表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/33

24

「あんたもちゃんとわかってるじゃん。あいつが始めのころみたいに、ただちゃらちゃらしてるわけじゃないってことが」

 照れくさいが、その部分だけは認めないわけにはいかなかった。

 そんなものは、毎日ミツオを見ていれば、いちいちシホにいわれなくてもわかる。なんというか、今のミツオの巨大な目には、以前のようににごりがない。毎日の学校生活では、へらへらしたりキレることもあるけれど、芯に一本、揺れない決意を持っているって感じがする。ただ、その揺れない決意の意味にあたしは気づかない振りをしているし、気づいたところでそんなものはどうしようもない。別れたあとのヒトシとの関係もあいまいにしたまま、ミツオの想いにもまともにこたえず、あたしはただ逃げてばかりいるだけだ。

 どんな方向にしろ真剣に生きるまぶしいふたりと、ひとつもはっきりさせないあたし。

 どちらかといえば、今のあたしのほうが、ずっとふらふらしてると自分でも思う。

「ミツオはまじめにボクシングで決着をつけたくて、階級を変えたくなかったんだよ。初心者が身体をしぼったり、筋肉量を増やしたりすると、体重ってすぐに変わっちゃうんでしょ。それなのに身体を鍛えながら五十四キロから五十七キロのフェザー級をキープしてきた。口ではへらへらしたり、ちゃらちゃらしたこともいうけれど、なみたいていの努力じゃなかったはずだよ。あのヤンキーモンキー」

 シホの言葉で、マックでのミツオとの会話を思い出す。ミツオはあのとき、なにかをいいかけていた。始めからヒトシとの練習試合を想定していたのかもしれない。

「どっちにしても、あとはあんたしだい。そういうところまできてるんだよ。ミツオもヒトシもさ。あのヤンキーモンキーは不純な動機でボクシングを始めたけれど、今はそんなことまるっきり忘れてると思う。脳みそがバカっていうのもあるけど、ボクシングをする目的がほんの少し変わってきてるのかな。きっとあいつ、ヒトシに勝ってあんたにただ認められたいんだと思う。ヒトシにしても、たぶん同じようなことだよ。あんたのまわりをちょろちょろするミツオに勝って、胸を張ってあんたのまえにまた立ちたい。ふたりとも、恋する資格がほしいっていうかさ」

 恋に資格か。

 あたしはなにも答えられずに黙っていた。

 いいたいことだけいうと、シホは体育館から離れるように歩き出す。

「まあ。そんな話を急にしたって、頭の方は理解できても、心の方がひとつも納得できないでしょ。いつまでも練習のぞいてミツオの気を散らしちゃっても悪いし、さっさと帰るよ」

 あたしもシホのうしろに続き体育館をあとにした。

 青い空に蒸れたにおい。どこかの樹木のどこかの枝では、気の早いセミたちが、季節がすでに変わったことを告げていた。

 そしてあっさり、二週間が経過した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ