第七話「第九の慟哭」
亀裂。
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一本。
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また一本。
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巨大な黒い樹が軋み始める。
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ゴゴゴゴ……
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地鳴りが第一記録庫全体を揺らした。
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木札が舞う。
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数千。
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数万。
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いや。
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数え切れない。
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それは。
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二百年近く記録され続けた。
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犠牲者全員の名前だった。
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咲は耳を塞ぐ。
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「聞こえる……!」
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「みんな叫んでる!」
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次の瞬間。
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黒い樹が裂けた。
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ドォォン!!
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真っ黒な霧が噴き出す。
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その霧は。
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天井へ。
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壁へ。
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床へ。
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生き物のように這い始めた。
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真之介は刀を抜く。
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「来るぞ!」
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しかし。
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霧は襲ってこない。
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ゆっくりと。
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一つの形を作っていく。
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人だった。
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若い男。
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二十代ほど。
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黒い着物。
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長い髪。
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悲しそうな瞳。
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その姿を見た瞬間。
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零の表情が凍りつく。
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「……そんな。」
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「お前は。」
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「まだ……。」
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男は零を見る。
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そして。
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静かに笑った。
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「久しぶりだ。」
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「零。」
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真之介が振り返る。
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「知り合いなのか?」
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零は震えていた。
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「知り合いじゃない。」
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「私が。」
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「最初に記録した人だ。」
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全員が息を呑む。
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最初の記録。
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それは。
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零が蘇らせようとした恋人。
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いや。
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違う。
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男は首を横に振る。
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「違う。」
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「私は。」
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「お前が記録する前からいた。」
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空気が凍る。
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真琴が呟く。
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「まさか……。」
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男は静かに名乗った。
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「私は。」
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「第九。」
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沈黙。
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誰も動けない。
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目の前にいる男。
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それが。
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二百年間。
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恐れられてきた怪異。
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第九だった。
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しかし。
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その姿からは。
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殺気が感じられない。
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咲が一歩前へ出る。
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「あなた……。」
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「ずっと泣いていたの?」
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第九は頷いた。
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「忘れられることが。」
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「怖かった。」
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「誰も悪くなかった。」
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「誰も憎んでいない。」
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「ただ。」
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「消えたくなかった。」
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咲は涙を流す。
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「……。」
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その時だった。
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闇の奥から。
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拍手が響く。
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パン。
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パン。
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パン。
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黒川だった。
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「感動的だ。」
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「実に感動的だ。」
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しかし。
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第九は黒川を見ない。
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むしろ。
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少しだけ。
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悲しそうな顔をした。
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「お前も。」
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「また利用されている。」
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黒川が眉をひそめる。
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「何?」
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第九は。
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ゆっくり。
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闇の奥を見る。
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「出てくる気はないのか。」
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「記録の主よ。」
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その瞬間。
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闇が裂ける。
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ズズズ……
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黒い文字が。
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空中に浮かぶ。
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一文字。
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また一文字。
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やがて。
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一つの名前になる。
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『■■』
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誰も読めない。
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読もうとすると。
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文字が崩れる。
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真之介は目を押さえた。
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「読めない……!」
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真琴も。
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神崎も。
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零でさえ。
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読めない。
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ただ一人。
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咲だけが震えながら呟く。
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「……。」
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「名前が。」
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「消えてる。」
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第九が目を閉じる。
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「そうだ。」
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「名前を失った者。」
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「それが。」
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「本当の呪い。」
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その言葉と同時に。
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黒い文字が。
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第一記録庫中へ広がっていく。
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壁。
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天井。
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床。
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そして。
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真之介の右腕にも。
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黒い文字が浮かび始めた。
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零が叫ぶ。
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「触れるな!」
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「その文字を書き終えられたら!」
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しかし。
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もう遅かった。
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真之介の腕に。
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ゆっくりと。
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新しい一文字が刻まれる。
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『記』
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続く文字は。
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まだ現れない。
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だが。
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第九は悲しそうに呟いた。
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「始まってしまった。」
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「最後の記録が。」
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第十章 第七話
「第九の慟哭」
終
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次回、第八話「共闘」では、真之介・零・神崎が初めて力を合わせ、「名前を失った黒幕」が送り出す怪異との死闘に挑みます。また、真之介の腕に刻まれた「記」の文字が、新たな呪いの始まりであることが明らかになります。




