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 開始と同時にミツオは対戦相手に突進していく。

 まずはようす見が基本なのに、そんなことはおかいまいなしだ。

 ミツオのでたらめなボクシングスタイルに、対戦相手の一年生はおどろいたようす。

 もっともむりはない。こいつのは、ボクシングというよりも、ほとんどケンカのスタイルに近い。あわてて左のジャブを伸ばすが、そんなものはミツオの腕のガードがはじく。

「あああああっ!」

 ミツオは吠えた。

 吠えちゃいかんのに、吠えた。

 レフェリーの注意が入りそうになる。

 が。

 それよりもはやくミツオは行動に出た。

 対戦相手の股のあいだに足が入るほど、おもいきり踏みこんだ。

 そして大振りぎみの右ストレートを放つ。

 おそらく相手はよほどの初心者だったんだろう。びびりまくってフリーズしている。

 ミツオのストレートが顔面にきれいに決まる。

 ぴんぽーん。

 ひじょうにまの抜けた電子音が体育館に響く。

 ミツオに1ポイントが加算された。

 同時に。

 対戦相手の一年生は、そのままうしろに倒れた。

 レフェリーには、ミツオへの注意より先にカウントをとる義務が生じた。

(ワン)……(ツー)……(スリー)……」

 一年生は起きあがらない。

 意識ははっきりしているようだが、おそらく気持ちを折られてしまったのだろう。初心者の初試合にはありがちなことだ。

「……(エイト)……(ナイン)……10(テン)

 あっさりと10カウントが終わり試合は終了。

 とんでもない。

 競技ボクシングの試合でのナックアウト勝ち。

 あっけなく、そしてなんともでたらめな試合だった。

「あーあ。勝っちゃったねえ、ふたば」

 集中して試合を見ていたあたしにシホがいう。

「ほえ?」

 わけがわからず、あたしはまぬけな声を出す。

「あんた忘れたの? あのヤンキーモンキーが勝ったら、デートするって約束」

「あ……」

 そうだ。

 なまじボクシングを知っているぶん、試合に入りこみすぎて、肝心なことを忘れていた。

 そういえばあたし、そんな約束をしていたんだ。

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