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ゴングと同時にミツオはまたも突進していく。
本人にはこの点数差がよくわかっているのだろう。とにかく手かずを増やし有効打をあたえなければならない。さもないと二分後に判定で負ける。
頭をつかうよりも足と手をつかい、とにかく攻撃をしかける。負のスパイラルのようではあるが、もうそれ以外に方法はない。
「シュッシュッシュッ」
フットワークよく動きまわるヒトシを追いかけるように、ミツオは何度もこぶしをくり出す。
まえのふたつのラウンドを全力で走りまわったあとだ。よほど疲れているのだろう。このラウンドでは、始めからパンチが大振りだ。
「シュッ――」
ミツオにあわせ、ヒトシが強烈なジャブを入れる。
ぴんぽーん。
大歓声のあいだを縫うように、なさけない電子音が体育館に鳴り響く。
これでスコアは0‐8。
ミツオはそれでも手をとめない。必死でヒトシを追い続ける。
雑な対戦相手をまえにヒトシは冷静な処理をしていく。
ジャブとフックのコンビネーションで、距離をとりつつチャンスをうかがう。
ミツオはすでに体力の限界のようだった。大振りのうえに、足だってもうふらふらだ。
あごがあがり、ただ気力だけでヒトシを追い続ける。そんなようす。
対戦相手はほぼ瀕死――そんな大チャンスをキャリアの長いヒトシが見逃すわけがない。踏みこみすぎたミツオの身体に、きれいなストレートをおみまいする。
乾いた音が体育館に大きく響く。
絵に描いたようなヒトシのストレートはヘッドギアごしのミツオのテンプルにクリーンヒット。
電子音が鳴り、観客たちが大歓声をあげる。
同時にミツオがリングのうえにひざをつく。
ダウン。
「1……2……3……」
レフェリーがすかさずカウントをとる。
「……4……5……6……」
ミツオはよろよろ立ちあがる。
「……7……8……」
うつろにファイティングポーズをとった。
試合続行。




