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「じゃあおれは、さっきのひょろ二才をぼこってくればいいんだな。オッケー。三分で戻ってくるから、ちょっとここで待ってろよ」
ミツオは不二家のペコちゃんみたいに舌を出し、制服代わりのカジュアルシャツの袖をまくるジェスチャーをする。
ひょろ二才?
ひょろい青二才の略か?
ヒトシはあれでもいちおうアマチュアボクシングでフェザー級の地区ランキングを持っている。先ほどの長身の男のようにあっさり負けることはないだろうと思うけど、この男の場合なにをしでかすかわかったもんじゃない。
いくら別れたとはいえ、モトカレのヒトシをこいつの的外れででたらめなケンカの被害者にするわけにはいかない。
あたしはいった。
「ちょっと待って」
もときた道を駅まえまで戻ろうとするミツオにストップをかける。
「なんで?」
ミツオがきょとんと振り返る。本気でわからないって表情をしている。
「だって、ふたば、あいつのことで悩んでるんだろ?」
「いや、まあ」
悩んでいるけど、悩んでない。
困っているけど、困ってない。
そんなむずかしい女心のニュアンスは、きっとこのバカには伝わらないだろう。
次の言葉が見つからず、あたしがいいよどんでいるとミツオはしびれを切らせたようだ。
「まあ、むずかしい話はよくわかんないから、あとで教えて。とりあえず、ちょっといって、ぼこってくるよ」
とんでもなくカジュアルないい方で、とんでもなく血なまぐさい台詞を吐く。
そんなミツオに、よほどあきれたのだろう。シホがすごい剣幕で口をはさんだ。
「あんた、バカじゃないの」
「ああん?」
シホの台詞にミツオの二重人格の怖い方が顔を出す。怒りのほこ先は、あっさりとヒトシからシホの方に向く。
「てめー、もういっぺんいってみろ。このAカップ」
どすのきいた声で、あまりにもばからしい単語をいうもんだから、あたしは思わず吹きそうになった。
ミツオは大まじめにキレながら、シホのまえにずんずん向かう。
いつものようにおもいきり顔をつきあわせる。
キスができるんじゃないかってくらいの至近距離でシホの顔をのぞきこむ。
おいおい、あんた。
あんたはあたしのことが好きなんじゃないのか?
あたしのいるまえで、そんな大胆なことをしていいのか?
心のなかで、またつっこんだ。




