
言う。
「エリアだよ」
ルーク。
凍る。
レオン。
「誰?」
セシリア。
答えられない。
カイル。
手。
上げる。
その手。
小さな。
青い光。
「エリアは」
「……」
「消えていない」
ルーク。
一歩。
「どういう意味だ」
「最初の世界が消えたとき」
カイル。
光。
見る。
「彼女の魂だけ」
「……」
「契約の中に残った」
セシリア。
震える。
「エリアが」
「生きてる?」
「魂だけ」
「……」
「ずっと」
ルーク。
剣。
落としそうになる。
「エリア……」
カイル。
笑う。
「取り戻したくないか?」
ルーク。
息。
止まる。
「私なら」
カイル。
「戻せる」
セシリア。
「代わりに何をするの」
カイル。
視線。
セシリア。
レオン。
ルーク。
順番。
見る。
「簡単だ」
青い光。
握る。
「次の十二日間で」
「……」
「三人のうち」
笑う。
「一人を選べ」
「何を」
「生かす人間を」
空気。
凍る。
「残り二人は」
「……」
「エリアを戻すための代価になる」
ルーク。
顔。
真っ白。
セシリア。
「ふざけないで」
カイル。
「十二日後」
「……」
「契約は完全に崩壊する」
「……」
「そのとき」
「……」
「エリアも永遠に消える」
ルーク。
拳。
震える。
「嘘だ」
「なら」
カイル。
青い光。
解放する。
光。
空中。
形。
作る。
小さな。
少女。
銀色の髪。
青い瞳。
十六歳ほど。
ルーク。
息。
止まる。
セシリア。
涙。
溢れる。
少女。
目。
閉じている。
でも。
確かに。
いる。
「エリア……」
ルーク。
名前。
呼ぶ。
少女の。
まぶた。
ほんの少し。
動く。
そして。
唇。
「……ルーク」
ルーク。
完全に。
動けなくなる。
カイル。
笑う。
「さあ」
「……」
「八回目の続きを始めよう」
セシリアの視界。
再び。
文字。
《新規死亡条件》
《期限――12日》
《選択対象》
《セシリア・アルフォード》
《レオン・アストレア》
《ルーク・ヴァレンタイン》
そして。
最後。
《三人のうち》
《生き残れるのは一人》
セシリアは。
文字を。
睨みつけた。
そして。
静かに言った。
「……嫌よ」
カイル。
「何?」
「三人のうち一人?」
拳。
握る。
「そんな選択」
レオンの手。
握る。
もう片方。
ルークの腕。
掴む。
「しない」
カイル。
笑う。
「ならエリアは消える」
セシリア。
涙。
拭く。
「エリアも助ける」
「不可能だ」
「レオンも」
「……」
「ルークも」
「……」
「私も」
カイル。
「だから不可能だ」
セシリア。
まっすぐ。
灰色の瞳を見る。
「七回も同じことして」
一歩。
「まだ分からないの?」
カイル。
笑み。
少し。
消える。
「私」
セシリア。
言う。
「決められた選択肢を選ぶの」
「……」
「大嫌いなの」
その瞬間。
視界。
小さな文字。
浮かぶ。
《第八分岐》
《未観測領域へ移行》
そして。
《物語の結末》
《変更可能》
セシリアは。
初めて。
確信した。
運命は。
壊せる。
――第10話・完――




