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「よ、よう。ふたば。ひさしぶり」

 ひと月ぶりのモトカレは、またもすかしきれないってようすで口を開く。

 おせっかいなシホがいらぬことをして、きっとヒトシをこの場につれてきたのだろう。あたしとヒトシをむりやりにでも引きあわせ、別れたあとの気まずさを解消させようっていう腹なのだろうが、残念ながら話はそう単純にもいかない。

 なぜならこの場には、あたしのほかにミツオもいる。つきあっているわけではないにしろ、別れた彼女がべつの男と一緒にいるという、そんな最悪のシチュエーション。そもそもこういう状況はまえにゲームセンターのところで気まずかったばかりじゃないか。

 なに考えてんだ、こいつ。

 あたしは心のなかで毒を吐き、さらにおさまりきれずにクレームをつけようとした。

 あたしが口を開きかけようとしたときだった。

「おうおうおうおう」

 ミツオが席を立ちあがる。ヤンキーまるだしでヒトシにつめよる。お得意の超至近距離。でことでこをつきあわせ、目を見開いてヒトシをにらむ。

「おまえ、ふたばのモトカレなんだってな。振られひょろ二才。ちょろちょろするなよ、じゃまくさい。略して、振られちょろちょろじゃま二才」

 リズミカルにミツオがいう。

 早口言葉か?

「ぜんぜん意味がわからない」

 冷静にヒトシがつっこみを入れる。

「あー。むかつくっ」

 ミツオが吠える。マックの店内で。

「おれはふたばが好きなんだ。あんまりまわりでちょろちょろすると、ぶっとばすぞ、てめー」

「あのー……」

 おそらく、うるさすぎたのだろう。社員とおぼしき男の店員さんがふたりの話に割って入った。

「店内でのケンカはご遠慮ください」

「うるせーっ」

 ひさしぶりに見たミツオの二重人格は、あちらこちらにケンカを売り歩く。店員を黙らせてミツオがいう。

「いいか。モトカレのにーちゃん。ふたばは強い男が好きなんだ」

 え?

 そんなこと、あたし、ひとこともいっていませんが。

 あたしにつっこむ余地もあたえず、ミツオはまじめな目つきとどすのきいた声でさらに続ける。

「これ以上ふたばのまわりをちょろちょろするなら、どっちが強いかはっきりさせてやるよ」

 ミツオはこぶしをごきごき鳴らす。ヒトシも冷静な顔からまじめな目つきに変わる。

「いいよ」

 こちらもこちらで大まじめになっていう。

「おれもわけのわからないヤンキーに、ふたばのまわりをちょろちょろしてほしくない」

「しゃあああっ」

 ミツオが吠える。ヒトシの制服の胸ぐらをつかむ。

「おもてでろ、てめー」

 こいつらケンカする気まんまんだ。

 なんだ、この展開。

 あたしがつっこむまえにヒトシがいう。

「決着つけようぜ」

 胸ぐらをつかんでいるミツオの手を、ぱしっとはたく。

 ヒトシもこぶしを硬くにぎる。

 そして言葉をつけたした。

「ボクシングの試合でな」

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