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「それは、こいつも同じだったみたいだぜ。おまえの声を聞いて、倒れないで足を踏んばった」

 ヒトシはモトカノジョのあたしに笑いかけ、そしてモトタイセンアイテのミツオにも笑顔を向けた。

「こいつ、ゲームセンターのところで初めて会ったときは、ただのケンカ屋だったけど、ちゃんとボクサーになっていたからおどろいたよ。まだまだ初心者くさいけど、こぶしをまじえたからよくわかる。おれは六分間ずっとこいつに負けるかもしれないって、ずっとひやひやものだったんだぜ」

 このヤンキーけっこう見こみがある。そういってヒトシはおだやかに笑った。

「おれ、こいつが初めて会ったときのままのただのヤンキーだったら、こんな気持ちにはならなかっただろうな。おまえがこいつを応援したことじたいを認められなかったっていうか。なんか嫉妬深いやつみたいな台詞だけどな」

 ヒトシはベッドで眠るミツオを遠い目をして眺めた。

「だからこいつに勝って、ちゃんとしたおれを見せて、もう一度おまえとつきあう資格がおれにはあるんだって、おまえに見せたかった。こんなヤンキーなんかより、おれの方がずっとおまえにふさわしい資格があるんだって。試合まえまでは、そんな話をしようと思ってた」

 ヒトシの本音は、おだやかでやさしく、そしてどこかさびしそうだった。

 あたしがなにもいえずにいると、一方的にヒトシがいう。

「ほんとはぜんぜんふっきれたわけじゃないけど、しかたないよな。ふたば、今までありがとな」

 ヒトシはあたしに背を向ける。保健室のドアに向かって歩き出す。

「もう二度と、ふたばのまえにはあらわれないよ。別れた男がいつまでも、まわりをちょろちょろしていたんじゃ、ふたばも次の恋ができないだろ。だから……さよなら」

 ヒトシがドアに手をかけた。

 その瞬間。

 ふいにベッドから声が聞こえる。

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