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 ゴングとともにかまびすしい歓声。しかしそんな雑音はふたりの耳には届いていないようす。

 開始と同時にミツオがふたたび突進する。

 でたらめにジャブとフックを連発する。

 手かずを増やすが一発だってヒトシにあたらない。足を使ったフットワークとガードでうまくさばかれる。

 ミツオの攻撃は第一ラウンド同様、時間とともに雑になっていく。いらだちが隠せないといった感じの大振り。

 ミツオのすきにあわせて、ヒトシがこまかなパンチを入れる。たまに有効打になり、電子音が体育館に響く。

 オープンスコアは0‐6。

 点差がけっこうついてしまった。

 それでもミツオは突進していくことをやめない。

「距離をとって技術で」なんて腹は始めからないのだろう。得意のケンカと同じようにインファイトに持ちこみ、手かずだけは増やしていく。

「シュッシュッシュッ」

 ミツオは息を吐く音にさえも、あせりが見え隠れしている。あたしの心のカウントでは、そろそろ一分三十秒。

 ミツオが右手を大きく引いた。

 その大振りをヒトシは見逃さない。

 あいたガードにこぶしをねじこむ。

 ノーモーションのショートフック。

 ヘッドギアごしにミツオの顔面に直撃。

 電子音が体育館に響く。

 ミツオのひざが折れた。

 足がぐらつく。

 攻撃の手が休まる。

 ヒトシはそこで一気にたたみかける。

 足を踏みこみ、こちらも大振りぎみに腕を引く。

 ヒトシが右手を引ききったとき。

 ゴングが鳴った。

 第二ラウンド終了だ。

 オープンスコアは0‐7で、第二ラウンド終了後のインターバル。試合は完全にヒトシの流れである。

 次の最終ラウンドでミツオがヒトシに勝つためには、すくなくとも8ポイント以上獲得しなければならない。

 最終ラウンドで8ポイント――

 つまり二分間のうちに有効打が八回ということだ。

これはもう、ほとんどひっくり返らない差だと思って間違いない。

 残された道は、ほかには前回のようなナックアウト勝ちだが、こちらはまぐれのうえのまぐれといった産物で、ほとんど奇跡のようなものだ。

 前回は相手が初心者で気持ちが折れてしまったから可能だったことであり、ふつうはそんなふうにはいかない。

 この試合の対戦相手はキャリアをつんでいる地区ランキング一位のヒトシなのだ。ダウンすらも1ポイントにしかカウントされないアマチュアのルールでは、このオープンスコアの数字だけが絶対的な判定の基準になる。

 もっとも、そんなことを考えて試合を観戦しているものなど、体育館にはほとんどいない。集まった生徒たちは野次を飛ばし、無料でできるバカ騒ぎをしているだけ。

 そんな異常なもりあがりを見せるなか、最終ラウンドのゴングが鳴った。

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