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時間の経過とともに、ミツオとヒトシの練習試合は、本人たちの知らないところで、お祭りムードになっていた。
うわさ好きのクラスの誰かが、ヤンキーミツオの対戦相手はランキング一位でイケメンだなんてうわさを流したもんだから、もともと興味のあったケンカ試合に、さらに興味がわいてしまい、もりあがりが加速してしまった。
シホは「バカなギャルのせいだ」なんて毒を吐いて怒っていたが、ミツオ本人はそんなうわさなどまるで気にならないほど試合に集中している。
おそらくヒトシは、うちの学校で流れているうわさの存在すら知らないだろう。
それならば、あたしはべつにまわりの騒ぎはどっちでもいいと思う。関係のあるものたちだけがまじめにやれば、まわりはいくらちゃらちゃらしていてもべつにいい。それをとがめる権利など、誰にもないのだ。
試合前日の放課後。
ミツオが部活に向かうまえに、帰りじたくをするあたしの席にやってきた。
「なあ。ふたば」
いくら変わったといっても、こういうところは最初のころとなにひとつ変わっていない。クラスに人がいることなんておかまいなしにミツオは真顔で話しかけてくる。
「明日の試合、絶対に見にきてくれよ。たのむ」
へらへらせずに、まっすぐあたしの目を見つめる。
「おれ、かならず勝つから。ちゃんとおれの方がいい男だっていうことを証明するから」
ミツオの言葉はどちらの人格のものでもない、ひどく真剣なものだった。
「このまえマックでいいそびれたけど、おれ、本気でふたばのことが好きだ。ほかの誰にもわたしたくない。あいつがモトカレだろうがなんだろうが、その気持ちは同じだ。おれ、明日の試合絶対あいつに勝つから。そしたら……」
またデートか?
そんなじょうだんのつっこみをいえる雰囲気ではないほど、ミツオの顔は真剣だった。
「あいつのことふっきって、おれとつきあってくれ」
そこで一瞬の空白。
色っぽい意味なんかじゃなく、世界のすべてがとまって見える。
「じゃあ」
ミツオはそれだけいうと、あたしの言葉も待たずにいった。
「おれ部活いってくるから」
世界が動き出しミツオが教室から去ると、シホがこちらにやってきた。
「帰ろう、ふたば。明日のためにさ」
やさしい台詞をかけながら、あたしの肩をぽんと叩いた。




