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「だから、あんたはパッパラヤンキーなの」

 シホも負けずにミツオに顔を近づける。

 でことでこがふれあうくらいの超至近距離で、ミツオとシホがにらみあう。

 しっかりと視線をつなげる若い男女。

 無声映画かなにかだったら、情熱的なラブシーンの始まりのようにも見えるかもしれない。だが、これは音声ありの現実世界のケンカのシーンだ。自分のでこをミツオのでこにすりあわせながらシホがいう。

「ぼこってくるっていったって、あんたなんかヒトシに返りうちにされるのがオチだよ。ヒトシはボクシングだってやってるし、ケンカだってめちゃめちゃ強いんだよ。あんたみたいなヤンキーモンキー、カウンターで一発KOだよ」

 ボルテージがあがっているのか、やけに言葉がリズミカル。

 YOYOYOYOうるさい、シホ。

 できそこないのラッパーか。

「なめんじゃねーよ」

 ミツオも吠える。

「おれを誰だと思っているよ」

 思っているよ?

 なんだその語尾?

 絶対つられたな、こいつ。

 シホはさらにいい返す。

「それにたとえケンカで勝ったとしても、ヒトシはボクシングが本業なんだから、そんなものであんたの勝ちにはならないよ。だいいちふたばは、一生懸命部活に打ちこんでるヒトシだからつきあっていたんだよ。ぷらぷらしてるあんたなんかには、もともと興味なんてないよ。もしケンカに勝って戻ってきても、どうにもこうにもしようがないのよ」

 もういい。

 ノーコメント。

 シホのやけっぱちの台詞にミツオがさらにいい返す。

「あ……なるへそ」

「よ」はねーのかよっ。

 ってか、いい返さないのかよっ……あ、はずかしっ。

 あたしが痛々しいつっこみをした心の自分を恥じているのはさておいて、ミツオはなにかに気づいたようすだ。ふっと冷静になった。

「じゃあ決めた」

 ぽんと、かしわ手を打ってシホから離れる。

「ボクシングでもおれの方があいつより強いってことが証明されれば万事オーケーなんだ」

「はい?」

 あたしはまぬけな声を出す。

 なにが万事オーケーなんでしょうか?

 ミツオはきりっといい顔をして、まぬけにフリーズしているあたしを見た。

「おれはボクシング部に入る。それでケンカもボクシングもあいつより強いってことを証明してやる」

 もうこうなったら目をぱちぱちさせる以外にリアクションなどとれない。

「おれ、一生懸命やるよ。だから、ふたば。安心しろ」

 ナンデソンナナガレニナルンデショウカ?

 あたしはもう、むちゃくちゃすぎてなにがなんだかわからなかった。

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