表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亀の瀬異聞録  作者: こうた
第十章「呪いの目覚め」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/174

第七話「第九の慟哭」

亀裂。



---


一本。



---


また一本。



---


巨大な黒い樹が軋み始める。



---


ゴゴゴゴ……



---


地鳴りが第一記録庫全体を揺らした。



---


木札が舞う。



---


数千。



---


数万。



---


いや。



---


数え切れない。



---


それは。



---


二百年近く記録され続けた。



---


犠牲者全員の名前だった。



---


咲は耳を塞ぐ。



---


「聞こえる……!」



---


「みんな叫んでる!」



---



---


次の瞬間。



---


黒い樹が裂けた。



---


ドォォン!!



---


真っ黒な霧が噴き出す。



---


その霧は。



---


天井へ。



---


壁へ。



---


床へ。



---


生き物のように這い始めた。



---


真之介は刀を抜く。



---


「来るぞ!」



---


しかし。



---


霧は襲ってこない。



---


ゆっくりと。



---


一つの形を作っていく。



---


人だった。



---


若い男。



---


二十代ほど。



---


黒い着物。



---


長い髪。



---


悲しそうな瞳。



---


その姿を見た瞬間。



---


零の表情が凍りつく。



---


「……そんな。」



---


「お前は。」



---


「まだ……。」



---


男は零を見る。



---


そして。



---


静かに笑った。



---


「久しぶりだ。」



---


「零。」



---


真之介が振り返る。



---


「知り合いなのか?」



---


零は震えていた。



---


「知り合いじゃない。」



---


「私が。」



---


「最初に記録した人だ。」



---



---


全員が息を呑む。



---


最初の記録。



---


それは。



---


零が蘇らせようとした恋人。



---


いや。



---


違う。



---


男は首を横に振る。



---


「違う。」



---


「私は。」



---


「お前が記録する前からいた。」



---



---


空気が凍る。



---


真琴が呟く。



---


「まさか……。」



---


男は静かに名乗った。



---


「私は。」



---


「第九。」



---



---


沈黙。



---


誰も動けない。



---


目の前にいる男。



---


それが。



---


二百年間。



---


恐れられてきた怪異。



---


第九だった。



---


しかし。



---


その姿からは。



---


殺気が感じられない。



---


咲が一歩前へ出る。



---


「あなた……。」



---


「ずっと泣いていたの?」



---


第九は頷いた。



---


「忘れられることが。」



---


「怖かった。」



---


「誰も悪くなかった。」



---


「誰も憎んでいない。」



---


「ただ。」



---


「消えたくなかった。」



---


咲は涙を流す。



---


「……。」



---


その時だった。



---


闇の奥から。



---


拍手が響く。



---


パン。



---


パン。



---


パン。



---


黒川だった。



---


「感動的だ。」



---


「実に感動的だ。」



---


しかし。



---


第九は黒川を見ない。



---


むしろ。



---


少しだけ。



---


悲しそうな顔をした。



---


「お前も。」



---


「また利用されている。」



---


黒川が眉をひそめる。



---


「何?」



---


第九は。



---


ゆっくり。



---


闇の奥を見る。



---


「出てくる気はないのか。」



---


「記録の主よ。」



---


その瞬間。



---


闇が裂ける。



---


ズズズ……



---


黒い文字が。



---


空中に浮かぶ。



---


一文字。



---


また一文字。



---


やがて。



---


一つの名前になる。



---


『■■』



---


誰も読めない。



---


読もうとすると。



---


文字が崩れる。



---


真之介は目を押さえた。



---


「読めない……!」



---


真琴も。



---


神崎も。



---


零でさえ。



---


読めない。



---


ただ一人。



---


咲だけが震えながら呟く。



---


「……。」



---


「名前が。」



---


「消えてる。」



---


第九が目を閉じる。



---


「そうだ。」



---


「名前を失った者。」



---


「それが。」



---


「本当の呪い。」



---


その言葉と同時に。



---


黒い文字が。



---


第一記録庫中へ広がっていく。



---


壁。



---


天井。



---


床。



---


そして。



---


真之介の右腕にも。



---


黒い文字が浮かび始めた。



---


零が叫ぶ。



---


「触れるな!」



---


「その文字を書き終えられたら!」



---


しかし。



---


もう遅かった。



---


真之介の腕に。



---


ゆっくりと。



---


新しい一文字が刻まれる。



---


『記』



---


続く文字は。



---


まだ現れない。



---


だが。



---


第九は悲しそうに呟いた。



---


「始まってしまった。」



---


「最後の記録が。」



---


第十章 第七話


「第九の慟哭」




---


次回、第八話「共闘」では、真之介・零・神崎が初めて力を合わせ、「名前を失った黒幕」が送り出す怪異との死闘に挑みます。また、真之介の腕に刻まれた「記」の文字が、新たな呪いの始まりであることが明らかになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ